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マジでヤバい

最終話です。

ここまで読んでくれた皆様に感謝。


「カカッ、そろそろ離れたらどうかの?人前でいちゃつくでないぞ」


 ガイアの声?そうか、やはり体の主導権を奪いに来たか、せめてマヒルとヒイリを逃がさなくてはならない、大丈夫だ、まだ俺の意識はある。


「アサヒ?体の色、元に戻っとおよ」


「え?………あ」


 それによく見たらガイアは既に俺の体から出て実体化していた。



「何が何だか分かっておらんようだの?…よし、事の顛末てんまつを語るとしよう」



 ……… …… …



 まとめると、こういう事らしい。


 ホムラ戦で強さを求めた俺は自分の自我を放棄した。

 その後、混ざった心の中で一番強い意思を持っていたヤテンの心に行動を引っ張られる。

 そもそもヤテンは元々がアンデッドであるため俺の蘇生使役魔法であるリビングデッドエクリプスに耐性があるらしい。心だけになっても自我が残っていた、とのことだ。


 しかし小魔王達を倒す毎に俺の心は複雑に混ざっていってしまう。

 イシガキを倒した所でとうとう思考能力がパンクした、イシガキを倒した後の俺はほとんど廃人の様な状態だったらしい。

 ガイアは俺を捨てて行こうかと思ったらしいが、少々派手に暴れ過ぎたせいでアーミャにガイアの存在もバレてしまった。


 まだ力が完全に戻っていないガイアは俺の力を借りる事にした、実際に俺は全盛期のガイアよりも強いらしいから驚きだ。

 アーミャは直接この世界に干渉出来ない、出来たとしても魔王だった頃よりも強い体を手に入れたガイア相手にどうすることも出来ない。


 しかしガイアにも誤算があった。俺が廃人状態だったのは心が飽和状態になっていたからだ。体の主導権を奪ったは良いがその体に詰まった心はブラックボックス、俺はガイアよりも強い訳だからガイアもその心に呑まれる事になる。


 そして今、俺の心が目覚め、マヒルのキスで安定しているうちに俺の体を抜け出した。



 と、そういう流れらしい。

 ちなみに今の俺の心は、ガイアも抜け、自我も取り戻した為、ヤテンが裏切らない限りは安定状態にあるらしい。




「まぁ、分かったよ。でも、俺の体から出て良かったのか?アーミャがまた勇者送り込んで来るんじゃねぇの?」


 モンスター達の力と魔王の力、両方を持った俺を討伐するなんてほぼ不可能だっただろう。でも今の弱ったガイア単品なら討伐可能だと判断されるはずだ。

 ガイア自身がそう判断して俺の体を利用していたのに、何故抜け出す事にしたのだろうか。



「カカッ、今の主らを見て考えが少々変わっての。私はシンヤもアサヒも嫌いでは無い。私は永く生き過ぎた。私という存在が必要か、不要か、アサヒの様な人間に問うてみるのもまた一興だと思うての。さっそくじゃが、アサヒはどう思うかの?」


 人間が増えすぎない様に数を管理していたというガイア、俺は人が増え過ぎた世界から来た人間だ、それを踏まえて俺の答えを告げる。


「なるようにしかならねぇよ。それにな、人間はいずれどんな強いモンスターだって楽に殺せるような危険な兵器だって開発するぜ?資源と時間さえあれば人間は最強の化け物だ。ソースは俺の元居た世界な」


「ソースとな?」


「あー、すまん、情報源の事だ。まぁ、ガイアもアーミャも好きにしろ、としか言えん。さっきも言ったけど、なるようにしかならねぇんだよ」


「投槍だのう、槍投げが得意なだけはあるわいの、カカカカッ」



『ちょっとちょっと~、それだと私の存在意義どうなるのよ~』


 突然聞こえてくる声にももう慣れてしまった。頭に直接聞こえてきたのはアーミャの声だ、おそらく覗き見していたのだろう。

 空中から光と共に真っ白な性悪天使が現れる。


「まぁ、その理論だと?私は楽で良いけどさー?時間はかかっても最終的には私の望み通りになるしね?でもさー、それだと私いらなくなーい?」


「そうだよ、俺から言わせてもらえればガイアとアーミャは居ても居なくても人間の終着点は変わらねぇから好きにしろとしか言えねぇよ」


「むぅ~、アサヒは今この世界を救える英雄にだってなれるんだよ?それでもそんな事言う?英雄だよ?勇者だよ?アサヒ好きでしょ?そーゆーのー」


「もう…分かったんだよ。俺の小さなポケットに世界なんて入りきらねぇんだ。俺は惚れた女一人に翻弄ほんろうされる様な…ただの男子高校生だったんだ」


 俺は勇者じゃない、そう宣言したに等しい。

 それを受けてアーミャの顔が怒気を放つ、普段ふざけた顔ばかりのアーミャからは想像出来ない様な顔だった。


「そう…じゃあアサヒを…新しい魔王と認定せざるを得なくなるよ?アサヒにその気が無くても、アサヒはその可能性を秘めているんだ、看過出来ないよ?」


「俺を殺すか?シンヤみたいに」


「シンヤは魔王軍を作れる可能性があった、アサヒは最悪の魔王になる可能性がある。…どうして私はこんなに勇者候補の選択ミスばかり…」




『あー…修羅場?全部、終わったから。もう…良いわ』


「ヤテン!?」


 アーミャと睨み合う俺の頭に直接聞こえてくるヤテンの声、俺こういうの多過ぎないか?


『最初に…言わなかったかしら?悪いようには…しないって。説得が…終わったのよ。アサヒ…心の中に来て、もう…アサヒは来れるわよね?』


「ああ」




 俺は瞼を閉じ、更に心の中にある瞳の瞼も閉じる、そうすると更に深い所に沈んでいく、自我を捨てた俺がずっと居た場所だ。

 自分の意識を心の奥へと導いていく。



 …… …



 そこに居たのはやはりたくさんの小魔王達だった。

 しかし1人だけ人間が居るのが見える。…あれは、小魔王達の心の記憶の中で何度も見た。シンヤだ。とても穏やかな表情で小魔王達に囲まれていた。



『アサヒ…来たわね』


『ヤテン…何で…シンヤがここに?』


『あれは…皆の記憶の中のシンヤの欠片の集合体。でも…あれはシンヤで間違い無いわ。皆の大好きだったシンヤが…綻び無く合わさったから、ああして形になったの』


『ヤテンは…初めからこのつもりで?』


『そんな訳…無いじゃない。アサヒの中に皆が集まる度に…シンヤの幻影がちらつき始めて、それで…気付いたのよ。シンヤは…皆の中に居るんだって…ね』



 俺はシンヤと小魔王達を見つめる、その様子はまるで家族の様な暖かさに満ちていた。

 そんな暖かな空気の中で、小魔王達が一体ずつ消えていく。


『あれは…どうしたんだ?何で消えて…』


『皆…満足したのよ、成仏って言ったら…分かりやすいかしら?』


『小魔王達は俺の魔法で魂を縛られてたんじゃないのか?』


『その魔法…エクリプスの力でしょ?エクリプスは…イナバの魂にライトが憑依した姿、そのイナバが…成仏したのよ』


『…そっか』



 小魔王達は次々と消えていく、その様子はまるで一人一人順番にシンヤにお別れの挨拶をしている様にも見えた。


『ヤテンは良いのか?お別れの挨拶、しに行かなくて』


『あら、薄情ね、早く消えて欲しいのかしら?』


『そうじゃねぇよ、でも…シンヤに会いたかったんじゃねぇのか?』


『ふふ、もちろんよ。でも…その前にアサヒにも…挨拶したかったのよ』


『ほー、俺にねぇ』


『えぇ、そうよ。アサヒ…ありがとう』


『へいへい、どーいたしまして。…もう良いだろ?はよ行ってこい』


『ふふ、泣きそうな顔…してるわね』


『うっせぇ』



 ヤテンはその後、最後の1人になるまで俺の傍に居た。

 シンヤが最後にヤテンに笑いかけると、ヤテンもシンヤの元へと歩いて行く。


『ヤテンだって泣きそうな顔してるじゃねぇか、ばぁーか』



 …… …



 俺は、ヤテンがシンヤと一緒に消えるのを見守った後、ゆっくりと目を開けた。


 マヒルも、ヒイリも、ガイアも、アーミャも、俺の方をじっと見つめている。


「すまん、待たせたな。俺の中に居た小魔王達は皆消えた。これで俺はただのアサヒに戻ったよ。棒状の物を投げれるすばしっこいだけの人間だ。アーミャ、これで俺はもう魔王にはなり得ないだろ?」


「……そーね。じゃあアサヒをただの転移者と見なして聞くわ。元の世界、帰りたい?」


 そういえばそうだったな、俺、元の世界に帰れるんだった。

 親は心配してるだろうなぁ、今頃捜索願いとか…、ああ家が気になる…。


「マヒルって、連れて行ける?」


「無理よ、パニックになるでしょー?」


「だよなぁ、俺としてもマヒルがUMAとして捕まるのなんか嫌だしな、この世界に残るよ」


 親不孝者でごめん、でも悔いの無いように生きるから、許して欲しい。


「そう言うと思ってたけどねー、でもアサヒは勇者っていう訳にはいかないよー?魔王復活してるし、しかもそれ放置するって宣言しちゃってたしー」


「良いんだよ、俺はただの男子高校生だっつったろ?もう魔王だの勇者だの勝手にやってろよ。俺の罪は怠惰なんだろ?ぴったりな結末じゃねぇか」


「次はもっと真面目な奴転移させないとなー、もー」


「カカッ、それならば私が回復し終わる前に探さねばならぬの?」


「もー!また忙しくなるー!」


「カカカカッ」




 ふいに、俺の腕に暖かい毛布が絡む、いや、もちろん毛布じゃない、マヒルだ。マヒルの毛皮は柔らかい毛布の様で心地良い。


「アサヒは…これからどうするに?」


「んー…ディブロスの町に行くか?待遇良さそうだし」


「そこで…何するに?」


「家建てて住もうかな、もう冒険しなくて良いし」


「その家に私の部屋は?」


「人間と獣人って子供出来る?」


「にゃにゃ!?…うー、前例は…あるみてゃーよ」


「じゃあ子供の部屋も必要になるな」


「ぁぅぅ…アサヒぃ…」


「何?」


「………好き」


「俺もだよ…マヒル。結婚してください」


「…だ」


 俺はマヒルの肩に手を置くと、そっと抱き寄せて…。




「あのー?アサヒさん?僕が見てるの忘れてませんか?なんなら魔王も見てますが」


 ヒイリが困った表情でこちらを見ていた。アーミャもガイアも呆れ顔だ。


「うああ!」

「んにゃあ!?」


 二人して慌てて離れ、お互いに顔が真っ赤に茹で上がる。

 すっかり忘れていた、ここ魔王城だ。


 俺とマヒルはきっとこれからもこんな感じなんだろうか。



 それはきっと、とても………。




 伝説の魔物使いが残してくれた…この出会いは………。





 マジでヤバい(笑)

これにて物語は終了となります。

読んでくださった皆様、応援してくださった皆様。

ありがとうございました!

また違う物語でもお会い出来たら嬉しいです。


あ、最後の「ヤバい」はあれです。

「マジヤバくねぇ!?w」「ちょーヤバいんですけどーw」

みたいな明るいノリの「ヤバい」です(笑)

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― 新着の感想 ―
[良い点] 心理描写、主人公が戦闘で苦労と努力を繰り返してる所、恋愛展開、 [気になる点] なんも気にならん全部最高 [一言] 元々パルクール要素のある異世界物無いかなって思って探してたんですが、中盤…
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