番外編2 爆笑必須?
登場人物
スズキ氏
老舗縫製工場のファクトリーブランド「□O:△O」のブランドディレクター。
完璧超人の雰囲気が漂うジェントルマン。
サトー氏
「□O:△O」のプロダクションコントロール。
忘れん坊大魔王にして最強のポジティブ人間。
タカハシ
「□O:△O」のパタンナー兼サンプル縫製担当。
自尊心の低さなら誰にも負けない。
本作の主人公。
「パンツ直せる?」
新作の生地をセッチィングしに来たスズキ氏が不意に言った。
「パンツ? 裾上げ?」
「いや。股裂けちゃって」
「あー。当て布して叩いて良いなら可能。持ってくればやるよ」
「何か着替えるのある?」
ん? 何かいまいち話が噛み合わないような……
状況を飲み込めないわたしにスズキ氏が自分の履いているパンツを指差す。
「ここ、さっき座ったら裂けた」
「…………マジ?」
「うん。ビリって。肌色見えたからまさかなって思ったけど裂けてた」
「マジか!」
思わず爆笑。
履いてるパンツ裂けるとかコントか! などと思いながらひとしきり笑った。
はー、笑いすぎで腹痛い。
別件で作ったサンプルのハーフパンツを引っ張り出す。
「これ履ける? とりあえず着替えて」
「ありがとう」
着替えたスズキ氏を見て必死に笑いを噛み殺す。
上はおしゃれさんなのに、下はハーフパンツって! 笑える。
ぐるりと工場内を見回してサトー氏の姿を探すが見当たらない。この面白状況を見逃すとは。
クツクツと喉の奥で笑いながら、パンツの股ぐりに別布をあてがいミシンでジグザグに縫っていく。通常なら簡単に終わる作業だか、いかんせんおかしすぎて手が震える。
やっとのことで裂けた部分を直す。
「とりあえず直った。でも気をつけた方がいいかもね」
「ありがとう。これからも普通に履くけどね?」
マジか。
もうちょいしっかり縫っとけば良かったかな?
「年一ぐらいの面白事件があったよ」
あとでやってきたサトー氏はスズキ氏の話を聞いて残念がっていた。
このときは本気で笑った。