2話
少女は僕の膝辺りで僕の脚を跨いで座ったまま
無邪気に笑いながら続けた
「凄いだろ?すり傷も打撲も傷ついた内臓も骨折までも綺麗さっぱり元通りだ!!」
腕を動かしてみたり触ってみたりして確かめてみる
確かに身体は動くしなんともない
そういえばどれくらい眠ってたんだ?
暗いな、今は夜中か?
「なんだ助けてやったのに礼もなしか。人間と話すのは久しぶりだったが、最近の奴は礼も言わんとは嫌な時代になったものだな。」
・・・。え?
「いやいやいやいや!!え?何?僕は、、え?てゆうか誰なんだお前!」
取り乱し声を荒げる僕とは正反対に
少女は笑ったまま表情ひとつ崩さない
「私の名はカンナ。吸血鬼でその血の力でお前の怪我を治してやった。感謝せい。」
何言ってんだコイツ?
「は?頭大丈夫か?吸血鬼っている訳ねーだろ見た事ないし、アッハハハハ。しかも血の力ってお前中二病か?アハッハハハハ」
そう言えば久しぶりに腹から笑った気がするなぁ
なんて考えながら少女の奇妙な発言を笑いとばしていると、
さっきまで、いやほんの一瞬まで僕の膝辺りにいた少女の顔が
僕の顔の前に息がかかる程の距離まできていた
息?
!!!
息ができない!?
少女は細い脚で僕の上半身の腕ごと羽交締めにし
左手は僕の頭を押さえつけ、右手は僕の喉を潰さんばかりの力で握り潰している
「お前が吸血鬼を今まで見た事がないとゆう事が吸血鬼が存在しない理由にならんだろうが。」
真っ赤な瞳が真っ直ぐ僕の目を見て静かに言った
僕の喉を締め付けている右手の力は強くなる
振り払おうと抵抗するがびくともしない
「確かお前は15歳だったか?たった15年しか生きてない口のきき方も知らんガキの経験値など知れておるわっ!」
一層少女の力が強くなる
なんだこの馬鹿力は!
いや、てゆうかヤバいぞ僕!!
どうにかしないと!身体に力も入らなくなってきた
緊迫した雰囲気の中
コンコンコンとノックの音が響いた
「どうしましたっ!?大丈夫ですかっ!?」
見回りの看護師だ!助かった!
「あっあの!!」
あれ?声が出る
息もできる
少女の姿はどこにもなかった
ただ僕の首に残る少女の細く冷たい手の感触が
これは夢ではないと確信させる