アサヒの魔力
間が空いてしまい申し訳ありません!
ちゃんと少しずつでも書いております、今回はアサヒの魔力が明らかになります。
「アサヒさん…女神様と知り合いだったんですか…」
口を開いたのはヒイリだった、マヒルはまだ思考がおいついていない様子だ。
「え?ああ、アレを女神と呼んでも良いのならな、会話だけならいつでも出来るくらいには知り合いだよ。何?あいつ有名なの?」
「僕も文献でしか…、アルミサエルって言っていたのでふと思い出しまして、新たな命を守護する慈悲深い女神だと…」
「ああ、じゃあそれ嘘だな、その文献は破棄した方が良い」
そんなデタラメを書いた奴は罰金を払うべきだ。俺にな。
「あはは、大事な書物なので怒られちゃいますよ」
まぁ、それはそれとして、服をもらえたのは正直有り難い。
アーミャもたまには良い事をするじゃないか。
たしか体力と自己治癒…だったかな、自己治癒ならエリクサーの時みたいなエグい強制回復にはならないだろう、たぶん…。
とは思いつつもやはり不安がよぎる、…少し性能を試した方が良いかもしれない。
「ヒイリ、何かナイフとか無い?」
「ありますよ、はいどうぞ」
ヒイリはティタンポケットから飾り気の無い小型のナイフを取り出すと俺に渡してくる。
なんか、ヒイリ便利だな。何でも入る不思議なポーチからアイテムが次々と…、ああ、だめだ、青くて丸々としたあのロボットを思い出してしまう。
「アサヒさん?どうしました?」
「いや!何でもないよ!はははは」
俺はヒイリから受け取ったナイフを自分の左腕にあてがう。あー、痛いのは嫌だなぁ。
「アサヒさん!?何してるんですか!?」
「にゃ!?アサヒ何しとお!?」
ヒイリの声に驚いたマヒルが俺の行動を止めようと飛び付いてきた。
…いや、うん。ナイフあてがってる時に飛び付かれたら…ね。
「うおああ!いてえええええ!!」
飛び付かれた拍子にナイフが滑り、思っていた以上に深く切ってしまったようだ。
床にポタポタと血が染みていく。
「にゃあああ!アサヒー!!」
「いや、大丈夫だ!元々この服の能力を試そうとしてたんだから!」
俺を含めマヒルとヒイリも真剣な眼差しで傷口を見つめる。
…おかしい、治っていく気配がない。腕はズキズキと痛いままだし血も止まらない。
「アサヒさん…、それ魔術武装ですよね?魔力通さないといけないのでは?」
「はっ!これも一応魔術武装なのか!え、え、え、魔力通すってどうやんの!?」
「にゃああ!ヒイリ!とりあえず包帯!あと回復薬!」
「あ、はい!すぐに用意します!」
………。
ヒイリに止血してもらい腕には包帯を巻いてもらった。そして回復薬を飲みながら今に至る。ヒイリに対して借りがどんどん増えていくな。
「けっきょく魔力使えないとこの装備も効果を発揮しないのかよ、アーミャは俺にも魔力があるって言ってたけど、使い方が分かんないじゃ意味ねぇな」
「アサヒは四大元素の魔力は持ってにゃあ言うとったね、そんな人初めて見たに」
「その四大元素がどうのってやつもよく分かんねぇや。単純に火、水、風、土とかじゃ無さそうだしな。分からん事だらけだわ」
ゲームでよく聞くから火、水、土、風の属性ってことは分かるけど、マヒルは大地の魔力で質量の増加した武器を持ってるし、俺のゲーム知識とはどこか違う気がする。
「だ。それで合っとおよ。その四つ。だけどそれを直接出せるのは魔法の領域にゃね、魔術は…、えっと、な、こー、ぎゅーっと固めるイメージで…」
だめだ、マヒルじゃ感覚的過ぎて分からない。
「ヒイリ、説明頼む」
「あはは、じゃあまずはマヒルさんの大地の魔力について。アサヒさんは今土と言いましたが実際はもっと幅広いので大地と呼ばれます。そして魔力というのは方向性を持ったただの力に過ぎません。大地の魔力は幾重にも重なり凝固します。これが大地の魔術武装で質量が増加する仕組みです。大地の魔力を通す事で同調し自在に操る事が出来ます」
「なるほど、分かりやすい。流石ヒイリだな」
「えへへ、じゃあ残りの3つも力の方向性が違うだけなので簡単に説明しますね」
……… ……… …… …
聞いた事をざっくりまとめると…。
凝縮されて固まるのが大地の魔力。
拡散されて広がるのが大気の魔力。
放出、あるいは直接エネルギーに変換されるのが火の魔力。
吸収し内包するのが水の魔力。
武装も含め魔術道具はそれらの特性を持った力を発揮するものらしい。
そして魔法というのはその魔力で自然の力に干渉し使役するといった流れになるのだが、これはマヒルも言っていた通り生まれながらの素質によるから俺には関係無い。
「で、けっきょく俺の魔力がなんなのか分からないという振り出しに戻るわけだな」
「あの…、アサヒさんはアルミサエル様とお話出来るんですよね?」
「あ、ああ。傍目には独り言に見えるけどな」
「ならアルミサエル様に直接聞けば良いのでは?」
「………あ」
そりゃそうだ、随分と間抜けな話だった。アーミャなら知ってるんだから聞けば良いだけの話だ。姿は消したけど会話だけならいつでも出来るってことを忘れていた。
「おーい、アーミャ、もう一回良いかー?」
『もー、なんなのー、さっき別れたとこなのにー』
アーミャの声が直接頭の中に聞こえてくる、良かった、ちゃんと返事返ってきた。
「いやいや、俺の魔力だよ。使い方教えろよ」
『…あ、教えてなかったっけ。人間は大罪を持ってるって言ったと思うんだけど?』
「あー?ああ、それは聞いた」
『そっかー、それだけじゃ分からないかー』
「当たり前だろ!」
『アサヒの元の世界の人間が持つ魔力、それは罪の力だよ?』
「罪?なんかパッとしねぇけど、それが俺の属性なん?」
『そだよー。七つある大罪のうちの一つが色濃く出るから、それが魔力の源になるよ』
「憤怒、傲慢、怠惰、色欲、物欲、暴食、嫉妬。だったか?」
『お、言い方は色々あるけどその通り。アサヒ意外と賢いねー』
まあ、ただのオタク知識だけどな。
「で、それがどう魔力に繋がるんだよ」
『元の世界での罪をこの世界で償えば魔力に変換されるよ。身を削り燃焼する魔力、それが罪の魔力。ど?かっこよくない?』
「む、確かに中二臭くてなかなかに俺好みな…って、俺の罪って何だ?」
『分かるでしょ?怠惰だよ?流されるままに生きて、家でゲームばかりやって、そのゲームすらただ遊ぶだけで情熱は無い。自分を見失いゲームで時間を貪る。怠惰以外の何ものでも無いと思うのだけど反論はあるー?』
「ぐぅ…」
くそ、性悪天使にこんな正論言われるなんて…。
『あはははー、ぐぅの音は出るんだねー。まぁ頑張ってよ。この世界で本気になればなるほど魔力が出るからさー。実際この世界に来てからだいぶ真剣になったみたいだし?むしろ色欲の方が上昇中なんじゃない?んふふー』
「う、うるせぇ!俺は一途で純情だ!もう通信終わり!じゃあな!」
『はいはーい、カルキノス戦頑張ってねー』
はぁ…、アーミャとの会話は無駄に疲れる。
「まぁ、魔力の使い方は分かったよ」
「あはは、お疲れ様です」
ヒイリにはアーミャの声は聞こえてはいないはずだが俺の声だけ聞いて察したのだろう。ほんとよく出来た子だよ、歳上だけどな。
「で、やっと本題に入れるわけだけど、カルキノスとの再戦は早い方が良いと思うんだよ。毒針を打ち込む事に成功したんだ」
毒針はヒイリからもらったものだ、どれだけの効果があるか聞いておきたい。
「え!凄いじゃないですか!あの甲殻によく刺さりましたね!」
「刺したのは関節だよ、でさ、あの毒ってどれくらい効果があるものなんだ?」
「え?何の毒入れたんですか?」
「え?」
「え?」
……え?まさか。
「あの毒針、毒…入って無いの?」
「新品ですから…」
「マジか」
今頃毒で弱ってると思ってたのに、完全に想定外だ。
毒針使うなら毒の採取から始めないといけないのか、それならなるべくあの蟹に効きそうな毒を手に入れたいところではあるな。
ん?そう言えばそんな話どこかで…、確か…。
「なぁ、デッドリーポルカドットって今どこに居るんだ?」
ブレイドキャンサーの天敵、デッドリーポルカドット。
カルキノスはブレイドキャンサーの進化系なのだからデッドリーポルカドットの毒は効くはずだ。俺ならカルキノスにその毒を打ち込む事が出来る。
「あー、棲みかを追われただけなので、ブレイドキャンサーの縄張りから外れれば居ると思いますが…、もしかして、狩りに行きます?」
「ああ、それが一番有効だと思うんだよ」
小さい者が大きい者を倒す為の常套手段、それは正に毒だからな。
私は物欲かなー、いや、最近は控えておりますよ!
さておき、次はタコ狩りです。
カルキノス戦が長引いていますのでデッドリーポルカドットは短めでいきましょうかね。まぁ、小魔王では無いので元々長引く相手ではありませんが。




