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伝説の魔物使いが死んだ後の世界がマジでヤバい  作者: しら玉草
第3章:レイジングテンペスト
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VSユニコーン1

魔物使いの勇者の最終パーティの一人、ユニコーンとの戦闘回です。

モンスターたちにも性格を持たせてますのでそれも踏まえて楽しんでいただけたら幸いにございます。


『間に合って良かった』


 エクリプスの声が聞こえた、アレと出会う前に俺と会いたかったってことか?

 エクリプス、おまえが居れば切り抜けれるのか?


『…僕はただの力』


 そうかい、自分で切り抜けろってことね。



 それにしてもユニコーンはどこから現れたというのか。

 ユニコーンは生き物だ、エクリプスと違って何も無い空間から現れたりはしないはず。

 走って来たにしては静かすぎるし歩いて来たにしては早すぎる。


 いや、今はそんな事はどうでも良い、目の前の敵に集中しなければならない。

 何せ相手は魔物使いの勇者の最終パーティの内の一人なのだから。



「ヒイリは下がって、というか逃げて」


 足手まといになる事はヒイリが一番良く理解しているのだろう、無言で頷いてゆっくりと下がっていった。



「私が前衛、アサヒは援護、それで良いに?」


 確かにそれが定石だろう、しかし相手が相手だ、まともに打ち合うのは得策とは思えない。いくらマヒルが頑丈で強くてもユニコーンの攻撃に耐えれるだろうか。


「いや、俺が前に出て気を引く。マヒルは隙を点いて攻撃してくれ」


「…分かったに、でも無理しにゃあでよ」


「無理しなくても済むならな」




 ユニコーンはこちらを見据えたまま足踏みするだけで攻めてはこない。

 敵だと思われていないのか、それとも舐められているのか。

 戦わないで済むのであれば穏便に引き下がりたいのが本音だ。

 絶対強者の風格からか、威圧感だけで喉が渇く。

 願わくばユニコーンの方から下がってもらいたい、睨み合いを止めた瞬間に襲ってきそうで気が休まらない。



 先に動いたのはユニコーン。

 地面を数回強く蹴り頭を縦に振る、そしてこっちを睨みブルルルルと小さく唸った。

 まるで先手は譲るからかかってこいとでも言いたげに見える。


「挑戦者扱いだなちくしょう、なら先手はいただくぜ!」


 ジャベリンを展開し構える、そしてユニコーンに狙いを定めて大きく体を開いた。


「後悔すんなよユニコーン!うおおおおりゃあぁ!」


 俺の手から放たれたジャベリンは空を切り裂き、螺旋に旋回して飛んでいく。

 丸太と違って空気抵抗の少ないジャベリンが飛んでいく様はまるで閃光を思わせる。


 しかし、そんな高速で飛来するジャベリンに対してユニコーンは微動だにしない。

 当たる!そう思った次の瞬間ジャベリンは急に勢いを失い地面へと落ちる。


「は!?そんな馬鹿な…」



 次はこっちの番だ、そう言わんばかりにユニコーンはいななき、地面を蹴って突進してくる。


 否、突進してきたのが分かったのはユニコーンが走り抜けた後の事だった。

 ユニコーンはあまりにも静かに、地面を滑る様にして加速し、刹那の間に俺の横を掠めて遥か遠くまで移動していた。


 聞こえたのは一瞬の足音のみ、残ったのは足跡で抉れた地面。

 激しい暴風が静かに駆け抜けた、そんな印象だった。


「あいつ、わざと外したな」


 ユニコーンは悠然と歩き、ときおりこちらを見てはまたブルルルルと小さく唸る。

 そしてジャベリンが落ちている方角に小さく頭を振る。


「拾えってか…、くそ…」



 俺は走ってジャベリンを取りに行き、拾い上げる。

 その間ユニコーンはただこちらを見つめていた、舐められている、と言うよりは俺の強さを測っているようにも見えた。


 何故そんなことを?いや…、思い当たる節はある。

 カルキノス。あれだけ巨体のモンスターを倒したのだ、他の小魔王が気付いてもおかしくは無い。そんな時に自分に挑む者が現れたら感付くだろう、殺したのはこいつだと。



「アサヒ!あいつたぶん魔法使っとおにゃ」


 駆け寄ってきたマヒルに言われたが俺もそれは考えていた。

 しかしどんな魔法か分からない、こちらの投擲したジャベリンを落とし、自分は一瞬で静かに移動する。…風か?大気の魔法である事は間違い無いだろう。


「…試してみるか」



 俺はジャベリンを投げずにユニコーンに向かって走り出す。

 ただ真っ直ぐに走っていった。しかし強い衝撃とともに弾き戻される。


「あぐ!?」


 見えない何かにぶつかった気がしたがユニコーンは動いていない。


「なるほど…、空気抵抗か?」


 参ったな、相性が悪すぎる、投擲武器じゃどうにもならない。

 空を裂くジャベリンですら落とされた、抵抗の掛け方も自在なのだろう。



 ユニコーンは再び大きく嘶く、そして上体を高く上げ、地面を強く踏みしめる。

 ドンッと重い音がした後、さっきまでの静かな攻撃とは打って変わって激しい爆発音の様な轟音を平原に響かせ、それと同時に強い衝撃波が押し寄せてきた。

 辺り一面を押し出すような衝撃波は木々を破砕し地面を抉る。

 ユニコーンの一撃は地形を大きく変えてしまった。


 吹き飛びそうになった俺はマヒルに掴まれ、マヒルはもう片方の手で戦斧を地面に宛がい、自身が吹き飛ばない為の錨としつつ俺を庇ってくれた。

 マヒルの戦斧は大地の魔力により質量が増大する、なんとか飛ばされずには済んだが、たった一回攻撃を凌いだだけでマヒルの疲弊は凄まじいものだった。




「マヒル、ありがとう…。あいつ、あんな攻撃も出来るなんて…」


 甘く見過ぎていた。勝負にすらならない。

 俺の心はもう折れていた。ダメだ、もう戦えない。

 俺の手にあったはずのジャベリンはさっきの衝撃で吹き飛んだ、武器も無い。

 いや、あっても無意味だ…ユニコーンには届かない。



 ユニコーンは地面を蹴り、頭を低く下げる。

 次は突進か、もう…好きにしろ。マヒルを逃がす隙くらいは作りたいが…その策も無い。

 どうか、俺を殺すだけで満足してくれよ…。



「はは…もう無理だわ。俺なんかじゃマヒルを守る盾にすらならねぇ」


「なんか…なんて言わにゃあでよ…」


「え?」


「アサヒに惚れた私が…バカみてゃーに…なるじゃにゃーか」


「なん…て?」


 今、なんて?マヒルが俺に?


「私は頑丈やに、盾になるのは…私。闘神ライオルト族の…最後の意地!」


 マヒルは俺の前に立つと戦斧を地面に突き立て両手で握る。文字通り盾になる気だ。

 決死の覚悟を決めたマヒルは正に闘神と呼ぶに相応しい勇猛さだった。



 ………じゃ、ねええよ!アホかあ!!


「このアホお!」


 俺はマヒルの肩を掴むと後ろに引っ張る。マヒルは驚くほど簡単に後ろに倒れてしまった。


「フラフラじゃねぇか!アホ!もう、アホ!」


「な、何やに!もー!」


「惚れた女くらい守らせろ!マヒルが惚れた男は男の中の男だってとこ見せてやるよ!」


「にゃ!?…にゃ、にゃにゃあああ!?」


 もうマヒルは驚き過ぎて何言ってるか分からない事になっていた。

 …最後に、マヒルの可愛い顔見れたのは最高の手向けだったな。





『魔力が満ちた』


 …は?これはエクリプスの声?今さら何が出来るって言うんだ?


『奴が来る、手を前へ』


 言われるがままに右手を前に突き出す。


『力を感じて、使い方は分かるはず』


 なるほど、分かる。確かにソレが使えるのが当たり前の事の様に理解出来た。

 しかし、これはあまりにも…。


『始動キーを』



「リビングデッド…エクリプス!」


『天網を穿て、理に風穴を、…今だ、奴が来た』


「火を吹け!スライム!!」



 俺の右手がしっとりと濡れ、前方の空間に水素が充満していくのが分かる。

 これは俺が最初に戦った小魔王スライムの力。

 自分が殺めた者をただの力として呼び出す外道の魔法。



 ユニコーンが爆破圏内に入った瞬間、爆炎が大気を焼き尽くす。

 目前で起きた大爆発は俺の皮膚をも焼き、突き出していた右腕は炎に呑み込まれ一瞬で焼き契れて消し飛んだ。

 これは、殺されてなおも利用されたスライムの呪いだろうか。



 意識が飛びそうな程の激痛の中、ユニコーンが爆炎を回避したのが見えた。

 爆風よりも早く走り抜けた後、俺を警戒しながら姿を消してしまった。


 ユニコーンを退けた代償が利き手1本、ユニコーンは無傷。はは、笑えない冗談だが上等だと割り切るしか無いな。

 少なくともマヒルを守る盾にはなれたのだから。




 マヒルが俺の名前を呼んでる気がするが、意識が朦朧もうろうとしてもう聞き取る事も出来なかった。


 とにかく、もう、眠い。


 ……………

 ………

 …


私が安易なパワーアップを許すはずも無く、アサヒの腕が吹き飛びました。

アサヒごめんね☆ミ

この魔法は最初から構想があったので、書きたかったシーンでもあります。


━ 余談 ━


ただ、ウサギにするつもりは無かったんですよ(笑)

複数のお気にいりユーザー様の所でウサギのパートナーが活躍してるの見て私も書きたくなって、自分なりに被らない感じのを(笑)

エクリプスの強さは○ク以上魔界の軸○以下です。

…幅広すぎて何の参考にもならない(笑)

そして私しか分からない(笑)

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