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伝説の魔物使いが死んだ後の世界がマジでヤバい  作者: しら玉草
第5章:プロミネンスソウル
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テオテスカ道中

今回は小魔王がチラッとだけ出てきます。

いったい誰なんでしょうね、タイトルでもろばれですけどね(笑)


 気を付けようにも日は沈む。時は止まらない。

 この事は誰にも話していないし、自分自身どうなるのかも分からないのだから心配をかけるだけになってしまうからだ。

 それに、ヤテンがそこまで悪い奴だとは思えないのだ。


 宿で今後の事について話すことになり、次の目的地を話し合っている間に日は落ちていく。

 それに伴い頭痛が増していく。すっかり外も暗くなり、一際頭痛が酷くなったその時。


『ありがとう…悪いようにはしないわ』


 ふと、ヤテンの声が聞こえた後に頭痛が止み、逆に頭がスッキリと冴え渡る。


 ああ、なるほど。こういう事か。

 最悪の場合ヤテンに体を乗っ取られる事もあるかもしれない、そう思っていたのだが、自分が自分では無くなったような感じはしない。

 自分はあくまでも自分であり、ヤテンでもある。そんな感じだ。



「アサヒさん?さっきから黙ってますけど、どうかしましたか?」


 ヒイリが心配そうに俺の顔を覗き込む。


「ああ、問題無い。それより次の目的地だけど、テオテスカにしようと思う」


「え、中央都市テオテスカですか?ここからだと…溶岩台地を越えていくことになりますね。でも、何故テオテスカに?」


「ん、ちょっと知り合いに会いに…ね」


 もちろん正確にはヤテンの知り合いだ。俺にこの世界の知人なんて居ない。


「まぁ、王都ですし、人も多いですもんね。でも意外ですね、テオテスカに知り合いが居るなんて、どんな方なんですか?」


「お城の花壇に居るんだよ。もう5年くらいは経つかな」


「王宮に勤めてるんですか!立派な方なんですねぇ」


「いや、毎日日向ぼっこしてるだけだと思うけど、まだ居ると良いなぁ」


「王宮の花壇で日向ぼっこ!?…5年も?」


「まぁ、そんな感じかな。重要な事だからすぐに行きたいな」


「それなら明日出発しましょう、マヒルさんもそれで良いですか?」


「だ、かまわにゃあよ」





 ◆  ◆  ◆





「おーい、ヒイリー、遅いぞー」


 俺達はテオテスカに向かって溶岩台地を歩いている。

 溶岩が固まって出来た地形で植物は生えておらず、地面がゴツゴツとした険しい土地で、遠くには火山も見える。


 俺とマヒルはヒイリが追い付いてくるのを待っているところだ。


「ま、待ってくださいよー。マヒルさんは分かりますけど、何でアサヒさんがそんなに元気なんですかー、いつも一番にバテるのアサヒさんじゃないですかー」



 言われてみればそうだが、その理由はちゃんと理解している。

 魔術武装の生命の闘衣が常に発動しているのだ。ヤテンの心から常に魔力が供給されている。今の俺の体力は無尽蔵だし、ちょっとした怪我や病ならすぐ治る。

 ちゃんと魔力を持っていればこんなにも強力な装備だったのかと自分で驚いている。

 これは魔法適性の高い者を取り込んだ特典の様なものなのかもしれない。

 俺もだいぶ人間離れしてきたな。ようやく異世界物主人公のチート能力を得た気分だ。



「ははは、そろそろ休むか?」


「むぅー、アサヒさんに言われるなんて…僕は山育ちのエルフなのにぃ」



「にゃ…休む余裕は…にゃあかも」


 マヒルが震えた声で俺とヒイリを庇う様に構える。

 マヒルのスキル、直感で何かを感じ取ったのだろうか、それにしてもマヒルがここまで緊張する事なんてそうそう無い。この場に緊張が走る。


 ここで1つ、思い出した事がある。小魔王が怖れられる一番の所以。

 小魔王は、ボス部屋なんかには居ない。突然エンカウントする天災なのだ。



 ソレは俺の目でもなんとか見える所までやってきた。

 空を舞う巨大な生き物。腕は蝙蝠の様な翼に進化しており、体は深紅の鱗を纏った爬虫類を思わせる。それはどう見てもドラゴンだった。

 深紅の飛竜、魔物使いの勇者の最終パーティ、最強の一角。

 ここに現れたのは正しくソレだ。


「レッド…ドラゴン…おっとおの仇」


 そう、レッドドラゴンはマヒルの父親を殺した小魔王、マヒルの旅の目的だ。

 マヒルの顔が緊張で強張っているのが分かる。


「現種族名はクリムゾンドラゴン、名はホムラ。ホムラの吐く炎は最大で一万度に達する。マヒル、ここは冷静に、一旦隠れてやり過ごそう」


 ヤテンの心を通じてモンスターの情報は入手済み。小魔王の中で二番目に強い奴だ。

 戦うのは得策とは言えない。幸いにもホムラは上空を旋回しているだけでこちらの事はあまり気にしていない様に見える。



「…だ」


 意外にもマヒルが冷静で助かった。殺気なんて放ってたら今頃ホムラはこっちに向かって滑空してきているだろう。あいつ短気だからな。



 3人で岩影に身を隠し、じっと待つ。そこでようやくマヒルが冷静だった理由を理解した。否、冷静などでは無かった、マヒルは自分の体を抱え込んで震えていたのだ。

 そう、マヒルは恐怖と悲しみで戦う意思を失っていた。


「は、はは…、ごめんに…、か、体が震えて…、おっとおの仇をいざ目の前にしたら…」


「しょうがないよ、闘神ライオルトって言っても、マヒルは女の子なんだから」


「だめにゃね…私、弱くなっちゃったのかにゃ…」


「大丈夫…。大丈夫だよ」


「おっとおは…ライオルト族最強の戦士で…私の誇りで…私の目標で…」


「うん…お父さんの事好きだったんだね」


「尊敬してたに。私がいくら頑張っても…届かにゃあ存在なんじゃにゃあかって…ずっと」



 マヒルは強くても女の子だ。そう言えば…兎が好きだとも言ってたかな。本当はきっと…戦闘種族のライオルトの中でも少し気の弱い方だったのかもしれない。

 仇を目の前にして、色んな感情が蘇ったのだろう。怒りよりも悲しみが勝ってるんだ。

 でも、目は死んでいない、心は折れていない。マヒルはきっと大丈夫だ。


「大丈夫だよマヒル。マヒルのお父さんを、一緒に超えよう」


「…だ。アサヒを好きになって…本当に良かったに」



アサヒパワーアップ!ですが、良いのか悪いのか微妙な展開でございますね(笑)

そしてヤテンの知り合いというのは第4章で出てきたあの人です。伏線入れてありますが誰かは分からないようにしてあります。

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