3話
少女との夜のふたつの出来事があってからすぐ僕は退院する事になった
あれから少女は現れていない
なんか久しぶりに自分の部屋にいる気がするなぁ
ベッドに覆いかぶさるように倒れこんでみる
あの子が本当に僕の怪我を治したのか?
普通に考えて自分で身体を動かす事ができない程の怪我が簡単に治るはずがない
でもあの子が本当に吸血鬼ならあり得るのか?
うーん、なんか大事な事忘れてるような
・・・。
「おい!おい起きんか!」
あの夜の少女のが僕の顔を覗きこんでいる
「うわぁ!」
反射的に凄い勢いで飛び上がってしまった
僕は眠ってしまってたらしい
かなり眠ってたみたいで部屋は真っ暗で夜になってる
「元気そうで何よりだ。」
そう言うとベッドの上に立ち上がった僕の周りを一周して僕の足元にちょこんと座った
「お前どっから入ってきたんだよ!てゆうか何で僕の部屋にいるんだ!!」
「お前ではないカンナと呼べ。退院する時お前の後をつけていた。そして窓から入った。」
少女。カンナとゆう名前らしいが彼女が指差す方向には、ぶち破られた窓があった
「え?えーーーー!?おいーー!何してんだよお前絶対弁償しろよー!」
「カンナと呼べと言ったろ。悪いが人間が使う硬貨は持ち合わせておらん。それよりお前、約束は忘れておらんだろうな?」
「はぁ?約束?てゆうかカン、ナ?あんたもお前呼びをやめろ。」
「そんな事を言われたのは初めてだな。度胸だけは認めてやろう。だがあの怪我をタダで治してもらえると思っておったのか?本当に人間は図々しい生き物だな。」
「人ん家の窓割って入ってた奴に言われたくないよ」
「冗談だ。でも本当に覚えとらんのか?」
何か言ってた気はするんだけど思い出せない
「怪我を治すかわりに私についてこいと言ったであろ?」
言われてみれば
なんかそんな事言ってた気がする
「ついてこいって言われても、どこまで?」
「常に私と共に行動しろ。そうすればちょっとは私の吸血鬼の気配をカモフラージュできると思うのだ。」
「いや、僕は4月から東京の高校に通う事になってるから、それは無理だよ。」
「では私も東京にいこう。そしてお前の通う高校にも私も通おう。人間には戸籍やら社会的地位やら面倒な事が多い。お前が急に変な行動や、ましてや行方をくらましたりでもしたら余計に私が怪しまれる。」
「いやいや何言ってんだ無理だろそれは」
「私がわざわざ合わせてやると言っておるんだ。心配せんでも多少の身分の改ざんは自分で出来る。」
どこからつっこんだらいいのか・・・
「とにかく!東京へ行く時は私も行く。詳しい話はそれからゆっくり話す。ここだとお前の家族がいて話しずらい。聞こえるかもしれん。お前も家族と気まずくなるのは嫌だろ?」
窓を割って入ってきて、身分も改ざんすると澄ました表情言った人間だがそこは気にするらしい
いや、人間じゃなかったな
「わかったよ。」
全然納得いかないけど
「では次は東京で会おう。念の為言っておくが逃げようとか考えるなよ?もし私から逃げる素振りを見せたりでもしたら、その時は必ずお前探しての全身の血を一滴残らず吸い尽くすぞ。」
さらっとグロい事言うな
羽交締めにされ首を絞められたあの夜の冷たい彼女の手の感触が蘇りブルッと鳥肌がたった
「なぁカン、ナ?」
僕の言葉を待たずにカンナとゆう吸血鬼は物音たてずいなくなっていた
「はぁ、これどうすんだよ。」
割れた窓ガラスの破片を集めながらため息をついた