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伝説の魔物使いが死んだ後の世界がマジでヤバい  作者: しら玉草
第1章:ハイドロゲンスライム
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アサヒのスキル2

今回はアサヒの初期装備を整える回となっております。

小魔王の中でも特に危ない奴の説明も少しだけ。


「マヒルー、お金取り返したよー」


 マヒルに巾着袋を返すと俺は更にマヒルに500カッパー握らせた。


「え?取り返してくれたと?しかも貸したお金まで…」


「ふふふ、あのヤンキー…もといあの盗賊1000カッパー持ってたからな」


「へー、アサヒけっこぉ強かねぇ。正直もう諦めてたに」


「ふっふっふっ、あんな奴俺にかかればザコだよザコ」



 そう強がっては見せたがだいぶギリギリだった。そもそも普通に近接戦闘に持ち込まれてたらどうなっていたかは分からないのだ。

 ギルドの受付のお姉さんはパルクールは戦闘技能じゃないって言ってたからあの身体能力は攻撃時には発動しない可能性が高い。

 回避には使えるが、あくまでも移動に特化したスキルだと割り切るべきだろう。そうなると攻撃はジャベリンに頼るしかない。


 ふむ、そうなると防具より武器を買うべきか、しばらくはスウェットだな。



「次は武器屋見に行きたいな、なるべく安いとこで」


「だね、武器にゃあのは心許にゃあに」




 ……… ……… ………




 武器屋は随分と分かりやすく武器屋だった。剣を二本クロスさせたマークの看板、RPGで良く見るTHEファンタジー武器屋。

 たくさん陳列された刃物に鈍器、正直ワクワクが止まらない。だって…男の子だもの。


「そう言えばマヒルは随分と立派な斧持ってるね」


 マヒルの斧は波紋のような独特な光沢を放ち、その重厚感は歴戦の戦士を思わせる。


「ああー、この斧はおっとおの形見で、うちに代々受け継がれてきた斧でもあるんに、おっとおはこれでドラゴンとも戦っとったて言うとった」


「お父さんの…形見…」


「もう落ち込んでにゃあよ、気は使わにゃあて良か」


「そっか。…お父さん、ドラゴンとも戦えるって、強かったんだね」


「うん、自慢のおっとおだったに。…でも、【勇者のはらから】のドラゴンに負けてもて、命を落としてしもたにゃ…。仲間を逃がすために最後まで戦ったって聞いとぉよ」


 マヒルの表情は悲しさよりも誇らしさを感じさせた。




「実は俺の旅の目的は小魔王の殲滅なんだ。もしかしたらそのドラゴンとも戦うかもしれない」


 マヒルは仲間だ、旅の目的を隠しておくわけにはいかない。それに黙ってたら言えなくなりそうだと思う気持ちもあった。



「え!?…そのドラゴンは小魔王の中でも勇者が魔王倒した時の最終メンバーって聞いとぉよ?」


「うぇ!?マジで!?え?最終メンバー?他にはどんなのが居るの?」


 つまりこの世界で一番強かった魔王と渡り合える強さって事だろ!?数と種類だけでも把握しないと不味い、エンカウントしたら即死コースじゃないか。


「レッドドラゴン、ストーンゴーレム、レヴァナント、ユニコーンの4体だって言われとぉ」


「なるほど、その4体は後回しにしたいなぁ」


「戦う気?……本気で言っとぉにゃ?」


 呆れられている、俺はてっきりそう思っていたのだがマヒルの顔は驚く程に真剣だった。真っ直ぐ俺の目を見つめて真偽を測る。


「そんなに真剣に見つめられたら惚れちゃうぞ?」


「そんな冗談聞いてにゃあの、本気で答えて」


「うん…、実はもう惚れてるんだ…」


「………」



 マヒル無反応、流石に傷付くぞ?


「ちょっとくらいは照れるなりなんなりしてほしかったなぁ。…うん、そうだよ。俺は小魔王を全部倒さないといけないんだ」


「なんで?」


「悪い女に騙されたから」


「もー、私は真剣に聞いとぉにゃあ!」


「ごめん、そこは本当なんだ」


 正確には性悪天使に騙されて、だけどね。



「はぁ…、でも…、そっかぁ…、ふ、ふふ、ふふふふふ」


 急に堪えたように笑い出すマヒル、いやいや、目が笑ってないから、怖いから。


「あの?マヒル…さん?」


「アサヒに出会えたのはおっとおの導きに違いにゃあ、しかも殲滅?ふふふふ。そもそも小魔王と戦うにゃんて言う仲間探すんは時間かかる思うとったんにゃ…」


「もしかしてマヒルも?」


「そうにゃ!ふふふふ、おっとおを超えた証になるに」


 マヒルの目は火が灯った様にギラギラと燃えていた。父の敵討ちじゃなく、父を超えた証明が欲しかった、と。

 ギルドの受付のお姉さんがマヒルの種族はライオルト族?とか言ってたかな、確か闘神とか言ってた気がする。なるほど、これは納得だ。


「お、おうふ…。戦闘民族だ…」


「ふぇ!?あ、あはははは。と、とりゃあず今はアサヒの武器探さにゃあと」


「笑って誤魔化した!?」


「ジャベリン…、ジャベリン…。あ、これじゃにゃ?」



 マヒルが指差したのは2メートルくらいの長さで先端に槍と斧と鎌が一体化した武器。


「いや…、それハルバードだから」


 ゲームはRPGが好きだったからね、武器の名前くらいは分かる。


「じゃあこれ?」


「それはバルディッシュ」


「じゃあ…」


「そっちのはパルチザンだからね!?なんでさっきから重そうなのばっかり!?」


「重い方が強い!」


「なるほど分かった、武器は自分で探す」


「えー…」


 そもそもマヒルが指差した武器はどれも高額で手が出ない。




「えっと…、あ、あった」


 短めでバランス良く作られたシンプルな投擲槍、ジャベリン。値段は500C。


「う…高けぇ…。一回投げて500カッパーかよ」


 戦闘中に投げた槍回収するのも危険過ぎる。なるほど、ジャベリンが不人気武器なのも納得がいく。弓矢に人気を取られたって言ってたな。


 ふと矢の方に目を向ける、粗悪な物で1C、高価な物でも100C

 これなら弓と矢筒さえ揃えれば圧倒的に弓矢の方がコスパが良い。


「ん?待てよ…」


 良く考えたら俺のスキル、ジャベリンマスタリーは棒状なら何でも投げれたはずだ、実際に丸太も投げれたしな。それなら…。



 俺が手にしたのは300Cの小型の矢筒、それに収まる本数の矢。10Cの物を6本。1Cの物は矢尻が木だったり曲がってたり、流石にこれでモンスター退治は難しい。

 これで360Cの出費。ジャベリンと比べたら破格の値段だ。


 矢を手で投げる。これが俺の導き出した答え!

 スキルによる強化が乗るから弓を使うよりも強いはず。


 …ただ、見た目の格好悪さだけは世界有数の冒険者だ。

 上下スウェットで手から矢を放つ英雄がどこの世界に居ると言うのか。


 貧乏が…貧乏が悪いんだ…。そのうちケチらずにジャベリン投げれるようになりたい。



「マヒルー、準備出来たよー」


「………うわぁ」


 うん、分かってる、言いたい事は分かってる。…泣きたい。




アサヒの装備が酷すぎる(笑)

次回はやっとスライム退治に乗り出します!

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