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伝説の魔物使いが死んだ後の世界がマジでヤバい  作者: しら玉草
第1章:ハイドロゲンスライム
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自覚無き小魔王3


「おーい、アーミャ、冒険者登録終わったぞー。次どうすんの?」


『はいはーい。そこの町クックウェンって言うんだけどね、次はクックウェン周辺のスライム倒しまくって欲しいの。たぶんギルドに討伐依頼あると思うからお金ももらえるよ』


「俺でも勝てるん?」


『スライムはこの世界でも最弱モンスターだよー』


 なるほど、まずは経験値稼げって事か。

 この世界はスキル制っぽいけど、新しいスキルって手に入ったりするのかな。





「アサヒ、誰と喋っとぉ?」


「んー、天…、いや、独り言だよ」


 誰もいない虚空に向かって話し掛けて「天使と会話してる」なんて言ったら頭のおかしな奴確定だからね、独り言って事にしとくべきだよね。


「ふーん、アサヒは少し変な奴にゃーね?」


「まあな!」



 よし、頭のおかしな奴じゃなく少し変な奴に留まれた。上出来だ。

 でも次は人の居ないとこでアーミャと話そう。

 何はともあれ今はあの似非天使の言葉に従うしかあるまい。スライム狩りだ!



「ねぇ、マヒル。俺スライム狩りたいんだけど」


「えぇ!?正気!?」


「へ?」



 何?なんか受付嬢のお姉さんも他の冒険者たちも変な顔して俺の顔見てんだけど?


「スライムって最弱モンスターでしょ?最初の相手にちょうど良いじゃん?」


「いやぁ…うん、確かに最弱モンスターにゃよ?特にクックウェン周辺のスライムは大人しぃなぁ、草とか虫とかしか食べにゃあし…」


「じゃあ良いじゃん?」




 マヒルが返答に困っていると一人の冒険者がこっちに向かって歩いて来た。額に大きな傷がある戦士風の男、歳は30くらい、熟練者の雰囲気を醸している。


「おめぇまさか【勇者のはらから】【自覚無き小魔王】を知らない訳じゃねぇだろうな?」


「知らんし」


「な!…ふっ、ならば語らねばならぬな。魔王を倒した伝説の魔物使いの事を!」


「いや、長くなりそうだし、暑苦しいし、遠慮願いたいんだけど?」


「そう、あれは5年くらい前の事だった…」


「あ、勝手に語りだしやがった!しかもそこまで古い話でもねえし!」




──────────




 魔王によって世界の平和は脅かされていた。

 魔物の頂点に君臨し、魔物たちを使役する者、それが魔王。


 そんな時、一人の若者が立ち上がる。後に伝説に語り継がれる事となる勇者だ。


 しかし勇者は弱かった。スキルも1つしか持っておらず、ともに冒険する者もいない。


 そんな者が何故勇者となり得たのか?そのたった1つのスキルが他に類を見ないユニークスキルだったのだ。非常に強力で、人々が怖れる力。


 ユニークスキル【魔物使い】。魔物を仲間とし、使役する力。魔王と同種の力だと言っても過言では無いだろう。



 では魔王と何が違うのか?

 魔王は自分自身が最強の魔物であり、他の魔物は従えているだけだ。

 魔王の力には強制力が有り魔物たちは逆らえない。


 それに比べ魔物使いの勇者は自分自身は戦わない。戦っても弱い。

 【魔物使い】の能力は魔王の支配を解除し、魔物たちとの意思疎通を可能とする。

 心を通わせ、和解した魔物たちが戦うのだ。



 そして決定的な差が1つある。

 魔物使いは魔物の秘められた力を解放し、進化させ育てる事が出来た。


 そうして強化された魔物たちを駆使し、とうとう魔王の討伐を成し遂げたのだ。



 非常に強い魔物を多数従える勇者は人々に怖れられる存在であったが、魔王討伐を成した事で英雄として扱われ、世界に平和が訪れた。



 しかし問題はその後に起きた。


 勇者は魔物と仲が良いという事以外は普通の人間。

 突然の死去、流行病だったらしい。



 英雄の他界に悲しむ人々だったが悲しみはすぐに恐怖へと変わった。


 勇者の仲間の魔物たちは別に心を入れ換えて人に味方していた訳では無い。

 あくまでも勇者に味方していたのだ。


 勇者が居ないのであれば人の側につく理由などありはしない。

 みんな自分の元居た故郷に帰ってしまった、野生に帰って普通の魔物に混ざってしまった。



 熟練の冒険者でも太刀打ち出来ない魔物と突然エンカウントする恐怖。

 それはまるでボス部屋に居ないボスモンスター、普通に出歩くエクストラボス。

 そう、それこそが【自覚無き小魔王】たち。



 冒険者はいつしか勇者の同胞だったモンスターを避けるようになった。

 魔王の侵略に比べればゆるやかだが小魔王たちの脅威は決して無視出来るものでは無い。

 対抗出来る者もおらず、小魔王と遭遇してしまったらされるがまま。


 小魔王たちの討伐依頼は出るものの冒険者たちは皆尻込みしてしまう。

 賞金額だけは上がっていくが討伐に向かう者は居ない。



 【自覚無き小魔王】は頻繁に訪れる天災である。




──────────




「なるほどー…、つまりアレか?ここのスライムの中にソレが混ざってるってか?」


「そういうことだ、わりぃことぁ言わねぇ、クックウェンのスライムには手を出すな」


 そう言って男は立ち去ってしまった。ありがとう!かなり重要な情報だったわ!




「みゃあ、そういう事にゃで、それでもスライムやると?」


心配そうに聞いてくるマヒル、優しい子や…。


「…ちょっと待ってて」




 ……………




「おい!アーミャ!似非天使!」


 ギルドの隅に移動して無茶振りしてきた天使に話し掛ける。


『…何よ?』


「なんだよ【自覚無き小魔王】って!スライム倒しに行ってたら危ないとこだったぞ!」


『あー、そうそう、それだよそれ。それ全部倒してもらおうと思って異世界から君呼んだんだよ、とりあえずスライムから頼むねー』


「おいいいい!無茶振り過ぎんだろおおおお!!」


『だいじょぶだいじょぶ、異世界勇者は基本的にこの世界の熟練者以上の強さだから』


「俺その基本から外れてるみたいなんだけど!?」


『なんとかなるってぇー』


「ならねぇだろ!元の世界に帰らせてくれ!」


『無理だよー?』


「軽いなぁおい!なんでさ!」


『君にスキル与えたでしょ?あれ私との約束が終わるまで帰れないことが条件なんだよ』


「それ大事なとこだろぉ!何で事後報告!?酷くない!?」


『もー、うるさいなぁ、そんなに言うなら帰る方法一応あるよ』


「なんだ、あるのか。どうやんの?」


『とりあえず死んでぇ、その後元の世界に転生したら良いんだよー、転生手続きだけはやったげるよー、一応私が連れてきた訳だしそれくらいはサービスしちゃう』


「うえぇぇぇ!?いや、いやいやいやいや!それはダメでしょう!」


『転生出来るラインナップは昆虫と虫と魚介類だけどね』


「しかもラインナップ変わらねぇのか」


『基本変わんないね、どうする?転生する?』


「そこは基本から外れねぇんだなあもう!分かったよ!やれるだけやるよ!」


『あーい、頑張ってぇ』


「かるっ!」



はい、次からはやっとバトル!…の、前準備です。

実はアサヒは靴すら履いてないんですよ。自室から異世界に転移しましたからね。

上下スウェットで足は靴下です。流石にヤバイ。

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