4話
とりあえず散らかった窓ガラスの破片の掃除をするか
危ないし
こんな夜中に掃除機をかけるのは流石に非常識なので、ホウキで片付ける
事故に遭ってからとゆうもの
いろいろありすぎて全然頭の中の整理ができていない
カンナと名乗る吸血鬼が現れて僕の大怪我を跡形もなく治し、そのかわりに共に行動しろと言う
これが現実って事はわかってるんだけど何だかイマイチ納得いかない
「吸血鬼って本当にいるんだなぁ」
思わず声に出る
僕が想像していた吸血鬼とはかなり違ったな
もっと悪魔みたいな姿をしているものと思っていたけど、カンナとゆう吸血鬼は見た目は僕と同じぐらいの歳で光る長い銀髪に赤い瞳、雪のような白くて冷たい肌
ガラス細工のように美しくすぐ壊れてしまいそうな程の儚い雰囲気をまとっていて、彼女の赤い瞳は血のような色に反して冷たかった
そのアンバランスなオーラは僕の目に焼き付いて離れない
その夜は彼女の夢をみた
ピピピピピピピピピピピピ
電話?絵里からだ!
やばい、すっかり忘れていた
「もしもし絵里?」
「弥生くん!昨日学校帰りに病院行ったんだけど、一昨日目が覚めて、怪我も治って退院したって、ねぇ!大丈夫なの?」
電話越しでも、絵里が泣きそうになってるのがわかる
「うん、怪我はもう治ったよ。連絡できなくてごめん。心配かけたね。」
「本当だよ!ずっと心配してたんだから!目覚さなかったら、私、どうしようかと」
「本当にごめん。でも僕はもう大丈夫だよ。」
「本当に?」
「うん、本当に。」
「よかったぁ、本当に本当によかったぁ。ねぇ、今日会えない?」
「あぁ、会おう。いつもの公園で良いか?」
「うん、学校終わったらすぐ行くから!」
「ありがとう、じゃあまた。」
ふぅ
絵里と会うのは久しぶりな感じがするが、実際まだ4日しか経ってない
吸血鬼に怪我を治してもらったなんて言えないよなぁ
絵里には本当の事は話さない方が良いな
もし話しても信じてもえないだろうし、頭がおかしくなってしまったと思われたら非常にまずい
まぁ嘘をつくのには慣れてる
いつも通りの僕で居よう
夕方、少し日が落ち若干薄暗くなった公園のベンチに座り、なんとなくセンチメンタルな気分になっていた
昔はもっといっぱい遊具とかあったけど、今はそのほとんどが無くなっていて遊ぶ子供なんてほとんどいない
「弥生くん、お待たせ。本当に怪我治ってたんだね。」
「あぁ、うん。」
「弥生くんが車に轢かれた時、正直もう死んじゃったって思っちゃて、私パニックになって何もできなかった。ごめんなさい。周りの人がすぐ救急車呼んでくれなかったらどうなってたか。」
「いや絵里が悪い訳じゃないよ。あれは事故だ。実際僕は今元気なんだし絵里が謝る事じゃない。」
「優しいね、弥生くんは。」
絵里は1度も目を合わせないままゆっくり僕の隣に座った
「それだけなんだ。」
絵里が俯いたままボソッと呟いた
「え‼︎何が?」
「だって、私が落ち込んでたらいつもの弥生くんだったらハグのひとつでもしてくれるもん。」
やっと僕の目を見た絵里の目は凄く悲しそうだった
「事故に遭ってから、他に何かあったんじゃない?」
「えっ?いやぁ、別に特に何もなかったけど」
少し動揺してしまった、らしくない
「じゃあ私の事もう好きじゃなくなった?」
「そんな事ないよ!何でそう思うんだよ?」
「わかるよ!それぐらい。今だって私の事見てないもん。」
「目を合わせなかったのは絵里だろ。」
駄目だ僕‼︎感情的になるな‼︎
絵里は何か勘づいている。
本当の事を話す?いやいやそれは無理だ。
どうする?
いや、ってゆうかどうするって何を?
僕は東京に行く、おそらくあの吸血鬼も来るだろう
どうせ東京に行ったらどうにか理由をつけて絵里とは別れるつもりだった
「絵里、別れようか。ほら、遠距離になるからなかなか会えなくなるし、高校入ってたら色々忙しくなるだろうから。」
「・・・。」
俯いたまま絵里は何も返さない
「これから友達って事でいいんじゃないかな?僕達。」
沈黙が続く
実際は2,3秒ぐらいだったと思うが、かなり長く感じた
ちょっと強引だったか?
「誰か他に好きな人でもできた?」
絵里が沈黙破ったが予想外の言葉だった
「え?な、なんで?」
さっきまでのしょんぼりした様子からガラッと変わって僕の目を刺すような目で真っ直ぐ見た
「だって弥生くんが私にちゃんと連絡くれない事なんかったもん!ずっと心配してたのに、今日の弥生くん見てわかったんだもん!もう私の事見てないって。」
こんな時でさえあの吸血鬼の彼女の赤い瞳を思い出す
残酷な赤い瞳だけど、綺麗だった
あぁ、絵里はこの事を言ってるのか
絵里は僕が思ってたより鋭い女だったらしい
「ごめん。でも何かあった訳じゃないし"好きな人もいない"」
刺すような絵里の目から力が無くなったように感じた
「そっか。わかった。じゃあ私帰るね!今までありがとね、弥生くん。」
絵里は素早く立ち上がると早足で1度も振り返らずスタスタと帰っていった
呆気ないもんだな
絵里が早々に立ち去った理由を考えたら罪悪感がない訳でもないが、いずれはこうするつもりだったから肩の荷がおりた感じもしていた