番外編7 エピソードゼロ
ここから全ては始まっていたのか。
みたいなエピソードです。
登場人物
ニン女史
外国国籍の先輩社員。
はっきりした物言いが、わたしは大好き。
タカハシ
「□O:△O」のパタンナー兼サンプル縫製担当。
自尊心の低さなら誰にも負けない。
本作の主人公。
「私は、あなたが楽しく幸せでいてくれたら嬉しいわ」
以前から気にかけてくれていた外国国籍の先輩社員、ニン女史。
「他の人がどう言おうがしったこっちゃない。私、日本人じゃないから」
そんなことを言われてわたしは泣きそうだった。
今まで、こんなに誰かの言葉に救われたことはあっただろうか。ニン女史が、ニン女史でいてくれて本当に良かった。
そんなニン女史と仕事で深く関わるようになったきっかけは、社内の新規事業だった。
このプロジェクト、最初の滑り出しは順調だった。しかし、わたしがCADチームから抜けたことと、ニン女史の別の仕事が忙しくなってしまったことで頓挫していた。
それでも彼女は時間を裂いてわたしとミーティングと言う名目のガス抜きをしてくれていたのだ。
その日も事務所でミーティングをしていた。
突然、フロア内に沸き上がる笑い声。
何事か、と振り返る。
そこをちょうど半纏を持った青年が通りすぎた。(今思うと、あれはサトー氏だった)
「□O:△O」なるブランドが新規で立ち上がっていたのは知っていた。そこで半纏を作っていることも。
楽しそうだとは思っていたが、如何せん、「若手の会」と言うものがベースにあるようでどう頑張っても若手とは呼べないわたしが参加するのは躊躇われた。
(ニン女史に「ババアの会」作ろうよと、冗談で言って怒られたこともあった)
そんな感じで、外堀の向こう側から様子を眺めているだけだったのだ。
「それ半纏よね? ちょっと見せて」
ニン女史が興味を持ったようで青年を呼び止める。
振り返った青年は静かに立ち止まると半纏の特徴を淡々とのべた。
「いいじゃない」
褒めながらサンプルを羽織らせてもらうニン女史。
思い返せば、これが「□O:△O」とのファーストコンタクトだった。
「□O:△O」に加入する三ヶ月ほど前の出来事である。
最近忙しかったから、全然ニン女史と話せてないけど、相変わらずパワフルなんだろうな。
次話、最終回になります。




