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伝説の魔物使いが死んだ後の世界がマジでヤバい  作者: しら玉草
第3章:レイジングテンペスト
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レヴァナント


 ……… ……… …… …


 僕の体は小さかった、どの兄弟達よりも小さかった。

 その小さな体に合わせてか、僕の鎌はとても小さかった。


 僕には居場所が無かった、どこにも無かった。

 小さな体では生きていけないと、親に捨てられた。

 小さな鎌では生きていけないと、仲間に無視された。


 仲間から逃げるように、敵から逃げるように、僕は沼から離れた。

 瓦礫の山に身を隠し、たった一匹で生きてきた。

 でも…そんな僕に話し掛ける物好きがいた。


「おまえ小せぇなぁ、仲間はいねぇのか?おまえも独りなのか?はは、モンスターでも案外ぼっちって居るもんなんだなぁ、昔の俺と同じだ」


 そこには人間が居た、色んな魔物を引き連れた変な奴だった。


「独りなら…おまえも付いて来るか?」


 今まで誰も構ってくれなかったのに。嬉しかった、凄く、嬉しかった。


「うーん、蟹の表情は分り辛いなぁ」


 僕は腕を振り上げて精一杯喜びを表現する。嬉しい、嬉しい。


「はははは、踊ってるのか?鋏も片方だけ大きいし、まるでシオマネキだな。よし、おまえの名前はシオだ、付いておいで。俺の名前はシンヤ、よろしくな」



 ◇  ◇  ◇



 …気が付くと俺はベッドの上に居た、最近こういうの多いな、病弱なヒロインみたいだ。


 さっきのは夢だろうか、いや、分かっている、あれは心だ。

 カルキノスの…心。呪いは骸真偽の槍が引き受けてくれるが心は俺に跳ね返る、そう聞いてはいたけど…冗談じゃない。…心が…痛い。

 シオ…俺が…殺した。目から涙が溢れてくる。…辛い。



「アサヒ!やっと起きた!にゃにゃ!?泣いとおの?どこか痛い!?」


「あ…マヒル…、いや…違うんだ、そうじゃないよ」


 俺はベッドから体を起こし周りを見渡す。窓の外はもう真っ暗だった。

 ここは、宿屋か。少し遠い所にヒイリが居る、その顔はとても嬉しそうだった。

 そして向い側のベッドに腰掛ける色白の天使、アーミャ。…と、対称的に黒いゴシックロリータの……ヤテン!?


「は!?い、いや、え!?ど、どこから突っ込めば良いんだこれ!?」


 俺の反応が予想通り過ぎたのかヤテンがクスクスと笑っている。


「ふふふ、私に…突っ込みたいだなんて…大胆ね。……て、あら?」


 俺は思わずヤテンを抱き締めていた。良かった、生きていてくれて良かった。ここにアーミャが居るって事はきっとエリクサーを使ったに違いない。


「良かった!生きてたんだな!良かった!」


「あ…あら、これは…予想外。ふふふふ、彼女さんの顔が怖いわよ?」


「お、おわぁ!すまん!つい…って…あれ?なんかヤテンの体温て…」


 ヤテンの体は妙に冷たい、体温と呼べるような温もりが無い。


「言ってなかったかしら?種族名レヴァナント。私は…アンデッドよ」


「えええええ!?」


「あ、勘違いしないで。私の体…腐ってないから。極めて弱いけど、新陳代謝もあるのよ?アンデッドって言うと…皆ゾンビみたいなの想像して…困るの」


「い、いや。俺が驚いてるのはそこじゃない」


「ああ、蘇生条件?私の死が…トリガー。太陽が沈んだ後…主の元へ帰ってくる。そういう風に…出来てるの、今の主は…アサヒよ」


「あ、ああ、うん。…じゃ!無くて!モンスターだったのか!?」


「あ、そこ?…ええ、そうよ。元は…人間なのだけどね」


「しかもレヴァナントって!魔物使いの勇者の最終パーティじゃねぇか!」


「そうね、魔王とも戦ったわ…」


「……ところで、魔王ってどんな奴なんだ?」


 これは完全に興味本位だ、ユニコーンとヤテン、あの強さのモンスターが四人揃ってやっと勝てた魔王、どんな怪物だと言うのだろうか。


「……ふふ」


 ヤテンは優しく頬笑むだけで口をつぐんでしまった。

 あ、これ教えてくれないやつだ。




「聞きたい事は色々あるけど、……アーミャは何でここ居るの?」


 ヤテンのインパクトが強すぎて後回しにしてしまった。何でこいつがここに居るんだ?


「あ、もう良い?やっと私に話ふってきたねー、もー、私が見えてないのかと思ったよー、気付かないならストリップでも始めちゃおうかと思ったよー」


 何!?しまった、無視を続けるべきだった。


「いや、嘘だから、心の声漏れてるからー」


「な、なんだってぇ!?」



 その時、ふと背筋に冷ややかな物を感じた、直感スキルなんて無くても分かる、これは…マヒル様がお怒りだ。


「ア・サ・ヒ?」


「ひぃ!?マヒル様!?」


「もー!目覚めて一番にヤテンに抱き付いて!次は他の女の子の裸見たがるとか!もう信じらんにゃあよ!」


「ち、違うんですマヒル様!一番見たいのはマヒル様の裸でございます!」


「………ふぇ?」


「………あ」


「にゃ、にゃあぁぁあ!?」


「ふああああ!?」



「もう!そういうの後でやれし!今は私の番でしょー?最近私の扱い酷くない?私女神様だよー?可愛いでしょ?ほらほら、私可愛いでしょー?」


 アーミャがウインクとかして必死にアピールしてくる、確かに可愛い、昔の俺なら挙動不審に陥る程の可愛さだと言っても良いだろう。…しかし!


「マヒルのが可愛い!」


「にゃあ!?…えへへ」


 マヒルは俯いて恥ずかしそうにもじもじとしだす。

 これだよ、これ、普段の勇猛さからは想像出来ない乙女モード、もう可愛すぎる!



「いや、まぁ、アサヒにどう思われても別に良いや、それより私の話聞きなさいよー」


「切り替え早いな!」


「実際アサヒは好みじゃないからー」


「くっそ……で、アーミャの要件は?」


「まずね、魔法使った時に心の跳ね返りは起きたのかどうか。カルキノス、使ったでしょ?カルキノスの心はアサヒにどういう影響を及ぼしたのか知りたくてね」


「あー、うん。あったよ、心が記憶として流れ込んできた」


「記憶…か。アサヒはどこまで知ったの?」


「魔物使いの勇者の名前は…シンヤ」


「私の事は?」


「へ?アーミャはシンヤと関わりがあるん?」


「……んー、じゃあまだ良いかなー」


「おいおい、濁すなよ」



「そうよ…ペ天使さん」


 ヤテンが口を挟んでくる。シンヤとアーミャが知り合いならヤテンとも知り合いのはずだ、ヤテンに聞けば全てが分かるのかもしれない。


「ヤテン、教えてくれないか?シンヤの事」


「この天使に連れてこられた異世界転移者。…そして、最後はこの天使に…殺された」


「……え?」



「ストーップ!ちょっとちょっと!こっちの言い分も聞いて欲しいのー。殺したのは私じゃないでしょー?なんかどっかの国の王様の家来的なのだったでしょー?」


 アーミャが割って入る、色々と衝撃的過ぎて頭の処理が追い付かない。



「人間を言いくるめて…誘導したでしょ」


「言いがかりやめて?ね?証拠無いでしょー?火種は最初からあった、それだけじゃない?」


「…相変わらずの…ペ天使ね」


「あー!もう!その言い方やめてー?アサヒ、もう1つの要件。このゴスロリ女も小魔王だから抹殺対象、殺っちゃってー」



 色々と…思考回路が追い付いていない、しかし、そうだ、ヤテンは小魔王だ、殺…さないと…、あれ?これは誰の意志だろう、何で殺すんだろう。


「アサヒ…良いわよ?元々私も…そのつもりだから」


 ヤテンが近付いてくる、こいつは…小魔王だ…。俺はジャベリンを取り出し、展開する。


 ヤテンはみずから俺のジャベリンを掴み、自分の心臓に宛がった。

 そして、マヒルが止めようとしたその直前に、俺のジャベリンはヤテンの心臓に突き刺さる、それは驚くほど簡単にヤテンを貫いた。


「うふふ、気に病む事は無いのよ…主様」



 ふっと頭の中のもやが晴れる、目の前には息絶えたヤテンが居た。


「うわ、うわぁあああ!な、なんで…俺…」


「んふふー、だって小魔王だもん、その女。小魔王は全部殺す、私との約束でしょー?」


「そんな…あ、あ、あああああ!」


「レヴァナントは主に殺された場合は契約破棄、もう帰って来ない、アサヒお疲れ様ー、一日で勇者の最終パーティのメンバー二人も倒したね!凄い凄い!」


「この…似非天使が…」


「じゃあねー、バイバーイ」



 アーミャは空気に溶けて消える様にして一瞬でこの場から消えてしまった。

 もう…疲れた…俺は…どうしたら良いんだ…。




「あの…」


 項垂うなだれる俺にヒイリが近付いてくる、アーミャが消えるタイミングを見計らっていた様だった。


「ヒイリ…今は話しをしたい気分じゃ…」


「あ、いえ、これ、ヤテンさんからです」


 そう言うとヒイリは俺に一枚の便箋を渡してきた。

 そこにはこう書かれていた。



【リビングデッドエクリプス、ヤテン】




はい、これにて第3章終了となります。

ちなみに今回はちゃんと報酬受け取ってリッチメンです。

ようやくちゃんと報酬もらえましたね!

第3章で回収出来ていないフラグは第5章で回収予定です。

第4章は短めかもです。

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