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17 可愛い子には旅をさせろ スラッシュキルト編

登場人物


スズキ氏

老舗縫製工場のファクトリーブランド「□O:△O」のブランドディレクター。

完璧超人の雰囲気が漂うジェントルマン。


サトー氏

「□O:△O」のプロダクションコントロール。

忘れん坊大魔王にして最強のポジティブ人間。


タカハシ

「□O:△O」のパタンナー兼サンプル縫製担当。

自尊心の低さなら誰にも負けない。

本作の主人公。

 スラッシュキルトにハサミを入れるとき、いつも思うことがある。

「ごめんね」

 決まってそんなことを呟いてから裁断をする。

 普通の生地ならなんてことはない。無感動で切れるのだか、スラッシュキルトに関してはそうはいかなかった。

 この子たちはただの布ではないのだ。一枚一枚手を掛けて作っている。その大変さを思うととてもじゃないが、ただの生地などとは思えなかった。

 それを聞いていたスズキ氏は「可愛い子だもんね」と。さすが、理解のある人だ。


 そんなスラッシュキルト、クッションカバーを制作した際にかなりのハギレが出た。

 捨てるのなんてもっての他! でもいつまでも取っておいてもかさばるだけだし……。

 ということで、余ったハギレからファスナーポーチを作ることになった。

 見た感じ、ざっと三十個は作れそうだ(どれだけ余らせてんだ? って話)

 折しも、東京の百貨店でポップアップを予定していたので、そこでの販売用にまとめて作って置けばいいということになった。

 ポーチの内側に入る生地はまとめて裁断班に依頼。スラッシュキルトの部分は自分で型紙が入る箇所を探しながら裁断。

 裁断班に渡していた分をサトー氏が「超速で切ってもらった」と持ってくると、珍しく要望を付けてきた。

「内側の生地さ、欠けてるのとか集めて継ぎはいだらかわいいと思う」

「めんどそー」

「あれ? 僕、仲間だよね?」

 笑い飛ばしてはいるが、若干しょんぼり気味。

 なかなかアイテム開発に関われないことを彼なりに気にしているのかもしれない。

 気が向いたらやっとくわー、くらいに言っておく。


 延々と三十個のファスナーポーチを作っていく。飽きてくるかと思っていたが、意外とそうでもない。むしろ、出来上がったポーチが並んでいくのを見てテンションがあがってくるほどだ。

 最後の一個まできて、ふとサトー氏の言っていた仕様を思い出す。

 一個だけだけど、やっといてやるか。

 内側の生地を上手い具合に継ぎはぎ、最後のポーチを縫い上げた。


 完成品をチェックしている際に特別仕様のポーチに気づいたサトー氏は「当たり見つけた」と嬉しそうにニコニコしていた。

愛しい子過ぎるので、裁断するときは気合いが要ります。

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