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16 年越しのクッションカバー スラッシュキルト編

登場人物


スズキ氏

老舗縫製工場のファクトリーブランド「□O:△O」のブランドディレクター。

完璧超人の雰囲気が漂うジェントルマン。


サトー氏

「□O:△O」のプロダクションコントロール。

忘れん坊大魔王にして最強のポジティブ人間。


タカハシ

「□O:△O」のパタンナー兼サンプル縫製担当。

自尊心の低さなら誰にも負けない。

本作の主人公。

「良い話と悪い話がある。どっちを先に聞きたい?」

 アイロンをかけるわたしの横でスズキ氏が言った。

「同時に言ってみる?」

無茶なリクエストをしてみたが、

「実は同じ話」

 はて? 首をかしげる。

「クッションカバー十個追加になりました!」

 なんとコラボ先の家具のリペア工房さんがクッションカバーをお気に召していただいたようで、めでたく追加生産が決定したようだ。

「今度は円錐型を希望してるみたい」

「エンスイ?」

 クッションカバーからかけ離れた形状だったのでスズキ氏の言葉の意味が一瞬不明だった。

「山型ね」

「ああ……」

 相づちを打つがいまいちピント来ない。

 はて、円錐型のクッションカバーとは。


 気を取り直して、とりあえずパターンを引こう。

 しかし、これ、円周率とか使わないとダメなやつか? あー……、算数でコケてる身としては超めんどくさいやつだわ。

 使うスラッシュキルトの大きさを計りながら、そこに入るサイズでパターンを引けば、大きさは自ずと決まってくる。

 で、何とかして底面に来る円の直径を求めてから、CADできれいな丸を引く。

 って、これ、どこにファスナー付けんのよ。

 個人的には底面と側面の境が良いけど、勝手にやって「ああー……」なことになりたくないのでスズキ氏に確認を取る。

「うーん。側面かな」

 やはりそう来たか。勝手にやっとかなくてよかった。胸を撫で下ろす。


 試作として出来上がったクッションカバー見て、「かわいい!」とテンションが上がっている二人。サトー氏に関しては「おい!」な言葉を連発している。

 しかし、時は年末。納期まで稼働で半月くらいしかない。ヒャッホーなことに、ストックのスラッシュキルトもない。

 怒涛のスラッシュキルト制作が始まった。


 急ピッチでスラッシュキルトを作りまくってから、遊び心を存分に加えた変形円錐型をデザイン。

 円錐の頂点ずらすってどんな型になるの? なんて思いながら、数式をネットで検索して型紙を引く。

 ここまで来るとクッションカバーハイになっていて、物事の分別がついていなかった。

 上がったクッションカバーは最初の試作からかなり巨大化していて遊び心加えすぎな型をしている。

 しかし、クッションカバーハイなわたしたちには物事の分別が付いていない(二回目)。

 イケイケどんどんな状態でいたところを猫だましを食らわされて正気に戻る。

「あれ? これ、いかんかも」

 急遽路線変更。

 全てのクッションカバーをほどいてから、再度パターンを引き直す。

 さて、あとは縫うだけ。

 しかし、ここで年末年始の休業に突入。

 ああああ! 納期は年明け直ぐなのに! 年明けたら本業の裄詰めが、ガッツリ入ってきてんだよ! 手を出せないよ、どうすんだよ!

 ってなことを一応上司であるサトー氏に直談判。

「しゃあねーなー」

 と内職として休み中に消化することになった。


 年末年始休業から明け、クッションカバーハイでもなくなっていたわたしたちは、作り直したその子たちを見て、「かわいいなぁ」と悶えていた。

この頃は刺激物飲みすぎて強炭酸じゃ物足りなくなってるような状態でした。

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