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VSアサヒ

とうとうアサヒ戦です。

ややふざけた部分もありますが、その部分がアサヒなので多目に見てもらえると有難いです。


 目の前にあるのは巨大な扉。いかにも王室といった荘厳で重厚な、それでいてやはり息を飲む程のサイズ感、それでもさっきの骸骨に比べたらまだ小さいと言えるかもしれない。

 どれだけ分厚いというのだろうか、私が押しても開かない。


「クカカ、ソンナ、バカショウジキニ、オサナクテモ、イイダロウ?」


「にゃ?」


 アカボウは私の斧を指差す。なるほど、言われてみればその通りだ、ここは豪快に行くとしよう。それなら…と、私はアカボウの斧を指差した。


「クカカ!」


「にゃはは!」



 二人して斧を大きく振りかぶる。


「せーっの!」


 まるで雷の様に大きな音を轟かせ扉に風穴を空ける、普通の人間サイズくらいの穴にはなっただろうか。私は再びアカボウとハイタッチする。


「いえーい!やったにゃ!」


「クカカ」




「アサヒ!居にゃあか!?話があるに!」


 私には確かに感じていた、ここに、アサヒが居ると。

 部屋に踏み込んで大きな声で呼び掛ける。アサヒの事だ、不意討ちなんてしないだろう。



 少しして床から無数の太い蔓が生えてくる。それは毬藻まりもの様に絡まり丸くなる、丁度人一人入れそうな大きさだ。

 これの小さいのを見たことがある。魔王ガイアの現れ方と同じだ。

 蔓がほどけて中から一人の男性が現れる。髪の毛が深緑に染まっているし顔色がやや土色だが…あれはアサヒだ。



「アサヒ!」


「アサヒさん?…あれ…が?」


「アレガ、ドウホウゴロシカ、ニンゲンダト、キイテイタノダガ」



 アサヒは興味無さげに私達を見ると、静かに口を開いた。


「ああ…アカボウか、そうか、そこに居たか」


 アサヒの興味はアカボウにしか向いていないのが分かり心が折れかける、今のアサヒには私が見えていないの?


「アサヒ!?私にゃ!マヒルにゃ!久しぶりやに!」


「…知らん、ああ……ん?いや、やはり知らんな」


「今少し引っ掛かっとったに!?思い出して欲しいに!」



「……リビングデッドユグドラシル」


「!!?」


 これはアサヒの魔法!?でも少し名前が違う、それに槍も出現していない。

 ………下から気配を感じる!?


「グ…ガア!!」


 その時、突然背後からアカボウの声が聞こえた、それは悲鳴に近い。

 突如地面から生えてきた槍…の様に尖った木の根に貫かれてアカボウが血を吐く。

 しかしそれだけでは終わらなかった、アサヒが更に言葉を繋ぐ。


「燃やせ、ホムラ」


 アカボウを貫いていた木の根が青白く燃え盛り、アカボウは声も出ないまま瞬く間に灰となって跡形も無く消え去る。

 短い付き合いだったが共に戦った戦友だ、それが呆気なく消えて居なくなり呆然とする。



「ああ、やっと…みんな一緒に…なれた。シンヤ…約束は守ったから…ね」


「その喋り方!ヤテン!?」


 アサヒの表情もヤテンを思わせる様な、やや無機質な笑顔を見せた。

 しかしそれも一瞬の事、すぐに無表情となりこちらを一瞥する。


「ヤテン?……俺はガイア、自然の化身。四大元素を司る者」


「そんにゃ……私が話したガイアはもっと明るい子だったんに」


 その時、ふとアサヒの目に光が宿るのを感じた、これは…何か思い出した?


「ふむ、そうかそうか、あの時の…力を貸し与えた小娘だ。返してもらおう」


 私の体から魔力が抜けていく、私の装備は魔力で動かす魔術武装だ、魔力が減っていってしまい段々と鎧の重さに負けて膝を付く。

 私の高い魔力はガイアからの借り物だ、余計な事を思い出させてしまったみたい。そこは忘れてて欲しかった。


 完全に身動きが取れなくなる前に鎧を脱ぎ捨てた。アカボウからもらった鉄靴は筋力アップの能力付きだから履いておく、今の私ではこれが無いと斧を振れない。

 前に着ていた革鎧も既に大地の魔術が刻まれている、ヒイリに出してもらっても着る事が出来ない。今の私は斧と鉄靴で精一杯だ、その斧だって何回振れるか分からない。

 インナーに戦斧と鉄靴のみ。薄着ではあるが私は獣人だ。自前の毛皮はそこらの安物の防具よりは頑丈だと自負している。


 しかし、何故だろう、あんなに興味無さげだったアサヒから視線を感じる。鎧を脱いでインナーになってから?

 飾り気の無い灰色、上下セパレート、自分の毛皮があるので布の面積は少ない、それでいて体をアシストする為にタイトになっているからボディラインが出てしまう、筋肉でややゴツいのであまり見ないで欲しい。



 そんな時、アサヒの口から待ちに待った言葉が出てくる。


「マ…ヒル?」


 名前を…呼んでくれた!


「にゃにゃ!?アサヒ!?記憶が戻ったにゃ!?」


 いったい何がきっかけだったのか分からないが、アサヒは確かに私の名前を呼んだ。



「……違う!俺の名前はガイア!炎、水、大気、大地、けもっ娘の四大元素をつかさど…ん?なん…だと?俺は…今何を?」


「けも?1つ多かったにゃ!」


「うるさい!リビングデッドユグドラシル!」


 アサヒの魔法だ。また地面から気配を感じる、下から来る。…が、さっきよりも発動が遅い様に感じる、これなら…避けれる!

 地面を蹴ってその場から飛び退くと、私がさっきまで居た場所に木の根が飛び出す。


 ヒイリは……いつの間にか王室から出ていて、扉に空けた穴からこちらを見ていた、危機回避の早さは流石だと思う。




「くそ!何で今更!…そうか、あの女か。…リビングデッドユグドラシル!」


 次が来る?身構えたが今度はアサヒの足元から木の根が生えて来た。


「飛翔しろ、ワイバーン」


 木の根がアサヒに絡み、翼へと形を変えていく。飛ばれるのは不味い。

 私は戦斧を床に叩き付ける、というよりも、もう自由に振れない為重みで落としたに等しい。今の魔力で手で持てているだけでも奇跡だ。


「引き寄せろぉ!オンパロス!」


 アサヒが宙に浮いた瞬間を見計らい、オンパロスの力でこちらに引き寄せる。

 態勢を崩したアサヒが真っ直ぐこちらに飛んでくる形となった、今なら…。

 アカボウの鉄靴に魔力を込める、足下から力が沸き上がり、腕にも力が入る。


「に……あああああ!!!」


 戦斧をアサヒに向かって思い切り振り抜く、もちろん刃は向けずに。死にさえしなければヒイリがエリクサーを手配済みだ、なんとかなる。


 しかし私の斧がアサヒに当たる事はなかった。

 アサヒは空中を蹴り体を旋回させ、態勢を整えた後、私の戦斧に足を掛けて、その勢いでバク転して身をかわす。その一連の動きは見惚れてしまう程に鮮やかだった。


 忘れていた、アサヒのスキル、パルクールだ。空中を蹴るタラリアと相まって昔よりも身のこなしが鋭い。

 そうか、今の状態でもアサヒのスキルは使えるのか、…と、言うことは。




「リビングデッド…エクリプス」


 距離を取ったアサヒの右手に、銀色に鈍く光る槍が出現した。



物語はかなり終盤に近付いてきております。

どうか最後まで見守ってください。

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