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アルミサエル

遅くなりました!

今回はちょっと説明文が重たいかもしれません。

あの人の再登場です。


「さて、これからどうするか、だけど」


 かなり危険だがカルキノスの攻略は可能かもしれない。大型モンスターの方が俺の能力を活かす事が出来るのはやってみて分かった。

 関節等の比較的柔らかい部位なら俺の腕力でも破壊可能だ。毒針打ち込んだししばらくは弱ってるだろう、追い打ちかけるなら早い方が良い。


 しかし…カルキノスを倒す…いや、殺す理由は特に無い。なのに…カルキノスを放置することに抵抗を感じてしまう自分がいる。



「……とりあえず服が欲しいな」


 俺の唯一持っていた服は破けてしまった、今は半裸だ、男の半裸とか誰が得すんだ。俺がイケメンなら需要あったか?フツメンで悪かったな。


「ああ、それなら僕が用意しますよ、色々取り揃えてます。実は武器も見繕ってきてますので後で披露しますね」


 ヒイリは本当に出来る子ですこと、流石は商人、手際が良い。


「それなら軽装でなるべく防御力あるやつねぇかな?流石に普通の敵の攻撃でこんな醜態晒してたら命がいくつあっても足りねぇよ」


「ブレイドキャンサーは一般的な冒険者なら3人以上で戦う事を推奨されているモンスターですよ、決して雑魚では無いです。それは仕方ないですよ」


「そうなん?マヒルと居ると感覚狂うなぁ…」


「でもまぁ、ご要望の品はいくつかありますよ。軽くて頑丈っていうのは最も望まれる物ですから。でも小魔王と戦うとなると普通の品では心許ないですね。魔力のこもった物にしましょう、アサヒさんの魔力属性って何ですか?」


 つまりは魔術武装という訳か、なるほどなるほど、ファンタジーなら王道展開だね。

 でもね、俺には起動できる魔術道具なんて無いのだよ。何故なら。


「………


「…はい?」


「無属性だよ!魔力ランクFだ!」


 それを聞いたヒイリは信じられないとでも言いたげな表情をしていた、そんなに酷いのか?流石に悲しくなってくるぞ。


「この世界に生まれたからには四大元素のいずれかの祝福を受けているはずですよ。魔力ランクFなんて…まだ魔力が目覚めて無いだけのはずです」


「じゃあ俺もいつかは魔術道具使えるようになるのか!?」


 それは楽しみだ、俺はいったい何属性なのだろうか。

 しかし、そんな俺のワクワクはいとも簡単に壊されることとなる。

 突然現れた来訪者によって…。



「いやいや、何言ってるのさー、アサヒにぶーい」


 突然聞こえてきた知らない声、いや、俺はこの声を知っている。だが肉声を聞くのはとても久しぶりのように感じた。

 いつの間にか部屋に居た色素の薄い女の子、背中には天使の羽が生えている。


「アーミャ!?なんで!」


 アーミャ、俺をこの世界に連れてきた張本人、なんでここに居るんだ?最低限の干渉しか出来ないと自分で言ってたはずなのに。


「その可愛いエルフが言ったじゃーん、この世界に生まれたからにはってさー、アサヒ自分がどこで生まれたか忘れたのー?ボケたのー?」


「ボケてねーよ!いや俺が言いたいのはそこじゃなくて、って、でもちょっと待ってくれ、じゃあ俺はけっきょく今後も魔力ねぇの!?」


 俺が生まれたのはこのファンタジー世界ではない、地球の日本だ。

 せっかく異世界まで来たというのに、念願の魔力的な力は使えないらしい。


「いや…うーん、正確にはそれは少し違うんだけどね。まぁでも安心しなよー。代わりに私の祝福受けてるからさー」


「なんか恩恵あったようには思えないんだが!?」


「シークレットスキル【アルミサエルの祝福Lv1】、効果1、この世界に来た者にスキルを与える。2、アフターサービスとしてのコールセンターサービス。3、私との約束を破る事に抵抗を感じる。この3つだよ」


「3つ目呪いじゃねぇーか!ふざけんな!」


 そうか、俺がカルキノスを無視できないのこいつの呪いのせいか!この似非天使いつも悪条件だけ後出ししやがる。普通こういう契約って条件全部掲示するもんじゃねぇの!?


「やーん、怒らないでー、んふふ」


 いたずらっ子みたいな笑顔で俺の頬っぺたを突っついてくるアーミャさん、やめて、可愛過ぎる、俺の怒りが一瞬でクールダウンして別の何かがヒートアップしちゃう。




 そんな時、アーミャをじっと見つめていたヒイリが口を開いた。


「アルミサエル…様…、新たな命の守護者、子宮の女神…」


「ヒイリ、アーミャの事知ってんの?ってか女神?天使じゃねぇの?」


 それに答えたのはヒイリでは無くアーミャ本人だった。っていうかアーミャってニックネームだったのかよ。アルミサエル、なんかアニメで聞いた事あんな。


「この世界自然崇拝だからさー、天使っていう概念がちょっと違うの。あと子宮の女神って言うのもやめて欲しいかなー、まだ処女なんですけどー?」


「いや、そんな情報はいらねぇよ」


「えー、じゃあアサヒに私の初めてあげようかー?」


「なななななんだってぇえええ!?」


 いや、まてまてまてまて、俺にはマヒルがだなぁ、いやでもアーミャは性格悪いけど可愛さは一級品だぞ、どどどどどどうすれば!


「あははは、アサヒきもーい!嘘に決まってんじゃん?そっちの獣人の子が睨んでるぞー」


「は!?いや!違うんですマヒル様!」


「やっぱりアサヒは華奢な可愛い子が好きなんにゃね…」


「あんな性悪天使好みじゃございません!」


 これは心の奥底から本心である。アーミャの性格は好きになれない。



「だからぁ、こっちの世界では女神だってばー。昔の事だけど転生者の守護なんてやってたらおかしな二つ名付いちゃってさー、最近は転生は面倒臭いから適当にあしらって転移させるようにして……おっと、今のは聞かなかった事にしといてネ☆」


「いや無理だから!流石に無理!虫とか昆虫とか言ってたの嘘だったのかよ!これは誤魔化されてやれないからな!」


「…チッ、えーと、汝は大怪我を負ってまで私との約束を守ろうとしてくれましたね、その忠誠に応えて加護を与えにきました」


「今舌打ちしたよな!?丁寧に取り繕うとしてもごまかされないぞ!」


 そもそもおまえの為じゃねーよ!しかしこれは言わないでおく、なんかもらえそうだし。


「もー!アサヒは面倒臭いなー!じゃあ祝福いらない?たった今話してたアサヒの耐久力に関係するんだけどいらない?」


「ありがたくちょうだいいたします」


 俺の一番のネックだからな、くれるというなら願ってもない。しかし俺が承諾した時にアーミャの口角が微かに上がった気がした。


「じゃあ【アルミサエルの祝福】をレベル2に上げるね。私の祝福を受けた者だけが使える生命の闘衣をプレゼント。ここで装備していくかい?」


「そのセリフギリギリだからな!?でもまぁ、着るものないし、さっそく着るわ」


「はいはーい、えーと…汝に我が生命の力の祝福をー」


 アーミャがやる気の無い感じで俺に手をかざすと、淡く光る2本の白い帯が俺に絡み付く。螺旋状に縫い込み体をテーピングしていく。それはまるで絡み合うDNAを彷彿とさせた。


 帯の様な物は次第に馴染み服へと変わっていく。

 ベージュ色に近い濃い白色のベストの様な服、腰に幾重にも巻き付いた帯はベルトを複数巻いている様にも見えて中二病っぽい、ズボンはスラックスに近い感じがした。


 全体的に白を基調としていた…のだが、段々と浅黒く染まっていく。

 その染まり方は内側からにじんでくるようで、帯だった事もあり血が滲む包帯を連想させらてしまい少し寒気がしてしまう。



「あははー、ずいぶんと黒く染まったねー、天使なら堕天してるよー」


「あんだよ、色がなんか問題なのか?」


「いや、なんもないよ?まぁ、大罪を全て内包するのが人間だから当たり前の事だし?気にしなくて良いよ、むしろ白より黒のが魔力的には出力あるから気にしなーい」


「そんなものなん?ていうか魔力?これも魔術武装なのか?俺魔力ねぇけど使えるん?」


「黒く染まるとリミッター壊れるからー。あと、アサヒにも魔力あるよ?」


「あんの!?」


 いや、なんか不吉な言葉も聞こえたけど、俺にも魔力があったことのが驚きだった。


「この世界の魔力は四大元素に起因するからアサヒの魔力は測定ができないんだよ」


 なるほど、つまり俺は四大元素には起因しない訳か、つまりは特殊な属性、良いねぇ、チート異世界ストーリーの匂いがプンプンしやがるぜぇ。


「マジか!じゃああれか?この防具も柔そうに見えて凄い防御力あったりすんのか!?」


「え?それ防御力あんまり無いよ?」


「…え?」


「私が与えるのは生命の加護、その生命の闘衣が増幅するのは体力と自己治癒力」


「それは…つまり総合的に見れば防御力では?」


「違うよ?んんー、頭の悪いアサヒに分かるように説明してあげよう」


「くっそ!この…くぅぅ、お…お願いします…」


 この性悪天使が!しかし聞いておかねばなるまい…、自分の命に関わるのだから。



「つまりね?攻撃されたら耐える事は可能だけどダメージが軽減されるって訳じゃあ無いんだよ。そう言えばだいたい分かるかなー?」


 ん?それって…、いやいや、待てよ。


「んふふ、察したね?そう、苦痛は据え置きとなっておりまーす、やったネ!」


「やったネ!じゃねぇぇよぉ!まるでさっきのエリクサーじゃねぇか」


「お?アサヒにしては鋭い、アサヒのくせに生意気だぞー」


「その発言もギリギリだからな!?」


「ご褒美あげよう、次のエリクサー作れたらアサヒに優先的にあげちゃうね」


「はあ!?あれおまえが作ってたのかよ!いや、あの趣味の悪さは逆に納得だけどな!」


「んふふー、そんなに褒めるなよー。私そろそろ帰るねー、またねー」


 そう言うとアーミャの体が段々と薄くなっていく。


「褒めてねぇーし、もうさっさと行けし」


「つれないなぁ、あ、そうだ。【アルミサエルの祝福】がレベル2になった事で私との約束に強制力が働くようになったよ、やったネ!」


「はあ!?また悪条件だけ後出ししやがって!」


「あはは、これでアサヒは小魔王討伐をやめれなくなったよ、これからもヨロシクぅ」


「ふざけんなぁぁぁあああああ!!」



 アーミャが姿を消すと状況を呑みきれなかったマヒルとヒイリの視線が俺に向いた。

 …説明面倒だなぁ。



アサヒはほんと学ばないね、アーミャに良いように使われてるね、まぁ、アサヒだもんね、仕方無いね。

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