依頼人
最初だけですね
この空気は(^ω^)
某県天津市神楽町
雑居ビルが乱立する薄汚れたこの街
騒がしい喧騒と煩わしいネオンで今日も賑わう
しかし、明るく騒がしいのは表通りだけで少し道を外れ路地に入ると世界が変わったかのように静かになる
通りから外れ
不良に絡まれているホームレスを横目にひたすら狭い路地を進む
娼婦に3〜4回程声をかけられても尚進んで行くと急に開けた場所にでる
薄汚い雑居ビルに囲まれポツンと一軒の小さなバーが目に止まる
《Bar Shamrock》
『いらっしゃい。』
クローバーをかたどったマークがついた扉を開けると白い髭を短く丁寧に整えた老紳士がニコニコと気持ちの良い笑顔で出迎えてくれる
カウンターに案内されとりあえずマティーニを頼んだ
ふと店の奥に目をやると白いシャツを来た1人の男が眠たそうにシェリー酒を瓶のまま飲んでいる
左手には黒い煙草が紫煙をくゆらせ
甘い匂いが立ちこめていた
『どうぞ。』
マスターの老紳士がカウンターにグラスを優しく置いた。
一口飲飲むとよく冷えていて美味しい
さて…わざわざこんなところにまで酒を飲みに来たのではない
本題に移ろう
もっとも今からまたあるカクテルを頼むのだが…
私はマティーニを飲み干すとコートのポケットから一枚のカードをカウンターに置いた。
クローバーのエース
ここの場所を聞いた情報屋のからもらったなんの仕掛けもないただのトランプ
本当にこれでいいのだろいか…
不安になったが、ここまで来たら半ばヤケだ。
勇気を出してカクテルを注文する。
『…すいません。シャムロックを頂けますか?』
間違ったら間違ったでいい
一杯引っ掛けて帰ればいいのだ
マスターが落ち着いた声で呟く
『かしこまりました。』
あぁ…やはりあの胡散臭い情報屋に騙されただけなのだな…大金を叩いて買った情報がただのお洒落なバーの場所だとは…。
そう思った瞬間マスターが再び口を開く
『瞭。仕事だ』
先程とはうって変わった調子でぶっきらぼうに声を出した。
『あ〜いょ』
それに答えるように店の奥にいた白シャツの男がやる気のない声で返事をしながら私の横に座った。
先程は店内の暗さで分からなかったが、よく見ればこの男かなり若い。
年は今年大学生になった私の娘と同じくらいかそれより若い
少し長めの黒髪を後ろで束ねている、左耳には銀色のチェーンで繋がったピアスをしていてキリスト教徒がかける黒いロザリオを首からかけていた
まさかこの若者が…まさか…有り得ない…。
呆気にとられているとその男が明るく話しかけてきた
『ど〜もSamrockにようこそ。悪魔払い請負人 黒崎 瞭 です。何かお困りですか?』
情報屋が正しかったのは嬉しいが
私はただただ呆気にとられるしかなかった…