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秘められた想い

作者: vを見る者

雪が止み、太陽の光が差し込む昼下がり。体を起こし僅かに窓を開けると、5年前、同じ病院に入院していて歳も近かったために仲良くなった親友が半年ぶりに会いに来た。


 


青年「ふーん……来てくれたんだ。せっかくの正月だというのに暇なヤツめ」


親友「あけましておめでとう」


 


親友の顔はどこか暗く、何か思い悩んでいるようだった。


 


青年「……はいはい、明けましておめでとう。今年もどうぞよろしく頼むよ。まっ、後どれだけよろしくできるのかは分かんないけどね。」


 


笑顔の似合う親友に戻ってほしくて、そんな軽口をたたく。


 


親友「……」


青年「あはは」


 


無言で近づいてきた親友は軽く俺の頭を叩く。


 


青年「……ったぁ……病人に向かって何すんだよバカァ!!ただの病人ジョークだっての!あーこれ絶対悪化したわー……って、あれ?」


 


俯いている親友は一向に顔を上げず、いつもならここでツッコミが入るのにと思いながら親友の顔を覗き込む。


 


青年「お前、もしかして泣いてるのか?」


 


親友はただ黙って首を横に振るだけだった。


 


青年「嘘つけ、だったら顔上げてみろよ」


 


親友の額に手を当て、軽く押すと抵抗なく親友の顔が上がった。


 


青年「フフッ、よくそんな顔して泣いてないなんて言えたな。よーしよし、いい子いい子」


 


額に置いていた手を頭の上にやり、嫌がって離れようとする親友を無理やりなでる。


 


青年「ははっ、照れんなって」


 


笑いながら、この瞬間が楽しいと感じていることを意識する。


そして表情を改めて、親友の目を見ながら切り出す。


 


青年「……で、いつから気付いてた?」


 


親友は突然の変化についてこれないのか、どもりながら


 


親友「な、何のことだ?」


 


心なしか、声も震えているようだ。


 


青年「今更惚けんのはやめろよな。正直、俺が傷付く」


 


視線を親友から外し、ベット上のシーツへと移す。


 


親友「ご、ごめん……」


青年「……ふっ、何謝ってんだよバーカ。嘘だよ、うーそ。いつもいつも騙されてほんとバッカみたい、あはは!」


 


笑い声が病室に響く。


一頻り笑った後、壁にかけられている時計が目に入った。


 


青年「……このまま時間、止まってくんないかな……」


 


ポツリと心の声が零れてしまう。


 


親友「え?なんて?」


青年「……いや、なんでもない」


親友「……そうか?まあ、あんま長居しても悪いからここらで帰るわ……」


 


親友の顔は辛そうに歪んでおり、普段と違う振る舞いに、もう、今までの関係性ではいられないことを否応なしに分からせられる。


 


青年「何だよ……。いつもならギリギリまでいるのに……」


 


ボソッと呟いた言葉は親友に届く前に周りの雑音で搔き消されてしまった。


 


青年「……なぁ、一つだけ約束してくれないか?」


 


驚いて振り返る親友に視線を戻す。


 


青年「俺、こんなんだけどさ、お前は……お前だけは最期まで親友のままでいてくれるか……?」


 


泣きそうな顔をして表情を完全に歪ませる親友は、声を発さず、首を縦に振る。


 


青年「また……今度な」


 


親友が病院を出て、駅の方へと向かうのを、冷え切った外気が病室へ流れてくることも気にせず、親友の姿が見えなくなるまで眺める。


 


その日の夜、病室のベットには雪が降り積もっていた。

にじさんじの周央サンゴさんの台詞読みお正月編が原案となっております。素晴らしいシチュエーションと台詞をSSにしました。

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