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伝説の魔物使いが死んだ後の世界がマジでヤバい  作者: しら玉草
第3章:レイジングテンペスト
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ディブロス道中

新しい章が始まりました。

次の小魔王との戦いも楽しんでいただけたら嬉しく思います。


「アサヒさん、これ渡しておきますね」


 そう言ってヒイリがくれた物はジャベリンだった。ブレイドキャンサーから作った折り畳み式ジャベリン、そういえば予備があるって言ってたな。


「おー、ありがとう!これってまだあるん?」


「もちろん。マヒルさんが倒したブレイドキャンサーの鎌は全部ジャベリンに加工してもらいましたから。まだまだありますよ」



 それだけの量を収納出来るヒイリの魔術道具、ティタンポケットは正直羨ましい。ヒイリが居るだけで旅が随分と楽になった。

 ヒイリはエアコンと倉庫がセットになったような性能だからな、もうヒイリ無しの旅は考えられないくらいの快適さだ。

 高原の町ディブロスまでの道中も実に快適そのもの、涼しい風が頬を撫でる。


「いやー、ヒイリの魔法のおかげで快適だなぁ、ヒイリ様々だわー」


「え?湿地帯抜けてからは魔法解除してますよ」


「え?まじで?めっちゃ快適なんだけど」


「高原の町ディブロスが近い証拠ですね。とても住みやすい土地なんですよ。グルメで客引きしてたダイザミと違ってディブロスは普通に観光客の多い町です」


「ほー、それは少し楽しみになってきたな」


「見晴らしの良い高原にたくさんのツノウサギたち。癒されたい人が集まって来るとても良い所なんですよ。僕も仕事で立ち寄ったりします」


「あー、マヒルが言ってたアルミラージとかジャッカロープってやつ?モンスターなんじゃないの?危なくね?」


「観光客がエサくれるので人に対して警戒心薄いんですよ。お腹も満たされてるから人を襲ったりしません。襲ったらエサ貰えなくなりますしね」


 なるほど、観光地のハトみたいなものか、どこの世界も変わらねぇな。




 しばらく歩くと急勾配なうねった登り坂が続くようになりだし、吹く風も強くなる。

 人の背丈ほどの植物が山肌を深緑に色付け、赤や青や紫など様々な色の木の実がアクセントとなって視界に癒しを与えてくれた。



 しかし本当の癒しは登り坂を越えた後に訪れた。

 開けた平坦な高原に居たのはたくさんの超癒し生命体。


 白、黒、茶色のふわふわとした柔らかい毛に覆われ、ピンと立った長い耳がトレードマークのあの動物によく似たモンスター。

 そう、ウサギだ。もちろん普通のウサギでは無い、紛れもなくモンスターだ。まずサイズがやや大きい、小型犬くらいはあるだろうか。


 そしてやはり何よりも特徴的だったのが頭から生えた角だ。

 円錐状の長い一本角を生やした奴と、鹿の角みたいな二本角の奴が居た。



「ふおおおお!可愛いなおい!あれがアルミラージか?」


「一本角がアルミラージ、枝分かれした二本角がジャッカロープですよ」


「モンスターとは思えないな!」


「エサ持ってますよ。ここで売るつもりだったので、エサあげてみます?」


 ヒイリがティタンポケットからエサを取り出す。それはサイコロ状で赤みを帯びた一口サイズの物だった。

 カットしたニンジンだろうか、それともラディッシュ?


 実際はそのどちらでも無かった。エサを受け取って理解した。

 乾燥しきっておらず、しっとりとした肌触り。

 光をキラキラと反射する白い脂肪部分。


「………肉じゃねーか!」


「え?あ、はい。肉食ですから」


「世知辛いわー、あの角が凶器に見えてきたわー」


 実際凶器だろうしな。少し尻込みした俺はエサをヒイリに返す事にした。

 俺は基本的には普通の人間だからな、間違って攻撃されでもしたら即死もあり得る。



「アサヒ、そのエサ私があげてきて良いと?」


 そう言われ振り返ると、そこには目を輝かせたマヒルがいた。


「お、おお。良いけど気をつけてな。角で刺されるかもしれないぞ」


「大丈夫、むしろライオルトの里ではツノウサギは…、いや、何でもにゃあよ、あははは」



 笑って誤魔化した後マヒルはエサを持ってツノウサギたちの元へ元気に駆け寄っていく。

 アルミラージもジャッカロープも一斉にマヒルの方を向いて微動だにしない。

 エサに気付いたか?いや、この反応は違うぞ。


 マヒルがエサをあげようと少し屈んだ瞬間、ツノウサギたちは蜘蛛の子を散らす様に一瞬にして散り散りに走り去っていく。

 みな一様にガチの走りだ、様子見ながら距離を取るのとは訳が違う。視界から消えるまでノンストップで駆け抜けて行ってしまった。


 そこには悲しそうな顔で佇むマヒルだけが残されていた。

 そして俯きながらこっちに戻ってくる。その足取りは元気の欠片も無くなっていた。




「ヒイリの嘘つきー!ここのツノウサギは警戒心薄いって言ってたじゃにゃあかぁ!」


「あはは、確かライオルト族って基本的には肉食ですよね。肉なら何でも食べるって聞いてますよ?ここのツノウサギも本能が目覚めたのかもしれませんね」


「私はツノウサギは食べてにゃあよ!」



 つまりは動物園で例えるとウサギのふれあいコーナーにライオン入れた感じか、マヒルには悪いけどそりゃ逃げるわ。



 ヒイリが言うにはツノウサギはかなり下級のモンスターで、突進さえ喰らわなければ特に危ない事は無いらしい。スライムよりもやや強いくらいのポジションだとか。

 正面に立たない、それだけ守れば一般人でも勝てる。それにここのツノウサギには人と争うような闘争本能が無いときたものだからそれはもはや角の生えた肉食うだけのただの大きなウサギだと言ってしまっても差し支えないだろう。


 そこにマヒルのような強い大型の肉食獣が現れたら…。


「アサヒ?何か失礼な事考えてるんじゃにゃあか?」


「ふへぇ!?い、いや、…あ!見えてきたよ!あれディブロスじゃないか?」


 危ない危ない、マヒルは感が鋭いなぁ。


「むぅ~、誤魔化してにゃあ?」



 足早に町に向かう俺、少しだけむくれながら付いてくるマヒル、そんな俺らをほほ笑みながら見つめるヒイリ。


 3人はディブロスへと足を踏み入れた。



さぁ、次は高原の町ディブロスに入ります。

町の名前の付け方は気にしないでください。

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