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18 まだまだ進むぞ! スラッシュキルト完結編

登場人物


スズキ氏

老舗縫製工場のファクトリーブランド「□O:△O」のブランドディレクター。

完璧超人の雰囲気が漂うジェントルマン。


サトー氏

「□O:△O」のプロダクションコントロール。

忘れん坊大魔王にして最強のポジティブ人間。


タカハシ

「□O:△O」のパタンナー兼サンプル縫製担当。

自尊心の低さなら誰にも負けない。

本作の主人公。

 昼休み、休み時間返上で急ぎのサンプルを仕上げているとスズキ氏とサトー氏が爆笑しながら工場の中に入ってきた。

 元気だなーと思っていると、

「ちょっと、タカハシさん!」

 と突然呼ばれる。サトー氏の良くとおる声が工場に響いて思わずビクリ。

「どした?」

 平静を装い顔を上げる。

「ぬいぐるみ作れる?」

 いきなりだな。

 だが、やったこと無いことはない。つまり、作れる。

「不可ではない」

「なんか招き猫とか木彫りの熊をスラッシュキルトで作りたいとか言ってんだけど」

「納期は?」

「そこ? まずは出来るかどうかじゃなく?」

「納期次第」

「おいおい! スズキもだけど、タカハシさんもおかしいよ! 一旦落ち着け?」

「いや、希望納期次第」

「全然急ぎって訳じゃないんだけど、スラッシュキルトで招き猫とかリアル造形したらかなりシュールで可愛いかと思って」

 スズキ氏の言葉にうなずく。

「変わってて他にはないわな」

「それ! 他に無いものを作りたい」

 その意気込み、好きだね。

「その道のプロじゃないからゼロから型紙起こすのは難しいかも。とりあえず理想の造形を提出せよ」

 なんてやり取りがあってからしばらくして大きく方向転換。

 どうせなら地元らしいものを作ろうということになった。

 一案。県鳥である雷鳥。

 二案。県北部で化石が見つかっているナウマン象。

 象、となると少しイメージが付きづらいので、初回は雷鳥でぬいぐるみを作ることになった。


 まずはベースになるぬいぐるみを取り寄せ、なんとなくパターンに起こしていく。

「手っ取り早く壊して型どりしたら?」

 とスズキ氏は言うが、それはなんか負けたような気がして嫌なので却下。

 線の距離を細かく計りながらぬいぐるみの形にしていく。

 ある程度形が出来たらサンプルを作ってみて、どこをどのように修正するのか確認しながら再度パターンを引き直す。

 しかし、ベースにしたぬいぐるみは思い切りぽてっとしていてぬいぐるみ感が漂っているので、ここでリアル造形に振ってみる。雷鳥の画像をリサーチしながらのパターン修正(雷鳥は高山にしかいないので県民といえど、凡人にはあまり馴染みがない)。

 リアル造形一号として仮布で組み立ててみる。

 が、なんと言うか……、鳩? 溢れでる鳩感が半端ない。どこをどう見ても鳩でしかない。

 一人で考えていても仕方がないので、近くを通ったサトー氏を捕まえてどう修正したら良いのか方向性を相談する。

「何て言うのか……、足? 恐竜感ある足を作ってみたら? それと、嘴がくっと下を向いてるとことか」

 なかなか難しいことを言いなさるなあ。だが、やれと言うならやるぜ?

 恐竜感ある足ってどう引くんだ? とか思いながら構想を立てていると、

「お疲れお疲れ」

 スズキ氏が登場。

「ちょうどいいところに」

 リアル造形一号を見せるとかなりお気に召されたようで、「かなりいいじゃん。これ、ちょっと連れてっていい?」

 と、リアル造形一号を小脇に抱えて事務所に戻っていった。

 しばらくして戻ってくると、社内でも有名な山男に見せに行っていたらしい。「お墨付きもらった」と嬉しそうだ。

 あ、鳩で良いのね。と思ったが、とりあえずリアル造形一号でパターンは決定した(せっかく修正案出してくれたのにごめんよ、サトー氏)。


 こんな感じで、スラッシュキルトの快進撃は留まることがない。しばらくはグングン突き進んで行きそうだ。

 これからも、まだまだたくさんのアイテムが生まれることになるだろう。次はどんなものが飛び込んでくるのか(はたまた飛び出してくるのか)。

 どんな無茶振りにも振り落とされないようにしっかりと生地を掴んでおこう。

 攻めの姿勢でいられるように頑張りたいものだ。

定番商品になりつつあるスラッシュキルトシリーズです。

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