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10 頑張ってる訳じゃない シャツジャケット完結編

登場人物


スズキ氏

老舗縫製工場のファクトリーブランド「□O:△O」のブランドディレクター。

完璧超人の雰囲気が漂うジェントルマン。


サトー氏

「□O:△O」のプロダクションコントロール。

忘れん坊大魔王にして最強のポジティブ人間。


タカハシ

「□O:△O」のパタンナー兼サンプル縫製担当。

自尊心の低さなら誰にも負けない。

本作の主人公。

「モリモリで申し訳ないんだけど」

 スズキ氏がシャツジャケットのサンプルを眺めながら言った。

「どした?」

「ポケットを立体的にしたい」

「マチ付き?」

「うん。出来るかな?」

「不可能ではない」

 元々、少し特殊な形状のポケット。ここにマチを付けるとなると……。

 いくつかのパターン案が浮かぶ。

「字の目通す? それともバイアス?」

「字の目通す、で。谷折とかに出来たら理想」

「OK。とりあえず部分サンプル作ってみる」


 一回目。

 何も考えずにとにかくマチの字の目を通すタイプのポケット型を引く。

 上がったパターンを見て若干の違和感。なんだろう?

 引っ掛かりを覚えるが考えても仕方がない。とりあえずサンプルを作る。

 あ、これダメだ。途中まで縫って気付く。

 ポケットの形状のせいでこのタイプのパターンでは形にならない。

 方向転換。


 二回目。

 ポケットの外形線をトレースしてからマチのパターンを作る。

 パーツ数が多くなるが、リクエストに答えるにはこのタイプが一番しっくり来そうだ。

 思った通り、部分サンプルは申し分ない状態で上がった。

 あとは縫製工程を調整すればいい。


「また変なの作って」

 サトー氏が部分サンプルを見て言った。

「頑張ってんな」

「そうでもない」

「ふーん」

 サトー氏はわたしが頑張っていると思っているようだが、そんなことは欠片もない。

 わたしは別に頑張ってはいない。

 ただ、頭の中にしかないものを形にしたいだけだ。

 もしも、わたしが頑張っているとするならばそれはスズキ氏の情熱を形にする手助けをしたいだけなのかもしれない。

「本気で着たいもの作らないと、きっと誰も見ぬ気もしないんだ。自分で着たくないものなんて、誰が欲しいと思う? だから最後までこだわったものを作りたい」

 それは、わたしがかつて抱いていた想い。

 彼のリクエストに応じるのは、わたしが今までどこかに置き去りにしてきたものを拾い集めるため。

 ただそれだけなのだ。

 だから、頑張るとは違う。


 そしてデザインは固まった。

 縫い上がった最終サンプルを見てサトー氏が「いいじゃん」と呟いていた。

さすがに、いろんな意味で大変な仕様はボツにしていただきましたよ?

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