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VSカルキノスその後

今回こそラブコメ回でございます。

健全でございます、ございます。


 カルキノスを倒しダイザミの町に戻ってきた俺たちを迎えてくれたのは…、俺たちなんかには興味無さげな普通の町の喧騒だった。


 英雄として扱われる訳でも無ければ財源を潰した悪者でも無い。

 それもそうだろう、カルキノス討伐の依頼なんて無かったんだから、俺たちがカルキノスを討伐しに行った事を知る者はいない。


 そもそも町人からしたらカルキノスが消えたのは泥沼に潜った昨日だ。

 更に言えば小魔王を倒せる冒険者が居るだなんて普通は信じない。

 俺が倒して来たぜ!なんて言ったところで相手にはされないだろう。



 それに今はダイザミの町人たちはそれどころでは無い。

 カルキノスが消えた、観光のシンボルが消えてしまったのだ。


 脅威が無くなればデッドリーポルカドットはブレイドキャンサーを狙って再びやって来るだろう。そしたらブレイドキャンサーの数が減ってしまう。

 ブレイドキャンサーで栄えたこの町の住人からしたら一大事だ。



 流石に町人たちには悪い事をしたかもしれない。

 そう思っていたのだがヒイリはそんな町の様子を満足気に眺めていた。


「うん、良い感じですね」


「え?何言ってんの?ヒイリってドSなの?」


 困っている人を見て嬉しそうなヒイリ、意外な暗黒面。


「えええ!?ち、違いますよ!ただ、商人として稼ぎ時だな、と。さっそくアサヒさんのパーティに入った恩恵が得られそうです」


「おう?どういうこと?」


「ふふ、僕は少しやることが出来たので先に宿に戻っていてください」


「そうか、まぁ、俺も体が限界だからそうさせてもらうわ」


「はい、ごゆっくり」



 そう言うとヒイリはレストラン街へと消えていってしまった。

 何がしたいのかさっぱり分からない。



「マヒル、俺たちは宿に行こうぜ。もう疲れちゃった」


「…だ。そうするに。アサヒは疲れとおよね…」


「ん?元気無いね?」


「私今回ただの雑魚処理係だったに。肝心の小魔王には一撃も入れてにゃあのよ…」


 ああ、なるほど。そういう事か。マヒルは戦闘種族なんだからそりゃ気にするよな。

 闘神と謳われるライオルト族が戦闘中見学してました、なんて、マヒルからしたら落ち込むに足る失態なのだろう。


 ここはちゃんと言わねばなるまい、俺はマヒルが居るから頑張れるんだと。

 …しかし、流石に町中で口説く勇気は無い。


「マヒル、宿に行こう。大事な話があるんだ」


「にゃ!?私をパーティから外す話!?ヒイリが居れば私はいらにゃあか!?」


「違うよ!…本当に大事な話なんだ」


 マヒルの顔をじっと見つめる。…ああ、しょげてる顔も可愛いなぁ。…って、そうじゃない!真剣な想いを伝えるんだ。


「わ、分かったに…。私も覚悟を決める!」


 あ、これ絶対伝わって無いな。




 ◇  ◇




「で、さっそくだけど…」


 宿に着いた俺はベッドに腰かけた。ベッドのバネが心地良く体を押し返す。

 流石にもう限界、背中痛い、血は止まってるけど完治してる訳じゃあ無いからな。

 大事な話だと言った手前で申し訳ないがベッドでくつろがせてもらう。


「にゃ!?そういうこと?、えっと、私獣人やに…、そういうのは…」


 マヒルの顔が赤い、これ絶対何か勘違いしてるな。ちゃんと言わないと。



「俺はね、マヒルが仲間で良かったと思ってるんだよ?」


「にゃにゃ!?…うー、仲間でいたければ…ってこと?、でもアサヒなら私…」


「んん!?マヒル?…な、何を……ひゃああぁぁ」


 俺が腰かけたベッドにマヒルも乗ってくる。…と言うか押し倒された。


「う、うあぁ…、あ、あの?マヒル…さん?」


「あ、鎧…着けたままだったに…」


 マヒルが外した革製の鎧がベッドの下に落ちて重い音が鳴る。

 普通ベッドシーンで服脱いだ時の音って「スルッ」とか「パサッ」とかだよね?鎧だからしょうがないけど「ガチャッ」「バチンッ」「ドサッ」って。

 いやいや、そんな事考えてる場合じゃなかったわ!ちょっとした現実逃避だわ!

 鎧を外して肌着になったマヒルはモフモフで可愛い、しかしその肌着にまで手をかけたマヒルはアダルティな空気が俺の脳を揺さぶり…。


 ダメ!これダメなやつ!脱ぐ前になんとかマヒルに冷静になってもらわないと!



「俺は、何もするつもり無いぞ…」


「にゃああ!?わ、私経験にゃあのに、ど、とうしたら良いと?」


 か、勘違い加速してるー!なんか俺女の子に奉仕させる悪い奴みたいになってるー!




 カチャッ、キイィ…。


 そんな時、突然ドアが開く音が聞こえて心臓が跳び跳ねる。


「アサヒさーん、ただいま戻りま………あ!ご、ごめんなさい!」


 バターン!


 慌てたヒイリが勢いよくドアを閉めた。




 俺とマヒルはお互いに顔を見合せ、不意の出来事に驚いた事で逆に冷静さを取り戻す。


「あの…、本当にこういうつもりは無くてですね、マヒルがカルキノスの攻撃を教えてくれたから俺も死なずに済んだんだよ、的なことが、その、言いたくてですね」


 そしてあわよくば告白めいたことも言いたかった。


「にゃ!?…なんか、ごめんに、そういえば私お風呂も入らずこんな…あ、ああああああぁぁぁぁ、もうダメ…、恥ずかしくてアサヒの顔見れにゃあよ」


「いや!これ自体は非常に嬉しかったであります!」


「にゃにゃあ!?」




 コンコン……コン。


 部屋の扉をノックする音が聞こえてくる、ヒイリだろうか。


「あの、30分…いや、1時間くらい席を外す感じで良いでしょうか?」


「違うから!」

「ちがぁにゃ!」




 ◇  ◇




 改めてヒイリを部屋に入れて3人ともギクシャクしながらも今後の話をすることにした。



「そういえばヒイリはさっき町で何してたん?」


「ああ、ブレイドキャンサーを売りに行ってたんですよ。マヒルさんがたくさん倒してくれましたからね。みなさん今のうちに確保したくて必死だったのですぐ売れました」


 そうとう良い値で売れたのだろう、ヒイリはほくほくとした笑顔を見せた。


「ははは、ヒイリも悪よのう。混乱の原因俺らなのに」


 しかしどうやらそれだけでは無いらしい、ヒイリが含みのある笑いを見せた。


「んふふー、ブレイドキャンサーを売った後にですねぇ。デッドリーポルカドットを情報料込みで売り込みました」


「ん?どういうこと?」


「デッドリーポルカドットの身をレストランのオーナー達に試食させてきたんですよ」


「おお、じゃあそれも良い値で売れたんだな、やるじゃん」


「いえいえ、一番高値で売れたのは情報料です。デッドリーポルカドットには毒がありますからね。食べれる事を知ったとしてもみんな怖くてなかなか手を出しません。そこで安全な食べ方を教えますよって言ったらみなさん喜んで情報料払いました」


「おいおい、足食べろって言うだけだろ?」


「はい、みなさん拍子抜けしてました」


「怒られなかったのか?」


「あはは、商人が商売で怒ったりしませんよ。してやられたのならそれは勉強料です。まぁ、実際はブレイドキャンサーに代わる新しい食材の情報でみなさん満足してたので笑って許してくれた感じだったりしますけどね」


「俺には分かんねぇ世界だな」


 俺なら金返せって怒ってるわ。




「ついでに小魔王の情報も仕入れてきました。高原の町ディブロス周辺にそれっぽいのが居たそうです。断定は出来ていませんが」


「ディブロス周辺のモンスターっていうと…アルミラージじゃにゃあか?あとジャッカロープ!ツノウサギは見た目が可愛いから人気あるんに」


 そう言うマヒルは少し嬉しそうだった。やはり女の子だなぁ。


「それが…、確かに角は一角でアルミラージに似てたらしいんですが、角も体ももっと大きかったそうです。人よりも全然大きかったらしいのでアルミラージでは無いですね。しかも驚くほど速くて一瞬しか見れなかったとか」




「それが…、なんで小魔王だと?」


「…馬みたいな姿だったらしいんですよ」


「一角で馬…、それって…」


「ユニコーン…ですよね?たぶん」


 ユニコーン、その名前は流石に覚えている。覚えていないと危険だからだ。

 マヒルに教えてもらった事がある。魔物使いの勇者が魔王を倒した時の最終メンバー。

 小魔王たちの中でも別格の、魔王とさえ戦えるモンスター。



「いや…流石にそれは…」


「どうしましょうか?行くだけ行ってみます?」


「魔物使いの勇者の最終メンバーか、避けては通れないよなぁ」


 マヒルの目標だって勇者の最終メンバーのうちの一体、レッドドラゴンだ。

 どれほどの強さなのか、見ておいて方が良い。



「よし、次の目的地はディブロスだ。ただし危なくなったらすぐに撤退する。それで良いか?」


「だ。陸戦なら私の出番!次こそ活躍するに」


「分かりました。僕も異論はありません。命大事に!慎重に行きましょう」




これにて第2章終了です。

第2章まで読んでくれた方々に感謝でございます。

次から第3章。ヤバい相手になる予感。

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