表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
伝説の魔物使いが死んだ後の世界がマジでヤバい  作者: しら玉草
第5章:プロミネンスソウル
46/58

VSユニコーンその後

ユニコーンの後日談やる前に一回魔物使いの話を挟みたかったのでこういう流れになりました。

遅くなりましたがちゃんと書いておりますので見放さない方向でお願いいたします(笑)


 ヤテンが俺に書き残していったメモ、「リビングデッドエクリプス」。

 魔法を使ってヤテンを呼び出せという事だと思う。

 流石に宿の中でやる訳には行かないだろう、ヤテンの能力は水だ、宿が水浸しになる可能性を考えると室内は無理だ。


 そこで俺達は早朝の誰も居ない高原へと移動していた。

 とは言っても俺の魔法は出したい時に出せるような代物では無いし、上手くいくとは思えなかった。それでも、ヤテンの最後の願いなのだから挑戦くらいはしたい。

 リビングデッドエクリプスは使者を冒涜する魔法だ、正直な話を言ってしまえば本当はやりたくなかったし、ヤテンを呼び出す事は無いだろうと思っていた。



 息を大きく吸い込んだ後、俺は覚悟を決めた。


「リビングデッドエクリプス!」


 その時、骸真偽の槍が反応したのを感じて自分で驚く。俺の魔力は心から生まれるものだ。今まではこんな簡単にはいかなかったのだ。


 そして何よりも、頭に直接語りかけてくるあの黒ウサギの言葉に驚いた。

 日蝕の化身、陽光喰らう月兎。俺の中に住んでいる魔法の源。


『本当にやるのかい?』


「エクリプス?どうした?何か不味いのか?」


『いや…いいさ。アサヒの好きにすると良い』


「そう…か、まぁ、何故か魔力も発生してるし、やらせてもらうぜ?」


『アサヒの魔力は心から生まれるものだからね。今アサヒの心はいくつある?シズクの心はアサヒと似てるね、仲間の為に力を発揮するタイプだ。そしてシオの心は孤独の中で生まれたものだよ。その全てが今のアサヒの心に中に居る』


「…俺の中にあいつらの心が混ざってるって言うのか?」



 俺の魔法には呪いが発生する。リビングデッドエクリプスは歪な蘇生を行い使役する魔法だ。力の代償として術者への跳ね返りがある。

 骸真偽の槍はそれを引き受けてくれる形代だが、モンスターの心だけは残ってしまうのだ。それは俺の心に強く響く。



『そうさ、また混ぜる気かい?…僕は割りと無機質だけど、これでも心配しているんだ』


「…サンキュな。でも、これはやらないと」


『分かったよ、マスター』



 俺は骸真偽の槍を呼び出し魔法を乗せる。


『天網を穿て…理に風穴を…』


「出てこい!ヤテン!」



 次の瞬間、骸真偽の槍が水気を帯び、透明な水と浅黒く濁った水が発生し、それらは混ざらずに槍にまとわりつく、それはまるで陰陽の印のようにも見えた。

 それはやがて陰影となり、人の顔の様にも見えてくる。

 いや、これは顔だ、ヤテンの…顔だ。


 槍は投げる前に全て水となり地面に落ちて消滅した。


「何…だったんだ?敵が居なかったからか?」



 その時、激しい頭痛が俺を襲う、これは…心の跳ね返り。ヤテンの心が流れ込む。

 不発でも跳ね返りはあるのか…、死してなおも喰えない女だ。


 意識が混濁し倒れ込む俺にマヒルとヒイリが駆け付けてくれるのが分かったが、俺の意識はそこで途切れて世界が暗転した。




 ……… ……… …… …


 …… …… …




 シンヤが死んだら…後を任せると言われた。出来ればみんなを仲良く一緒に…ね。まったく、信用してくれるのは嬉しいけれど、無茶振りだわ。

 本当に…死ぬ事無いじゃない。

 私は自分の死には無頓着だったけど、人の死がこんなに辛いものだったなんてね。

 心に大きな穴が空いたみたいだわ、私にも心、あるのかしら。

 不死でも…涙って出るのね。いえ…主を失った状態だから不死とは言えないわね。


 本当に…無茶振りよ。

 私はもう…モンスターパレードの一員じゃ無いもの。

 シンヤを殺した人間達を…庇ったと思われてるのだから。


 そんな私にみんなを纏めれる訳が無いじゃない。

 シンヤの…バカ…。




 ━━ ━ ━




 新しい転移者?アサヒ?魔法?心?アサヒの?みんなの心を?アサヒに?アサヒの中で?シンヤとの約束が?約束?守れる?

 うふ、ふふふふふ。そうね!そうよね!心だけにしちゃえば良いじゃない!いらないわね、体はいらないわ!アサヒの中でみんな仲良く一緒になれればシンヤとの約束通りね!

 あはははははははははははははははははは!




 ◆  ◆  ◆




「うわあああ!!…あ?…え?ここは?」


「あ、アサヒ!」


 気が付くと俺はマヒルにおんぶされた状態だった。あの後気絶してしまっていたようだ。


「ごめん、もう大丈夫だよ」


 マヒルから降りる。ずっとおんぶされてたのかと思うと少し恥ずかしい。



「うなされとったに、怖い夢でも見てたんじゃにゃあ?」


「うーん、何か見てた気がするんだけど思い出せないというか、なんだろうなぁ」


「何言っとおに?」


「ごめん、自分でも何言ってるか分からないんだ」


 まだ頭が少し痛い、ぼーっとする。意識を失ってから何を見てたか思い出せない。


「うーん、やっぱりアサヒは少し寝させてもらった方が良いかもにゃあ」


「え?」


「冒険者ギルド、宿よりも近かったからにゃ」


 そう言われてみれば確かにここは冒険者ギルドの前だった。それに耳を澄ますと、いや、澄まさずともギルドの中では大歓声が上がっているのが分かった。


「…なんか、中が騒がしいな」


「そりゃそうにゃ。うちらは小魔王の中でも最強の一角を落とした英雄やに。今ヒイリが中で報酬を受けとっとおよ。アサヒは寝とったし、外で待機の方が良いじゃにゃあかって事になってにゃ、それで今に至っとお」


「そっか、色々と面倒かけたな」




 その時、ふとギルドの扉が開く、そこから出てきたのはヒイリだった。俺の顔を確認して安堵の表情を浮かべる。


「良かったです。アサヒさん目を覚ましたんですね。アサヒさんはすぐ気を失うから心配で心配で、お体は大丈夫ですか?」


「ああ、おかげさまでな。それにしてもギルドの中は凄い騒ぎだな」


「あはは。僕何もしてないのに英雄扱いでしたよ。あ、そうそう、報酬内容も纏まりましたよ。50万カッパーと、この町での特別待遇です。僕達は今後一切この町では食事と宿泊にお金を払わなくて良いそうです。全てギルドが持つそうですよ。あと僕はこの町では自由に商売出来るようになりました。税金免除です」


 なるほど、食事は手加減しないとマヒルがギルドの金を食い潰しそうで少し怖いな。

 なんて言ったらマヒルに怒られてしまいそうだ。



「待ってくださーい!報酬もう1つありますよー!アサヒ様ー!」


「リ、リリアさん!?」


 ギルドから飛び出てきた受付嬢のリリアが俺に抱き付いてくる。俺に好意を持ってくれているお姉さんだ。というか様付けになってる!?

 でも止めて、嬉しいけど止めて!マヒルが怖いから止めてぇぇ!


「もービックリです!ユニコーンにトドメ刺したのアサヒ様だって聞いて私もう大興奮ですよ!アサヒ様の飼い猫はどうせ何も出来なかったんですよね!?んふふふ、もう1つの報酬は私です!もらってくださーい!」


「き、気持ちは嬉しいけど…、俺には」


 マヒルがいるから、と言いかけた瞬間に石が砕ける様な音が鳴り、恐る恐る音の発信源を確認する。…やはりマヒルだ。

 マヒルの足が石畳を踏み砕いていた。斧使わなくてもそんな事出来るんだね、流石マヒルだ。あははは、もう乾いた笑いしか出てこない。


「へー、嬉しいと?アサヒはその女に言い寄られて嬉しいわけにゃね?」



 あー、だめだこれ、もう何言ってもだめだ。『それなら…』そうだね、そうしよう。

 俺はリリアを優しく押し退けると、マヒルの近くまで無防備に近付き…そっとマヒルの頭を撫で、額にキスをした。


「にゃ!にゃああああ!?…ふぁ…ふぁ~」


 マヒルは顔を真っ赤にしてその場に力無く崩れる。


「大丈夫だよ、子猫ちゃん。俺はマヒルの彼氏なんだから」


「ふぁい…、ほ…ほんとにアサヒ?」


「他の誰に見える?」


「…アサヒ、なんだけど…なんか」




 そのやり取りを見ていたリリアが別の意味で顔を真っ赤にして涙目になっていた。

 俺は笑顔でリリアに近付き、マヒルに聞こえないように耳元で囁く。


「次ここに来た時、リリアが心変わりしてなかったら、最後の報酬…もらうから」


「ふぇ!?…は、はいぃ」




 …って!何言ってんだ俺!?ほとんど無意識に言葉が出てたぞ!?

 ハートマークが飛びまくってるマヒルとリリアを見て、逃げるようにヒイリの所へ行く。


「お、俺何かおかしくないか?」


「…そうですね、少し幻滅しました。離れてください」


「ちょっ!」




『ヤテンの心が濃いせいだ…』


 突然話し掛けて来たのはエクリプスだ、気にかけてくれていたのだろうか。

 このまま話していたら傍目はためには俺の独り言だ、少し席を外し皆から遠ざかる。



「ライトか、どういう事?」


『………ライト』


「あ、体はイナバだね。面倒だからエクリプスで良い?」


 分かる、何故かエクリプスの事がよく分かる。

 カーバンクルは精霊だったんだ、シンヤとの意志疎通が曖昧だったのはこのせいか。

 ライトがイナバに憑いて変異した姿がエクリプスだったんだな。エクリプスからはその2匹の面影を感じる。

 ん?何でシンヤの事知ってるんだ俺?


『そこまで分かるんだね。うん、エクリプスで良いよ』


「で、ヤテンの心が濃いっていうのはどういう事?」


『ヤテンは自ら望んでアサヒに心を送ったように思うんだ。それに蘇生能力を持ったレヴァナントをリビングデッドエクリプスで歪とはいえ一瞬生き返らせた。使役者はアサヒ、つまり再びヤテンの主となった事になる。レヴァナントは主が居れば日没とともに蘇る』


「それは…ヤテンが生き返るってこと?それなら喜ばしいじゃねぇの」


『いや、それは無いよ。ヤテンという存在は完全に機能を失ったから。レヴァナントが主に殺されるっていうのはそういう事なの。それが覆る事は無いよ』


「ああー!分からん!つまりどういう事だ?」


『ヤテンはもう居ない、だけど心だけはアサヒの中に残留している。そして今夜ヤテンの心が更に濃くなるかもしれない。これは…ヤテンに一杯食わされたね』



レヴァナントの設定はオリジナルです。

そして次は新しい場所に出発ということになりますね。

章のタイトルで分かってしまいそうですが、あいつです(笑)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ