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伝説の魔物使いが死んだ後の世界がマジでヤバい  作者: しら玉草
第5章:プロミネンスソウル
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VSレッドドラゴン

今回はホムラとの対決です。


  ━━ 溶岩台地 ━━


 ジリジリと地熱が伝わる、溶岩が固まって出来た台地の上で深紅の飛竜と相まみえる。


 ヒイリもマヒルも強くなった。正直普通に勝てると思っていた。

 ゆえの正面突破だった。…しかし、まさかこうなるとは。



 ヒイリとマヒルが……ここまで弱いとは。

 いや、分かってる、相性もあるし、相手が悪い。




 敵はレッドドラゴン、その進化形態であるクリムゾンドラゴンだ。

 腕が翼に進化した深紅の飛竜。

 その深紅の身体とは裏腹に青白い高温のブレスを吐き出す。

 その瞬間最大温度は一万度に達し、たとえタングステンであっても溶かす事が出来る。

 性格は短気で攻撃的、シンヤのモンスターの中で最大の攻撃力を誇る。


 タングステンで出来た小魔王ゴーレム、イシガキにダメージを与えるならこいつをおいて他にない、正直先にホムラに会えた事を幸運だと思っていた。



 しかし、マヒルの斧は空を飛ぶホムラには届かず、渾身の力を込めて投げた斧はホムラの炎に巻かれて溶け落ちた。

 魔力が上がっただけではマヒルにはホムラと戦う術が無い。


 そして何より、ライオルトの英雄だった父親ですら敵わなかった相手に翻弄され、マヒルの心は折れていた。

 マヒルは言っていた、自分は弱くなったのかと。しかしそれは違う、相手が強過ぎただけだ。そして弱くなったとするならばそれは心だろう、きっと心のどこかで俺に甘えている。


 ヒイリのアウラポッドに守られ、二人は防戦一方だ。

 炎とは燃える大気、大気を遮る防壁となるアウラポッドは相性が良い、ホムラの炎が相手でもしばらくは持つだろう。

 しかし滑空してきて爪で裂かれたらどうなるか…。

 滑空して来ないのはマヒルを警戒しての事だろうけど、当のマヒルがあれではな。




 もちろん俺だって戦っていた、しかしそれはホムラとでは無い。

 今までずっと自分の中の他の存在達と、自分の存在をかけて戦っていた。

 自分が段々と変わっていくのを感じつつも、アサヒである事だけは捨てなかった。実際主導権は常に俺にあったし、混ざってはいても俺は俺であることに変わりは無かった。

 しかし分かった、そんな事に力を、心を割いていてはホムラには勝てない、このままではマヒルとヒイリも死んでしまう。一番弱いのはアサヒだ、アサヒのままでは勝てないのだ。





 俺は…自分の中に住む呪い達に抗うのを止めた。





「ふむ、二人は足手まとい…かな。1人でやろう」


 それは独り言ではあったが、俺の心の中に住まう者達の総意でもあった。

 俺は今…誰なんだろうか。


 俺はゴツゴツとした岩場を疾走し、加速し、加速した勢いのまま高く飛翔する、空を蹴り、更に、更に高く。ホムラと肉薄する。


「ホムラ…俺が誰か…分かるか?自分でも…よく分からないんだ」


 ホムラは一瞬だけ俺と目を合わせて静止するが、その目にはすぐに敵意が満ちる。

 ホムラの口の端に炎が揺らぐ、そうか、お前にも分からないか。


「リビングデッドエクリプス……ヤテン」


 俺の前方に水を圧縮した槍が出現する、その数10本。

 水の槍は光を反射し、ほとばしる水飛沫がキラキラと光る。


「ヤテンの水だ、お前の後始末は…いつもヤテンの仕事だった。懐かしくないか?」


 ホムラの口が開かれ、圧縮された炎が青白く輝く。


「そうか…そうだよな」



 俺の水の槍が射出されるのとホムラのブレスが射出されるのは同時だった。槍は水を推進力とし自動で飛んでいく。


 水は瞬時に蒸発し、高温の水蒸気が大気を満たした。

 熱い、痛い、しかしそれでも俺の皮膚は焼け爛れたそばから再生を始める。

 もうどっちがモンスターか…分からない。



「リビングデッドエクリプス……オグリ」


 空中に静止している俺の手に巨大な一本の槍が出現した。その槍の穂先はユニコーンの角で出来ている。オグリの毛並みの様に真っ白な美しい槍。

 その槍を強く握る、絞り込んで、構える。


 水蒸気が晴れるのと同時に槍を投擲するつもりだったが、それはホムラも同じ考えだったようだ、目の前にホムラの鍵爪が迫る。

 その鍵爪にぶつけるようにしてユニコーンの槍を投擲した。


 槍は大気を巻き込み、暴風となってホムラを押し返す。これは空気圧を操るオグリの力。

 ホムラは飛竜だが飛ぶ事に特化したワイバーンでは無い。一度態勢を崩すと、そのまま地面へと高度を落としていく。



「リビングデッドエクリプス……ヤテン…シズク」


 空中に出現した10本の水の槍が射出され、ホムラを取り囲む様に包囲する。

 シズクは水素を吐き出し爆破させるスライムだ、ヤテンの水にシズクを乗せれば…。


「やれ、シズク」


 ホムラを取り囲む水の槍が眩い光と轟音を響かせ大爆発を起こす。

 その中心に居たホムラを逃げ場の無い爆炎が襲う。熱に高い耐性を持つホムラでも押し寄せる衝撃には耐えられない。


 ホムラは空中で絶命したまま地面へと衝突し動かなくなった。



「ホムラ……お疲れ様…」




 地面に降りた俺にマヒルが駆け寄ってくる。


「アサヒー!凄いに!圧倒的だったじゃにゃあか!」


「……?、ああ、二人はケガは無い?」


「ケガは…してにゃあよ。……アサヒ?…なんか様子が」


「はは、疲れてるだけさ。報酬は明日受け取ろう、今日はもう宿で休もうぜ」


「……だ」





 ◆  ◆  ◆




 翌朝、私は妙な胸騒ぎを感じてアサヒとヒイリの部屋へと急いだが、そこにアサヒの姿は無く、寝惚けた顔のヒイリだけが私に挨拶をしてくれた。


「あ、おはようございます。マヒルさんも早いですね。アサヒさんも早かったみたいで、目が覚めた時にはもういなかったんですよ。どこに行ったんでしょうね」


「そ、そう。私…ちょっと探してみるに」


「あ、はい。すれ違いになるといけないので僕はここにいますね」



 その後、アサヒはどこにもいなかったし、帰ってもこなかった。

 実を言うと直感で感じていた。アサヒは私たちを置いて消えたのだと。



アサヒ消えちゃいました!

良いとこ無しな事が多いマヒルちゃんはこれから大活躍の予定です。

アサヒいませんけどね!

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