6話
「着いたぞ‼︎起きろ‼︎」
ペチペチと僕の頬を叩きながら覗き込んでいる
男みたいな口調だが、鈴のような声
叩き起こされたが不思議と悪い気はしなかった
「あぁ、起きた。ありがとう」
「久しぶりの東京だがかなり変わったな」
初めてのものを見る子供のように窓に張り付いて外をまじまじと見ている
「最後に東京に来たのいつなの?」
「正確には覚えとらんが100年ぐらい前かの」
「え⁉︎ひゃ、ひゃくねん⁉︎」
「だから大きな声をだすな。マナー違反だと私が教えてやったの忘れたのか?」
「だからそれは知ってるんだって‼︎100年ってカンナ何歳なんだよ⁉︎」
「女に年齢を聞くでない無礼者が。それより早く降りるぞ」
戸惑いを隠せない僕を置いてスタスタとバスを降りていく
吸血鬼だから実際の年齢と見た目が違うってゆう事自体はなんとなく予想していたが、まさかそこまでとは
僕もカンナの後に続きバスを降りた
同時に
スタスタと前を歩いていたカンナがピタリと止まった
「先に言っておくが、ババァとか言いよったらお前の血は一滴もなくなるぞ」
「言わないってば‼︎」
カンナの場合本当にやりそうでマジで怖い
「さて、お前の新居はどこだ?」
「タクシーですぐだよ。てゆうか例えばの話なんだけど、カンナが僕を持ち上げて空を飛んで移動とか出来たりするの?」
「このか弱いレディに自分を持ち上げろとは何て事を言うんじゃこの男は‼︎」
か弱いレディ、ねぇ
「ごめんて。でも僕を持ち上げる云々はおいといて、空は飛べたりするの?」
「できんよ。昔に存在していた吸血鬼には翼があるが、私のような現代の吸血鬼には翼は無い」
「へぇ、そうなんだ」
ん?
カンナは100年前東京にいた
お金は持ってないって言ってたし、バスに乗った事もないカンナがどうやってあんな田舎まで移動したんだ?
「カンナ、どうやって東京から」
「お?あれがタクシーとやらではないか?」
「あぁ、そうだよ。」
「早く乗ろうではないか。乗った事は無いが面白そうだ」
カンナには聞きたい事が沢山あるが
ありすぎてすぐに全部を聞くのは難しそうだな
言いかけた言葉をのんで
カンナと一緒にタクシーに乗った
「なんだ、バスの小さいバージョンみたいな感じだな」
「恥ずかしいし失礼だから黙っててよ」
「恥ずかしいとはなんだ‼︎お前の方が失礼ではないか‼︎」
「うるさいよ‼︎静かにするのがマナーなんじゃなかったのか?」
「ッ‼︎まぁ、確かにそうだ」
ピンクの頬を膨らませて眉をしかめている
これが100年以上前から生きてるなんて信じられないな
大人なのか子供なのかもわからない
見た目は僕と同じぐらいなのに古風で大人びた話し方
なのに時々無邪気な子供のような表情を魅せる
僕は初めて自分以外のものに興味を持ったかもしれない