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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

少女はソーダ水に溺れる

作者: 花弁 阿奈羽









 気泡が絶えず身体をなぞり、身体にソーダ水が纏わりついていく

          『恐い…』

 そう思いながら荷物をぼんやりと眺める

        『また、会おうね』

 心の中である人に告げると彼女はゆっくりと意識を手放した










 














       少 女 は ソ ー ダ 水 に 溺 れ る















 朝起きて学校へ行くのも嫌になるような夏のある日

 五月蝿い位に騒がしい蝉が朝の目覚まし時計代わりに私を起こしてくれる

 「  !早く起きなさい!」

 ベットから中々出てこない私に母は毎日の様に声を掛ける

 「うだ~!分かってるからほっといてよ~!」

 そして、そんな声掛けに対する私の返しも繰り返す毎日と変わらない

 「後で何と言っても私は知らないからね!」

 母はそう言うと、朝御飯とお弁当の準備をしてくれる

 こうなったからには自分でシャキッと起きて学校へ行かなければならない

 「…めんどくさい。学校休みたい…」

 そうは言うものの、学生というものは憐れな生き物である

 ぐだぐだ愚痴を溢しつつも、身だしなみと学校へ行く準備はきちんとこなす

 朝御飯をしっかりと食べ、忘れ物のないように確認を済ませ、少しばかり余裕を持って学校へと向かう

 途中で見かけた猫の写真を撮ったり、気に入りの曲を聴いたりしながら通学をする

 「~♪」

 朝には悪かったはずの機嫌が良くなり、お気に入りの曲を口ずさむ

 クラスでは友達の菊菜や椿と挨拶を交わして他愛もない話をする

 いつもと変わらない日常。学校ではつまらない授業を聞いて、友達と駄弁って、部活は程々に楽しんで、少しの疲労を覚えて帰る

 そんな当たり前な日常

 それが続くと思ってた


 「  さん!好きです!付き合って下さい!」


 いきなりの告白。私の頭は真っ白になる


 「あの、  さん?いきなり告白した僕が言うのもなんですが、どうかされましたか?」

 「え?い、いや、何でもない…」

 「そうですか。あ、あの、へ、返事はいつでも良いので!」


 そう言い残すと彼は私を置き去りにして行ってしまった


 (え、え~!待って!私、告白されたのよね!ど、どうしよう…返事、前向きに考えるべきなのかな…)


 どう答えようか考えながら初めての告白にどぎまぎした



 急なことでその日はぼんやりしながら家へ帰り、家へ帰ってからも暫くは告白の返事を考えていた


           翌日


 「…ってなことがあったんだけど…どうすれば良いかな」

 「はぁ!なにそれ!めっちゃアオハルじゃん!」

 「おめでと~!」

 「おめでと~!って、椿、私まだどうするべきか分かんないから相談したんだけど~」

 「…相談って言われてもさ、あたしよく分かんないから困るよ~。でもさ、私だったら多分OKするよ~」

 菊菜は明るくて元気だから、本人の言うとおりその場で付き合い始めそうだなぁ。って考えて苦笑する

 椿の意見は何だろう?と思い、二人で視線を向けると

 「う~んと、私は多分付き合わないで友達になってもらう~」

 と、ある意味、菊菜よりも勇者の様な発言をする

 「「いや、それ気まずくね?」」

 私と菊菜のツッコミが入り、本題へと戻る

 「でさ、  はどうしたいの?結局さ、それが一番じゃん、あたし達の意見はあくまであたし達だったら。ってなだけだし」

 「…うん」

 そう、曖昧に答えを返すと、周りから、世界から音が消えていく

 (あぁ、また、独りぼっちになるのかな…)

 ゆっくりと瞼を伏せてそんなことを考えた


 私には誰にも言えてない秘密があった

 …ううん、また、独りぼっちになるのが怖かったんだと思う。ただの我が儘で皆に嘘を吐き続けて、薄っぺらい笑みを浮かべて、また、独りぼっちになっていく

 私は昔からたまにだけど世界から音が消えて独りぼっちになることがあった

 親に相談をしたけど寄り添ってくれるどころかまるで、恐ろしいものを見るような目で見られて暴力を受けてきた

 私の肉親は十歳の時、私を置いていった時に起こした事故で死んだ

 別になんとも思っていなかったから涙は一切出なかった。でも、それが不気味だって言われて親戚の家を盥回しにされて、ストレス発散の為の道具とされてる時に今のお義母さんに引き取られた

 お義母さんはとっても優しくて素敵な人だったから、『お義母さん』じゃなくて『お母さん』と呼ぶことにした

 それからの日々は楽しくて嬉しかった

 前の場所では誰も私に声を掛けてくれなかった。多分、私のことを気遣ってくれていたのだろう。でも、そんなこと、私にとっては逆効果だった

 今まで以上に独りになって惨めになった

 私は本当に此の世に存在しているのかさえ、判らなくなっていた。虐待を受けている事だけが私が私である時だったのかも知れない

 けれど、今はもうその土地から離れてあの頃と全くもって違う生活をしていた。だから、最近はあまり独りになることはなかったのだ

 けれど、私の日常は壊されてしまった

 彼に悪気なんて微塵も無かったに違いない。でも、確かに告白されたあの日、私の歯車は更に壊れてしまったのだ。…いいや、元から壊れていたのかも知れない。「要らない子」の私には居場所なんて無かったのに無理やり居場所を作った罰が当たったんだ



 「あのね、桔梗君、あの告白なんだけど…ごめんなさい!」


 「…あ、そっか…いや、こっちこそごめん…それじゃ、そういうことで!」



 桔梗君からの告白を断った数日後、私には嫌な影が差していた



 いつも通り通学をしていると、後ろから誰から付けられている気がするし、視線を感じる

 (こういうときは…無視するか、人の多いところに逃げるべきかな)

 そう考えると、早速早歩きをしてみる

 パタパタ…パタパタ

 (うん、多分付けてるな。しかも、私を付けてる。それなら電車よりも歩きで行くべきか…面倒だな。それなら交番に逃げ込むのもありだが居なかったときのリスクが大きい)

 そんなことを考えて小走りで逃げつつ、登校する

 学校に着くと、その人は追いかけては来なくなった

 (?…追いかけて来ないところをみると学校関係者では無さそうだな…より厄介なことになったか…)

 そういう風に思考を巡らせ終えると、無事逃げることができた安心感からか、身体から力が抜け、その場に座り込む形になった

 いきなり教室で座り込んだ私に対してクラスメイトは心配そうに声を掛けてくれる

 「気にしないで、ちょっと眩暈がしただけだから。心配してくれてありがとう」

 声を掛けてくれたり心配してくれたクラスメイトに対し、そう答えると私はスカートに付いてしまった埃を払い、元気な素振りをする




 帰りは菊菜と椿と一緒に帰ることで不安を紛らわせた。でも、それは気休めでしかなくて、帰りにもその視線を感じた


 家に着くと、自分の部屋に篭り

 「あぁ、もう嫌だなぁ…いっそ、死んでしまえば楽なのかな…でも、ようやく自分の場所を見つけられたのに」


 翌日も明後日もその人は私を付けてきた。私は大分疲れてきて嫌になった



 そんなある日、夏真っ盛りの日、私はバイトをする事になった。それは水族館の水槽の掃除のバイトだ

 その水族館は先月閉館したばかりで、水槽はどこかに寄付されるようだった

 今日はその水槽を綺麗にする事らしい

 「うわ~この広さ、凄いな…」

 広い硝子張りの水槽を綺麗に掃除する。すると、何故か水が張られ始めた

 急に悪寒が走り、急いで水槽から出るとそこには知らない人

 「あ、あなたは誰ですか」

 私がそうその人に問うと、あまりにも胡散臭い笑顔で何も言わずにその人は近付いてきた

 私は謎の恐怖に支配され、動けなくなった

 私のすぐ傍まで近付くと

 「僕はね、  さん、君のことをずぅっと視ていたよ」

 喉がヒュッ…と音を鳴らし、私はこれまでの視線の正体が理解できた

 「僕はね、悲しいよ。最近の君は四組の桔梗?とか言う男に告白されて、動揺して、それから僕はね、君を見守ることにしたんだ」

 男は恍惚とした表情で今までを語る

 「…っ、理解、できない。じゃぁ、何であの日から視線を感じることになったの!」

 私の叫びを聞き、男は

 「それはね、僕が君の為に会社を辞めて、君と一緒に居られる時間が増えたからだよ」

 男はニタァと気味の悪い笑みを浮かべて話続ける

 「…でも、君は僕に気が付いても告白はしてくれなかった。だから、君とはもう、さよならだ」

 そう告げると男は私を水槽へと突き落とした。とても悲しい表情をして

 「…最期に。僕の名前を教えるね。僕は桑。君を殺したあと、すぐに追うからね」


           バシャッ


 水面に波紋を広げ、私は水槽の中へと堕ちてゆく

 (息が、苦しい…)

 ゴポゴポと耳の奥で水が入った音がする

 しかし、水泳の時とは感覚が全くもって違う

 耳が痛くて、身体には絶えず気泡が這う

 (これ、もしかして、炭酸水?…でも何で?)

 そんなことを思うけど、考えるのは止めた

 沈みゆく身体の感覚を感じながらふと水槽の外を眺めた

 目が痛かったけど、そこから見えた景色はぼやけながらも美しかった

 荷物が目に入ると皆の事を思い出した

 菊菜、椿、ごめんね。最期に挨拶できなくて

 躑躅お母さん。ごめんなさい。貴女に親孝行をすることができなくて。お母さんに白い花と白い服をプレゼントすることが出来ません

 ゆっくりと瞼が閉じられ、瞳には一雫の涙が浮かんだが、ソーダ水に溶けていった

 ソーダ水が口に入り、うまく言葉にできなかったが、彼女の最期の言葉は確かに皆の心に届いた

      『また、会おうね。さようなら』

 そして、彼女の身体にはソーダ水が纏わりつき、苦しいはずなのにどこか安らかな表情をしていた

 警察が彼女の元に着く頃には水槽に沈む彼女の亡骸と、水槽のそばにどこか空虚な目をした男の亡骸があるだけだった


                      終

初投稿です。矛盾点だらけですね。はい。

友人と読むようにパパッと書いた三時間クオリティの小説です。

作者は豆腐メンタル&ガラスの心なので取り扱い注意です。

(↑誰も聞いてないですね。)

最後に、沢山ある中で私の拙い小説を選び、ここまで読んでくださり、ありがとうございました!

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