5話
順調すぎる程に順調に進んでいた僕の人生は
順調に終わりを迎えるものだと思っていた
なのにこの半月でガラッと変わってしまった
交通事故に遭い死にかけのところを吸血鬼に助けられ
代償にその吸血鬼と共に行動することになるなんて
そんなドラマやアニメみたいな事が
いや、この僕だからそうなったのかもしれない
だとしたら今のこの状況も順調って事になるのか?
あの吸血鬼に出会わなければ僕は多分死んでいた
僕は死ぬはずだった
なのに死なない選択肢があった
考えたらこの上ない幸運じゃないか?
ある程度計画していた高校生活が台無しになったと思っていたけど、命がなくなるよりマシだ
やっぱり、流石僕って事か
「なーにをニヤついておる」
「別に?」
なんだかんだで、今僕は東京行きのバスの1番後ろの広い席に座っている
病室で出会った吸血鬼といっしょに
バスの乗客は僕達を含め5人程しかいない
「私といるのがそんなに嬉しいか?」
「はぁ⁉︎何言ってんだよ‼︎」
「静かにせんか。こうゆう場で大きな声を出すのはマナー違反だ。」
「知ってるよそれぐらい‼︎」
まだ汗をかく季節でもないのに妙に汗ばんだ手でシャツの裾を握り締めた
「そうか。まぁナルシストなお前の事だ。吸血鬼に出会うなんて流石だ僕‼︎とでも思っておったところかの」
「カンナ程じゃないよ‼︎」
「思っておったのは図星なんじゃな」
「クッ、、、、」
カンナといるとなんか調子が悪い
それに澄ました顔で僕の隣にピッタリくっついて座っているのもなんかムカつく
「もうちょっと離れろよ。そんなに混んでないんだから」
「いやすまんな。なにせバスなんぞ初めてで緊張していてな。ちょっと疲れた。東京に着くまでそのままもたれさせてくれ」
「吸血鬼も疲れたりするんだ」
「まぁな」
「不老不死の吸血鬼なのに疲れるって何か変だな」
「それは昔の話だ。人間に比べればはるかに歳をとるスピードは遅いし治癒能力も身体能力も高いが、現代にいる吸血鬼は不老不死とゆう訳ではない。私だって緊張するし慣れん事をすれば疲れる」
「へぇ。そうなんだ」
僕達人類が進化したのとは逆に、吸血鬼は退化していってるのか?
「だからといって舐めるなよ。現代の吸血鬼は太陽の光なんぞで燃えて灰になったりはせん。せいぜい熱中症になりやすいだけだ。ニンニクや十字架、製水も好きではないがまぁ平気だ」
「熱中症って…」
単に弱体化してる訳じゃないらしい
不老不死じゃなくなったかわりに
これと言った弱点が無くなった
武器が無くなった代わりに
弱点が無いとゆう事を得た
これはある意味進化かもしれない
「そう言えば僕の怪我を血の力で治したって言ってたけど、具体的にどうやって治したんだ?」
「・・・。」
寝てしまった
僕に完全にもたれかかって無防備に寝てる姿は普通の女の子に見えた
彼女は何歳なんだろう
今まで1人だったのかな
どうやって生活してたんだろう
何となく考えたがすぐやめた
自分の生活もこれからどうなるか分からないんだ
他人の事を考えてる場合じゃない
でも
僕もちょっと疲れたなぁ
ゆっくり瞼を閉じた
熱っていた僕の身体には
もたれかかっているカンナの冷たさが心地良かった