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動物くん

作者: 杉将

子供の頃、動物園にいる動物を、動物くん、と呼んでいた。あれは? とお母さんが猿を指差すと、あれは動物くん、と僕は答えていた。ゾウもキリンもライオンも、動物くんだった。お母さんはお茶目な顔をして、お母さんは? と言った。お母さんはお母さん、と僕は答えた。

少し成長した僕は、学校にいるウサギも動物くんと呼んだ。今ではウサギはウサギだし、猿は猿だけれど、子供の頃は、動物くんに他ならなかった。じゃあ全部同じなのね、と言われれば、僕は首を横に振った。同じじゃない、けれど動物くん。子供の頃の僕はこの気持ちをうまく伝えることができなかったし、今だって難しい。

ある日、学校の日誌に、こんな事を書いた。

「動物くんを見ていると、動物くんがやってきて、動物くんのエサをうばいました。よくない事だと思ったので、動物くんから動物くんの分のエサをうばって、動物くんに返しました」

先生は、動物くんってウサギのこと? と僕に聞いた。動物くんは動物くん、と僕が答えると、先生は、ふざけるな、と言った。本気で怒ってるようだった。僕は自分の筆箱から消しゴムを取り出し、日誌に書いた言葉を一生懸命、消した。そして、動物くんはいなくなりました、と先生に言って教室から走って逃げた。それから、夕暮れの空を飛ぶカラスに向かって、動物くんバイバイ、と言った事を、今でも覚えている。

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