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VSデッドリーポルカドット

今回はタコ戦です。

雑魚敵だし簡単にまとめようと思いましたがそこそこ長めになりました。


 ……… …… …


 ……… ……… …… …



 毒を持つモンスター、デッドリーポルカドットを探して再び湿地帯を歩くこととなった。



「アウラポッド!」


 ヒイリの魔法によって体の周りに爽やかなそよ風が吹く、湿地帯特有のジメジメとした空気や臭いから解放されて実に清々しい。

 ヒイリが居ればエアコン必要無いな、一家に一台ヒイリが欲しいくらいだ。



 ヒイリの魔法【アウラポッド】、体の周りに空調管理された空間を作り出してくれる。

 ヒイリが言うには空気で出来たカプセルのようなものらしい。



「にゃー、ヒイリの魔法めっちゃ嬉しいに、毛皮に湿気がまとわり付かにゃあの嬉しー」


「役に立てて僕も嬉しいです。自分の体に適さない空間ってそれだけで体力も精神力も消耗しますからね。僕が出来るのは支援だけですので頑張りますよ」


 なるほど、ゲームに例えるとヒイリの魔法は大気によるバッドステータスを回避出来るのか。暑さ無効と寒さ無効がセットでお得な感じ。今回は湿気無効か?



「あれ?ヒイリって弓使えるって言ってなかったか?」


「そんなの護身用ですよー、アサヒさんの投擲に比べたら豆鉄砲もいいとこです」


 そう言うとヒイリは二股に別れた枝の様な物を取り出した。

 別れた枝に付けられたゴム紐…、これは見たことあるぞ。というか、それ弓じゃなくね?

 スリングショットだな、こっちだと弓の亜種みたいな扱いなのか。



「あ、そうだ。武器と言えば、アサヒさんにこれ渡そうと思ってたんですよ」


 ヒイリがティタンポケットから取り出したのは青みを帯びた有機的な造形のジャベリン。

 この造形には覚えがある。ブレイドキャンサーの鎌だ。


「ブレイドキャンサーの鎌を加工してジャベリンにしてもらいました」


 ヒイリからジャベリンを受け取るとまず目に付いたのが鎌、というか鋏部分の関節だ、可動域が金具で補強されていて折り畳む事が出来るようになっていた。

 これならコンパクトに持ち運べてパルクールのスキルの邪魔にならない。

 流石ヒイリ、痒い所に手が届く。


「おお!これでやっと丸太から卒業できる!ヒイリには世話になりっぱなしだなぁ」



「紐も付けときましたので背中にでも背負ってください、ちなみに予備もありますので気兼ね無く投げて良いですよ」


「ちなみに…、おいくらほど?俺は金無いぞ?」


「大丈夫ですよ、お金は僕が出しますから。その代わり…」


「ああ、小魔王の素材だな。金になりそうなものはヒイリに譲れば良いんだろ?」


「高値で売ってみせますよ」


「はは、頼もしいことで」




 道中ブレイドキャンサーに出くわすがマヒルが蹴散らしてくれるため実に楽だ。

 やることが無いんでヒイリと話しながら歩いている。




 ふと、マヒルがこっちを羨ましそうに見つめてくる。流石に交替するべきだろうか。

 まぁ、俺が戦っても時間かかるだけだろうけど。


「ごめんごめん、マヒル疲れた?」


「…そうじゃにゃあよ。ヒイリばかりアサヒと…」


「へ?」


「何でもにゃあし!」


 そう言い捨てるとマヒルは沼から現れたブレイドキャンサーを鎌ごと粉砕する、凄まじい気迫だ。攻撃力上がってませんかね?





 そうしてしばらく歩くとブレイドキャンサーの姿をほとんど見なくなった。


「デッドリーポルカドットってどういうとこに潜んでるん?そろそろ棲息域じゃねぇの?」


「そうですね。デッドリーポルカドットも沼に居るはずですよ」


「ほーん、なるほどねぇ」



 沼を覗き込むが濁っていてよく分からない、青っぽい藻がユラユラと揺れているだけだ。

 斑点模様のように疎らに生えた藻が水中を移動して…、いや待て、あれ藻じゃねぇな。


「アサヒ!沼から離れて!」


「おう!」


 流石に分かった、あれがデッドリーポルカドットなのだろう。

 同じ失態を繰り返す訳にはいかない。俺は足に力を入れると素早く後退した。

 …つもりだったのだが、足は宙に浮いており力が入らない。



 足にまとわりつくヌメヌメとした一本の触手によって俺の体は空中に持ち上げられてしまっていた。吸盤も張り付いており取れる気がしない。


 その触手には青い水玉模様、なるほど、さっき見えていたのはこの模様だったのか。

 なんか…、あれだな、元の世界で似たようなの見たことあるわ、確かヒョウモンダコだったか、フグ毒持ってるタコにそっくりだ。

 しかし大きさは比較にならないだろう、触手一本だけでアナコンダみたいなサイズだ。




「ちょっ!まってくれ!沼に引き込まれる!」


 やはり俺を食べる気か!たぶん美味しく無いから勘弁してくれ!


 沼の中にデッドリーポルカドットの頭部がうっすらと浮かんでいるのが見えた、咬まれたら即死確定な大きさだという事だけは間違い無いだろう。



 しかし俺はそんなに焦ってはいない、マヒルが既に斧を振りかぶっているのが見えたから。




「アサヒをぉぉ!離せぇぇぇ!」


 マヒルの戦斧がデッドリーポルカドットの触手を強打すると触手は大きく弾んだ。

 そう、弾むだけで切断するには至っていない、マヒルの斧は切断するための武器というよりは叩き割るための武器だ。

 デッドリーポルカドットはタコのモンスター、その柔軟な体は斧では決定打には至らない。


 俺は依然として捕まれたままだった。そんな状態で大きく揺らされるものだから正直気持ち悪い、酔ってしまいそうだ。


「ぉぉぉぉ…、うえぇぇ……」


 いや、マジで吐きそう。




 そんななか、ふと触手の拘束が緩んだのを感じた。マヒルが何かやったのか?

 いや、どうやらマヒルでは無さそうだ。ヒイリの手が緑色の光を放っている。



「あれは…、アウラポッド?」


 俺には既にかかっているのに何故?そういえば俺に纏っているアウラポッドの風が強く、そして暖かくなっていく。

 アウラポッドの重ね掛け?この風は覚えがある、ドライヤーだ。


 そうか、ヒイリの魔法は空調管理だから乾燥を強める事も出来るのか。…いや、助かりはしたけどこれ俺も辛いわ。肌が水分を失いヒリヒリしてくる。



 乾燥を嫌がりデッドリーポルカドットはたまらず俺を解放した。

 空中に放り出されたが持ち前の運動神経で華麗に着地する。

 …嘘ですごめんなさい、パルクールのスキルのおかげです。


 足から膝へと衝撃を逃がし、転がる事で衝撃を分散しきる。

 もちろん服は泥まみれだ。




「アサヒさん!大丈夫ですか!?」


「ああ、大丈夫。もう大丈夫だから乾燥弱めて」


「あ、すみません!モンスターの触手を狙うのは難しくて」


「いや、助かったよ」


 空間指定じゃなく対象指定なのか。まぁ、そりゃそうだな、そうじゃないと動き回る俺やマヒルにアウラポッドを掛け続けるのは至難の業だ。




「にゃああ!今のは私が助ける場面だったのにぃ!」


 マヒルが怒りを込めて触手を更に強打する。

 沼の水がせり上がり、青い水玉模様のオオダコがその姿を現した。

 その胴体はブレイドキャンサーよりやや小さい、しかし8本の長い触手のせいかとても巨大に、そして醜悪に見える。



 マヒルはやる気満々だが少々相性が悪い相手かもしれない。

 触手と戯れる女の子という定番を見せてあげられないのは悪いがここは俺の出番だ。




 ジャベリンを展開、強く握り、絞り込む。

 左足を大きく踏み込み体を開く。


「投げるの久しぶりな気がすんなぁ、いっくぞー!うおらぁぁ!!」


 俺の右手から放たれたジャベリンは空気を切り裂き真っ直ぐに飛んで行く。

 思えばこっちに来てからちゃんとしたジャベリンを投げたのは初めてだったな。

 全くブレ無い、これなら丸太とは比較にならないほどの距離と精度を出せる気がする。



 タコの絞め方なんてみんな同じだ、眉間に一発ぶちこめば良いのさ。

 俺の投げたジャベリンはデッドリーポルカドットの眉間に深く突き刺さる。


 元気だった大ダコは一瞬ビクッとした後に固まり動かなくなった。



「ストラーイク」


「アサヒさんお見事です」


「むー、私が倒したかったに…」




 さて、これで毒ゲットだ。あとはこのデッドリーポルカドットを解体したら任務完了。



「…そう言えば、このタコは食わねぇの?」


 我が母国、日本ならお馴染みの食材だ。コリコリとした弾力のある食感が堪らない。


「え!?正気ですか?こんなもの食べようと思う人なんていませんよ!」


 ヒイリは全否定だ、まぁ、タコは悪魔の魚とか言われたり邪神のモチーフにされたりするからな、気持ちは分からないでも無い。


「じゃあこいつって今まで利用価値ほとんど無かったのか?」


「そうですね、頑丈なくちばしと毒袋に商品価値がありますが…けっきょく処分費用もかかるので二束三文です」



 俺はタコに刺したジャベリンを抜き取ると足の一部を切断して綺麗な身を取り出す。

 そしておもむろに自分の口に放り込み咀嚼そしゃくする。

 強い弾力と噛めば噛むほどに口内に広がる旨味がこの世界でもタコの美味しさが健在であることを物語ってくれた。



「ちょっ!アサヒさん!?そんなの食べて大丈夫なんですか?」


「大丈夫だよ、タコの毒は噛まれた時に打ち込まれるものだから、足に毒は無いよ」


 元の世界のヒョウモンダコの知識だが、まぁ、体の構造は似たようなもんだろ。


「いや、そういう事ではなくて…」


「まぁ、食ってみなよー」



 俺はデッドリーポルカドットの足の一部を切り取りヒイリに渡したがヒイリはなかなか口には入れない。まぁ、そりゃそうだよな。


「美味いぞー?」


「うう…」


「ほれほれ、ガブッといっちゃいなよ」


 目に涙がうっすらとうかぶヒイリ、ああ、あかん、可愛いわ。女の子にしか見えない。何かに目覚めてしまいそうだ。



「すまんすまん、無理にとは言わないさ」


「いえ!これも新しい味への探求です!僕、行きます!」


 口にデッドリーポルカドットの身を入れたヒイリが必死に咀嚼する。


「うう…、なんかゴムみたいです」


「噛み続けてみて」


「うう…、…んん?おお…、あれ?これは…おおおお」


「美味いだろ?」


「はい!これは…売れますよ!」


 さっきまで生娘のようだったヒイリの表情が商人の顔つきへと変わる。

 いやぁ、実に頼もしいわ…、うちのパーティの財政難はヒイリに任せれば解決しそうだ。



アサヒがようやくジャベリンを投げました!

スキルがジャベリンマスタリーなのに今まで矢を投げたり丸太を投げたり…、何してんだって感じでしたが、ようやくジャベリン投げれました。


さぁ、次はいよいよカルキノスへ再戦をしかけますよ!

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