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Fingers!  作者: いえのひと
1/8

虹の光

この物語はフィクションです。

登場する人物及び土地、組織、能力等の名称は全て、

実際の人物及び土地、組織等とは一切関係ありません。

目の前に柔らかな虹の光が広がる。

一つ、また一つと、小さな砂場とブランコの残骸しか公園の空に、一人の少女の手によって小さな光のアーチが描き出されていく。

「すげー!!!」

少年は潤んだ目を輝かせて、そう叫んだ。

灰原(はいばら) 蒼真(そうま)、4歳。

まだ少し充血した目をいっぱいに見開いて、不思議な光景に釘付けになる。

虹を描いていた少女・・・雨之(あまの) 彩華(あやか)は、そんな彼の姿を見て優しく微笑む。

「・・・ありがと!あやかねーちゃん!」

蒼真はそう言って、ピョコピョコ跳び回りながら虹の下を走って行く。

「ちゃんと前見ないと危ないよー!」

そう言いつつも、自分も空を見上げてよそ見しながら蒼真の後を追いかけて行く。


2人駆け回る公園。裏手にある墓地からは、細い線香の煙が立ち上っている。


少しして、走り付かれた彩華の元へ蒼真が駆け寄って来る。

「ひゃっ」

突然手を取られて、彩華は思わず声を上げた。

「へへへ・・・ねーちゃん」

蒼真は二ッと歯を見せて笑い、そしてそれから少しもじもじと恥ずかしそうに顔をそむけた。

「あの・・・ね」

何か言おうとしたその時、遠く離れた公園の入り口から蒼真を呼ぶ声がした。

「おーい蒼真!そろそろ帰るぞー!」

「っ」

少し枯れた、父親の声。

2人はなんだか恥ずかしくなって、やけによそよそしく互いの手を放した。

「ばいばい」

小さくそういって、蒼真は虹の消えゆく公園の中を父親の元へ走って行った。

「・・・ばいばい。」

彩華はそう言って、夕焼け空に浮かんだ消えかけの虹たちをぼんやりと眺めていた。



「・・・・・・。」

すっかり日も暮れ、月が町を照らす中で、彩華は無言のまま虚空に指をかざす。

すると、柔らかな虹色の光が指先から流れ出して、空に鮮やかな虹を描き出していった。

「・・・・・・・・・なんでだろ」

小さく呟いて、目の前に浮かぶ虹をしばらく眺めてみた。

優しい光のアーチは、少しずつ少しずつ夜闇に溶けて薄れていく。

「・・・・・・・・・・・・。」

やがて虹が消えてしまうと、彩華は寂しそうに笑った。

そうして、灯りの消えたままの家に帰って行った。


町を照らしていた月が、薄く伸びた雲に隠れて、辺りは少しだけ暗くなった。

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