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伝説の魔物使いが死んだ後の世界がマジでヤバい  作者: しら玉草
第1章:ハイドロゲンスライム
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VSスライム1

投稿が遅れて申し訳ないです。

ブクマしてくれている方、どうかそのままで。

今回はようやくスライム戦でございます。


 異世界より舞い降りし勇者アサヒ。

 彼の者、異世界より持ち込みし伸縮性の高い動きやすい衣服を身に纏い、弓も無いのにその手には矢を握りしめる。そして草原に佇み物思いに空を見つめていた。


 なんて、自分にナレーション入れてみたり。



「……やることねぇなぁ」





 ギルドで受けた依頼は町周辺のスライム討伐。

 この世界のスライムもゼリー状のプルプルとした可愛い奴だった。水風船の様な体の中に目玉の様な物があって…あー、あまり可愛いとは言い切れないな。


【クックウェン周辺のスライム討伐】

【スライム1匹につき1C、小魔王を倒した者には100000C】


 普通スライムは10匹倒して1Cくらいが相場らしい、それくらい弱いモンスターなのだがクックウェンのスライムに限ってはみんな手を出したがらないため値段が上がる。


 まぁ、そりゃそうだろう。何せ小魔王スライムは他の雑魚スライムと見た目が同じだと言うのだからリスクが高すぎる。

 更に言うとスライムは仲間意識が強く、スライムを狩ってると他のスライムも寄って来ると言うのだ。寄って来たスライムが小魔王かもしれない、そう思うと誰も手を出せない。


 ……と、聞いていたのだけど。



「あははははー!なぁなぁアサヒー!1匹1カッパーはうみゃーなぁ!」


「は、はは…、ソーダネー…」



 豪快に斧を振り回しスライム達をオーバーキルしまくるマヒル様。

 本当に水風船でも割るみたいにスライム達が次々と弾け飛ぶ。

 その中に小魔王居たらどうすんだよ、もう乾いた笑いしか出てこない。

 暴れまわるマヒルを眺めるだけの簡単なお仕事です。



「アサヒー、スライムの核ひろっといてー」


「核?」


「その小さぁてプルプルしとぉ丸いの。倒した証になるに」


「ほほー」



 なるほど、良く見ればビー玉くらいの大きさの丸い物が転がっている。


「アサヒはやらにゃあのぉ?」


「いやぁ、むしろ何でそんなに無造作に狩れるのさ、小魔王居たら反撃くらうっしょ」


「私のスキル、【直感】を舐めにゃあでほしいにゃあ」


「小魔王がどれか分かるの?」


「分かんにゃあ。でもたぶん分かる気ぃするに」


「曖昧なスキルだなぁ」


「アサヒの仲間んなったんもこのスキルに委ねたからにゃー」


「ふむ、それならば信用するしか無いね」



 マヒルの直感は合ってたのだと証明してやらねば愛想を尽かされるかもしれないな。



「俺も戦ってみるよ」


「おー、じゃあ私見とぉね。アサヒの戦い方興味あったんよ」


「はは、プレッシャーだなぁ」



 闘神ライオルト族が満足する戦いなんて見せれるはずも無いのだけどね。



 俺は周りを見渡すと小川に架かった小さな橋まで移動した。小川とは言ってもけっこうな川幅と高低差だ、飛び越えるのは無理だろう。アーチ状の木製の橋を越えて反対側へ。


「…アサヒ?」


「ふふふふ、くらえぇ!」


 俺は握りしめた矢を肩の位置に構え、強く絞り込むと回転を加えて投擲した。

 そう、川を挟んで遠くのスライムへ。


 矢が当たったスライムは一撃で弾け飛ぶ、やはりジャベリンマスタリーはなかなかの火力、そして高い命中制度を誇るスキルだ。


 え?なんで川を挟んだかって?スライムは仲間意識の強いモンスター、ゲームで言うところのリンクモンスターだからだ。

 仲間を倒されたスライム達のヘイトを稼いでしまい他のスライムが寄って来る。…が、スライム達は川を渡れずに立ち往生。橋まで回り込む頭脳は無い。


「ははははー!ざまぁみろ!」


 あとは1匹ずつ矢を投げつければ勝利だ。楽勝過ぎて笑いが止まらない。


「あっはっはっはー!くらえ!くらえ!」


 次々とスライムを撃破する俺。向かって来たスライムは10匹、しかしいくら数がいようとも関係無い、相手の攻撃は俺には届かないのだから!


「楽勝!楽勝!はっはっはー!は…、は、はぁ!?」


 矢筒に…矢が…無い!?



 いや、考えてみたら当たり前だった。矢は6本、投げたら終わり。

 硬直状態のまま残りのスライムと睨み合う、お互いに攻撃手段を持たず緊張が走る。


「ふっ…、スライムよ、なかなかやるじゃねぇか。俺をここまで追い込むとはな」





「アサヒ何やっとお…」


 飽きれ顔のマヒルが向こう岸から近付いてくる。ナイスタイミング。


「助けてくださいマヒル様ぁ!」


 マヒルが戦斧を一振り、それだけでスライムは全て吹き飛んだ。



「ふっ、スライムよ、良い勝負だったぜ」


「………」


 マヒルの飽きれ顔が俺のピュアハートを深く抉る。

 違うんです、こんなはずじゃ無かったんです。スライムがちょっと多かっただけなんです。


 この世界の弓使いってどうやって戦ってんのさ、矢が足りな過ぎるだろ。



「せこい上にダサいにゃぁ…」


「お、俺の本領は強敵と戦う時に発揮されるから!」


「私の直感外れたかにゃあ…」


「チャンスを!もう一度チャンスを!」


「とりゃーずこっち側戻ぉて矢ぁ拾ぉにゃあよ」



 やばい、見捨てられる。橋を渡る俺の目はもう半泣き状態、マヒルに見られないようにうつ向いて歩く。死にたい。



「アサヒ!早ぉこっちに来るにゃ!」


 急に声を荒らげるマヒル、何も怒らなくても良いじゃないか。


「アサヒ!後ろ!スライムいる!」


「うぇ?」



 さっきまで俺が居た方へ振り向くと確かにそこに居たのは1匹のスライムだった。

 ゼリー状で、水風船みたいで、何の変哲も無い普通のスライム。


「そいつ何か嫌な予感がするにゃ!」



 スライムの体がブクブクと泡立つ、それはまるで沸騰しているようにも見えた。

 明らかに今までのスライム達と挙動が違う。


「アサヒ!!」


 一際大きなマヒルの叫び声にハッとする。こいつが小魔王か?



 スライムの体に一瞬だけ見えた小さな火花、そしてその刹那に起こる大爆発。

 こちらに向かい広がる爆炎は爆風と共に地面を抉り橋を吹き飛ばした。


 一瞬で最大火力に達する大火災、高温の風圧が周囲を凪ぎ払う。



「ア…、アサヒー!」


 咄嗟に距離を置き身構えていたマヒルは風圧に押されるだけに留まった、では到底助からないであろう直撃コースの俺はと言うと…。


「はいはーい、生きてますよー」


 川の中から頭を出して生存アピール。そう、川に飛び込んでました。


 焼けた木屑がパラパラと舞っている。川が無かったら直撃をかわしても大火傷だ。濡れた体越しでも空気がジリジリと熱い。

 マヒルが警告してくれてなかったら後ろから燃やされていきなりゲームオーバーだったに違いない、そう思うと鳥肌が止まらない。




 川から岩肌に飛び付き手を掛けると体を持ち上げてマヒルの居る方へと這い上がる。


「よっと」


「アサヒ…、良かったぁ…」



「うーん、あまり良くないかも?」


 もう一度スライムの体が泡立ち始める。信じられない事に連発可能らしい。


 俺は吹き飛んだ橋の支柱を一本拾い上げてスライムに向かって構えた。

 丸太って案外どこでも拾えるのな。


「アサヒ?何しとぉ…」


「投げる」


「え!?」



「さっきはよくもやりやがったな!くらいやがれえ!!」


 足を強く踏み込み渾身の力で丸太を投擲した。

 スキルで強化された大きな丸太はスライムの小さな体めがけて直進する。



 やったか?…なんて思う時は大抵ダメな時、俺の渾身の一撃もスライムには届かない。



 眩い光と轟音が俺の勝機なんていとも容易く打ち砕いた。

 再び放たれた灼熱の爆風が丸太を木屑に変え、大きく削れた地面は土砂となり川を埋めた。


「あいつ…、自分で道作りやがった」


 川を越えて来たスライムの体はまたも泡立つ。ふざけんな、何発撃てるんだ。


「…逃げよう」


「…だね」



 スライムから全速力で逃げる、走るのには自信がある。ある、はずだった。

 しかし陸上で鍛えた自慢の足はマヒルの全速力に全く追い付かない。これが種族の差か。

 というかマヒル、背中に斧背負って四足歩行で走ってる、追い付けるはずが無い。


「つか、平たい土地じゃパルクール意味ねぇ!」


 ただの草原にショートカットする障害物などありはしない。

 それでもスライムよりは早いはずだ、そう思いスライムとの距離を確認する。



「うわああああああ!!頭おかしいんじゃねぇか!?あのスライムぅぅ!!」


 スライムの足下、いや、足なんて無いけども、下部が細かい爆発を繰り返し爆風に乗ったスライムがドンドン加速してくる。


「無理!追い付かれる!」



 追い付かれる?…なら。


 俺は矢筒を外してスライムの方へ構えると急停止した。

 爆風で加速するスライムは急には止まれないし向きも変えれない。


 スライムはその勢いのまま矢筒に体当たりしてしまい後方へ押し戻されるように弾け跳び流石に大きく怯んでいた。


「ふはははは!質量の軽い方が押し負けるのは当然の事よ!」


 俺は捨て台詞と共に壊れた矢筒も投げ捨ててまた全速力で逃げ出す。




 先行していたマヒルが少し速度を落とし俺と並走する形になる。


「もぉ少しで町にゃ、アサヒやるにゃあ」


「惚れ直した?」


「…見直した」




 スライムはもう追ってこない、なんとか町まで逃げ切る事に成功したようだ。

 息を切らし倒れ込む俺と違ってマヒルの息は全く乱れない、獣人ずるい。



「俺の矢筒ハイパー硬いんすよ」(武○壮っぽく)


前回揃えた武器は矢筒含めて全て消えました(笑)

次はスライムに対抗するための作戦会議的なお話になる予定です。

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