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伝説の魔物使いが死んだ後の世界がマジでヤバい  作者: しら玉草
第4章:モンスターパレード
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伝説の魔物使い2

今回は初めてのモンスターエピソードです。


 冒険は出だしから難航を極めた。


 まず、お金が無い。お金が無いから武器も無い。戦闘スキルも無いし仲間もいない。


 まぁ、そうだろう。戦闘スキルを何も持っていない上に無一文の男が「魔王を倒しに行くので仲間になってください」なんて、笑い話も良いとこだ。

 人を馬鹿にした様な含みのある苦笑いしか返ってこない。

 この世界でも人間を嫌いになってしまいそうになっていた。



 スライムくらいなら、その辺に落ちている木の枝とかで倒せないだろうか、そんな些細な思い付きで町の外へ出てみた。


 ここはクックウェンと呼ばれる町の外にある平原だ、遮蔽物しゃへいぶつの無い広い土地に穏やかな川が流れ、所々に橋がかかっている。

 それは俺が今まで見たことの無い広大な世界だった。




 そして、駆け出しの冒険者だと思われる人達がスライムを狩っているのが見える。

 明らかに俺よりもずっと若い子達がスライムを追い掛け回していた。


 子供で勝てるなら俺でもいけるかもしれない、そう思い俺も戦おうとするがすぐに中止した。スライムを追い掛け回していた冒険者が今度は追われていたからだ。


 何故逃げているのか?それはスライムの数が増えたから。

 どうやらスライムは仲間が攻撃されると助けに行く習性があるらしい。

 その冒険者は子供とはいえ剣も盾も持っている。それでも逃げるのだから木の枝持った大人だって似たようなものだろう。


 俺は、この世界の事を良く知らない。だからよく観察した。

 スライムだからといって侮ってはいけないようだ。



 そしてもう1つ、観察中に見つけたものがあった。

 仲間を助けに行くスライム達の中で、遠巻きにソレを見つめる一匹のスライム。

 そのスライムに興味が湧き、慎重に近付いてみる。仲間の輪に入らないその姿が自分と重なったのかもしれない。



 俺に気付くとそのスライムは酷く怯えた様子で逃げようとしていた。


「待って!攻撃しないから!」


 その言葉は咄嗟に出ていた。動物園で働いていた時も動物達に話し掛けていたから、モンスターに対しても自然と声を掛けていた。

 その言葉を理解したのかスライムはこちらを見つめて動かない。


「通…じた?あ、そうか【魔物使い】の能力か」


 【魔物使い】、それは魔王の呪縛を取り除き、モンスターとの対話を可能にする能力、らしい。対話してどうなるのかは分からないけど、とにかく言葉は伝わるようだった。

 魔王の呪縛というのは魔王がモンスターを使役する命令権という事らしい、それはアーミャに聞いた。ついでにモンスターは魔王を攻撃出来ないっていうのも含まれるんだとか。


 スライムは俺に敵意が無い事が分かるらしく、不思議そうな顔で…と言っても表情なんて分からなかった。それでもスライムの意思は伝わってくる。これが対話の力なのだろう。



「お前は戦いに参加しないのか?」


 それは仲間の輪に入らないスライムに対してのただの興味本位だった。

 しかしスライムは怒られていると感じたのかプルプルと震え出す。

 養護施設に居た頃、気の弱い子がこんな感じだったな、なんて思ってしまい笑ってしまう。なんだ、人間もモンスターも変わらないじゃないか。


「戦うのが怖いのか?」


 スライムは震えながらも仲間のスライムの方をチラチラと見ている。


「なるほどな、本当は仲間の為に戦いたいんだな。でも勇気が無い、と」


 スライムは悄気しょげた様に項垂うなだれる。

 しまったな、スライムが元気無くなってしまった。



「…んー、じゃあ俺と遊ぶか?」


 俺は拾った木の枝を近くに投げる。


「あれ、拾って来てくれ」


 スライムは不思議そうにその木の枝を取ってくる。

 枝の一部を器用に体で包んでいた。意外と便利な体だ。


「よーしよしよし、良い子だ!」


 スライムの頭を撫でるとしっとりとしたゼリー状でひんやりと冷たく気持ち良い。

 俺は次にちょっとだけ遠くに枝を投げてみた。


「もう一回取ってきてくれるか?」


 スライムは元気良くそれを取りに行く。


「よーし、凄いじゃないか!」


 俺も楽しくなってしまいスライムを抱き上げていた。

 液状だから無理かと思っていたが意外と弾力があり、押し返される感覚が心地良い。


 今度はもっと遠くに枝を投げてみた。

 次は何も言わなくてもスライムは取りに行ってくれた。


 俺ももうモンスターを退治しようなんて思わなくなっていたし、人と居るよりもスライムと居た方が楽しかったから飽きるまで一緒に遊んだ。

 飽きた頃には空はすっかり夕焼けに染まっていた。


 日が落ちる頃には町に戻ろうと思っていたが、スライムは俺の傍から離れようとしない。俺が歩くと後ろを付いてくる。

 流石にスライムを連れて町に戻る事は出来ない。…いや、戻った所で金も無いし知り合いも居ないのだから野宿で良いか、そう思い直しスライムと向き合う。


「俺と一緒に来るか?お前の名前は…、シズクにしようかな。どうだ?」


 スライムが喜んでいるのが伝わってくる。俺も友達が出来て嬉しかった。


「ふぅ、それでも腹は減るな…、今日はもう寝ちまうかなぁ」


 俺がそう言うとスライムはその辺の雑草を摘んで俺の所に持ってきた。


「え?これ食えるの?マジで?」



 次の日、俺はお腹を壊した。




モンスター全員分はやりません。多すぎますので(笑)

要所だけやっていくつもりです。


スライムの名前はシズク。勇気が無く、仲間と戦えなかった悔しい思いからか、強くなった後はあんな風にスライムの守護神みたいになりました。

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