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伝説の魔物使いが死んだ後の世界がマジでヤバい  作者: しら玉草
第3章:レイジングテンペスト
28/58

陽光を喰らう

第3章、3話目にして色々出てきます。

あと評価が3桁行きました。感謝感謝でございます。


「もー!アサヒはほんとにもー!」


「えー、別に俺悪くないだろ?何で怒ってるん?」



 一角獣の目撃情報があった場所へと向かう道中マヒルがずっとむくれている。


「あの受付嬢もゴスロリもヒイリもみーんなアサヒに惚れてるに違いにゃあよ!」


「え!?僕を巻き込まないでくださいよー。僕は男ですー」



 ヒイリもとんだとばっちりだな…って、何でヒイリまで俺を睨むんだ。俺悪くないだろ?

 ヒイリの頬がプクーっと膨らんで上目遣いで俺に抗議の視線を…、いや、それ睨むっていうより普通に可愛いから。


いや、ねぇ?俺悪くないだろ?




 ……… ……… …… …




 目撃情報のあった場所はディブロスのある高原から小さな山1つ越えた所にある。ディブロスよりも標高の高い高原だ。

 背の低い木々が生えている為しゃがめば身を隠すことも出来そうだが、高低差はあまり無い。パルクールで逃げるっていうのは難しいかもしれない。


 しかし逆を言えば遮蔽物が少なく見晴らしが良い。

 人よりも大きな獣なら隠れようが無いだろう。そして見渡す限りではそんな獣は見当たらない。もうどこかに移動したのだろうか。




「居ないな」


「居ませんね」



「二人とも静かに…、見られとおにゃ」


「え?」


 マヒルだけが何かを感じ取っているようだ。

 何かが居て、既にこちらを視認しているらしい。


「…来るに」



 マヒルがそう言った後、何も無かった空間に人よりも大きな漆黒の穴が開く。

 それは実際には穴では無かった、穴が開いたかの如く黒い塊が光を吸い込む様にして突如として姿を現した。

 良く見るとその塊には毛が生えているのが分かる。

 その微細な毛が僅かに光を残し青黒く輪郭を成す。


 上部には2つの長い…耳?その姿は正しくウサギだった。

 そしてその頭部から生える一本の角、角だけが強い光を発している。吸い込んだ光が全て角に集まっているかの様だ。



「まさか…エクリプス?」


 どうやらヒイリは知っているらしい。その顔は驚きに満ちていた。


「いきなり襲ってくる感じでは無いけど。ヒイリ、あれも小魔王なのか?」


「いえ、あれは全うな生き物ではありません。陽光喰らう月兎、日食の化身、精霊に近い存在。僕も見るのは初めてです。と言うか、おとぎ話の存在です」


「まずは良い奴か悪い奴か教えてくれ」


「分かりません。…ですが、良い話は聞きません」


「おーけー、それだけで十分だ。触らぬ神に祟りなし、刺激しないように遠ざかろう」



 一角獣の正体はエクリプスだった。そう言ってもおそらくは信じてもらえない。

 証拠も無ければ存在すらおとぎ話の中だ。どうしたものかな。




『待って』


 え?頭の中に直接声が聞こえてきた?

 アーミャ?にしては声が高すぎる。いったい誰の声だ?


『日食』


 まさか…俺の考えてる事が分かるのか?


『分かる、待っていた』


 何の為に?というか…おまえ、エクリプスか?


『罪の魔力を喰らう為。そして僕は日食、エクリプスでもかまわない』




「アサヒさん?立ち止まってどうしたんですか?早く行きましょう」


 動かなくなった俺を心配したのかヒイリが声をかけてきた。


「大丈夫、エクリプスは敵じゃないみたいだ」


「どうして分かるんですか?」


「エクリプスの声が聞こえる。俺に用があるらしい」


 何か言いたげなヒイリを制してエクリプスと向き合う。




『罪の魔力、感じた。闇を光に変える魔力。僕はその光を喰らい事象を成す』


 俺でも分かるように頼む。


『君の…味方』


 エクリプスはそれだけ言うと俺の体に角を突き刺してきた。

 一瞬驚いたが痛みは無い。角を通して俺の中に溶け込んでくるのが分かった。

 目の前に居た大きなウサギは俺の体の中へと消えていってしまった。



「アサヒさん!」


「あ、ああ。なんか大丈夫っぽい」


「エクリプスと…契約しちゃったんですか?」


「いや、意味分からんから説明求む」


「魔法ですよ。自分の中に精霊を宿し、魔力を通して事象を成す。それが魔法です。で、エクリプスは精霊に近いって言いましたよね」


「んん?すまん、まだ分からん」


「えーと…、アサヒさんにも魔法が使えるかもってことです。エクリプスを宿すなんて…聞いたこと無いですけどね。そもそも後天的に宿すなんていうのも聞いたこと無いですよ」


 んん?俺が魔法?…念願の魔法が!俺にも!?


「おおおおお!すげえ!俺にも魔法が使えるのか!」


 ん?どうやってやるんだ?こうか?それともこうか!?


 手をかざしたりヒーローの変身ポーズをとったりしてみるが魔法っぽいものは全く出ない。むしろ二人の冷たい視線を浴びて悲しくなる。


「魔力を自分の体に通すんですよ。魔法の名前は自分で決めれば良いです。ただの記号に過ぎませんから」



 なるほどな、自分の体に魔力を…って、ちょっと待ってくれ。

 俺の罪の魔力は確か怠惰で、その罪を償う事で魔力に。

 …それじゃあ試す事が出来ねえじゃねえか!次の小魔王戦でぶっつけ本番か?


 ほんと使い辛い力ですこと…。何が出来るのかも分かりゃしない。




「まぁ良いや、とりあえずこれで調査完了かな」


「んー、どうやって説明しましょうね」


「説明しにゃあで良いんじゃにゃ?どうせ信じてもらえにゃあでしょ」


 結局はそれなんだよな。何も居ませんでしたって言うしかないだろう。




 タダ働きか、そう落胆した俺らはみんな忘れていた。いや、あるいは目撃証言が間違っていたと思っていたのかもしれない。


 エクリプスは俺に会う為に姿を現した、おとぎ話とまで言われる存在が他の者の前に姿を晒したりなんてするだろうか。


 証言内容はこうだったはずだ。

「馬の姿をしていた」



 突然吹いてきた突風が俺らの緩んでしまった空気ごと吹き飛ばす。

 それは音も立てずにそこに居た。


 雪の様に真っ白で、ばんえい馬の様に大きな馬。

 額には真っ直ぐ伸びた円錐状の長い角。

 その場の空気が凍る程に冷ややかな寒気が背筋をなぞる。

 それと同時にずっと見ていたくもなるような美しい馬だった。


 左右4本ずつ、計8本生えた脚がその馬がただのユニコーンでは無い事を物語る。

 まるで北欧神話のスレイプニールに角が生えたような、そんな出で立ちだった。



知っているのかヒイリ!

ほんとヒイリ居ると楽で良いですね。作者が(笑)


そしてやはりユニコーン。

次回からはユニコーン戦になります。

どれだけ強いかは次の更新で!

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