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VSカルキノス2

小魔王戦の続きです。

場面が分かりにくかったら申し訳ない、指摘などもいただけると嬉しいです。


 巨大なタカアシガニの様なカルキノスの脚の上は実に乗り心地が悪い。

 まぁ、良いはずが無いのだけど。俺はカルキノスの歩脚の第二関節に乗ったままでいる。

 学校の屋上くらいの高さはあるだろうか、不安定な足場がなんとも心許ない。

 カルキノスが暴れるかもしれないと考えて足場のある関節に留まっていた訳だが、ずいぶんと大人しい、…さては俺を見失ったのだろうか、堅い甲殻が災いしてか俺が乗ってる事に気付いていないようだ。


 少し様子をみていたがカルキノスは突然方向を変える、…そうか、そうだった。俺を見失ったのなら当然そっちに狙いを変えるよな。

 カルキノスの長すぎる鋏脚きょうきゃくがマヒルの頭上へと移動した。



「やめろおぉお!」


 俺は咄嗟にニューウェポンである毒針を逆手に握ると歩脚の関節に打ち込む…が、刺さらない。俺の腕力では僅かな傷を入れる事しか出来なかった。


 …なら、それなら刺さるまで突き刺すだけの話だ!


 何度も、何度も何度も同じ場所に毒針を打ち込むと傷が広がっていき穴が空き始める。

 そしてそこまでしたら流石にカルキノスも俺の存在を無視できない、堪らず俺が乗ってる歩脚を振り上げて俺を振り落とそうとしてきた。


「お、おわあ!」


 カルキノスを掴む手に力が入る、しがみつく事に専念しないと今にも落とされそうだった。

 ごつごつとしたカルキノスの甲殻を強く掴む、握力が無くなっていくのを感じながらも振り落とされまいと必死だった、落ちたら死ぬのだから文字通り必死だ。


 身体中の筋肉が悲鳴をあげているのが分かる、落ちずに済んでいるのはパルクールのスキルによる恩恵だろう。俺の素の筋力じゃ絶対落ちてる。




 意外にも先に疲れたのはカルキノスの方だった、次第に大人しくなっていく。

 これだけ大きな脚だ、動かすのには多大な体力を消耗するのだろう。


「っしゃ!喰らえぇ!」


 最後の一撃を関節に叩き込むと毒針が深く刺さり、カルキノスの体液が飛び散った。

 それと同時に大きくバランスを崩したカルキノスが膝をつくように倒れる。


「よし!部位破壊完了!…って!!そんな事言ってる場合じゃねええええ!」


 俺の手には毒針、姿勢も崩している。そんなタイミングで足場が大きく傾けば…、当然落ちる。


「うあ!うああああああ!!」


 あかん、これはあかん、パルクールで着地…出来るのか?出来る高さなのか?

 いや、やるしか無い!覚悟を決めて地面を注視した、その時だった。あれは……。

 自分の着地地点に見えるのは…。俺は大きく息を吸い込んだ。



 着地と同時に舞い上がる水飛沫、そう、着地では無く着水だった、奇跡的にも沼に落ちたようだ、落下の衝撃は沼の水により緩和された。

 急いで泳いで岸へと上がるとマヒルが走り寄ってくるのが見えた。俺の落下地点が分かったのか、流石マヒル、目が良いな。



「アサヒ!!後ろ!!アサヒーーー!」


 マヒルが何やら慌てている、後ろ?後ろはさっき俺が落ちた沼だが?


「………あ」


 沼から生えた大きな鎌、ブレイドキャンサーの鋏脚が見えた。

 そう…か、俺が落ちた沼に…居たのか。回避…いや、もう無理だ。

 最後の相手が小魔王じゃなく普通のモンスターだなんて、俺らしいっちゃ俺らしいか。

 俺はもう…疲れきって体に力が入らない。


「アサヒーーー!!」


 振り下ろされたブレイドキャンサーの大鎌は俺の体を服ごと大きく抉る、はは、スウェットだからな、防御力なんてねぇわ…。

 情けない、こんな終わり方…、肩から袈裟斬り(けさぎり)に斬られた体が熱い、痛覚が麻痺している、もう…痛みすら…。

 意識が…も…



 ……… …

 …………… ……

 ………………… ………



 ◇  ◇  ◆



「しっかり!絶対、絶対助けるにゃ!」


 アサヒの体を背負ってダイザミへと急ぐ、アサヒの体から滴る血液で背中が湿るのを感じて気持ちが焦る、アサヒの血が…足りなくなってしまう…。


「大丈夫…、まだ…、まだ温かい…、大丈夫、…んにゃ…ぅぅ」


 小魔王と戦う覚悟を決めて里を出た、自分が死ぬ覚悟もした。だけど…好きになった人が死ぬ覚悟なんて出来るはずが無い。



 アサヒと会った時、私の直感が感じ取った。「危険な男」だと。私だって危険な事をしようとしてるんだ、面白いじゃないか、そう思ってアサヒと組んだ。


 でもアサヒは危険どころか真っ直ぐで、一緒にいて楽しくて、…そしてとても強かった。

 もちろん戦えば私が勝つとは思うけど、でも、それでも私はアサヒには絶対に敵わないと思う程に強さを感じていた。

 アサヒの攻撃力の高さにも驚いたけど、そうじゃない。そういう強さじゃない。


 アサヒが見ていてくれたら頑張れる、アサヒなら信用出来る。そんな気にさせてくれる強さだった。それは他の人からは感じる事の出来ない強さ。

 毎朝昇る太陽のような…優しい強さ。


 ライオルトだから、強い種族として生まれたから強いだけの私の羨望もあったと思う。


 片思いでも良い、片思いのままでも良い。私みたいな獣人は人間のアサヒには不釣り合いだから…。それでも、やっぱり好きだから。


 アサヒを救いたい。ダイザミに…急がないと…。

 ヒイリに…会わないと…。



マヒルがアサヒに感じている強さの正体。

「一重に愛だよ」(こ○た)


はい、次はアレです。さんざんフラグたてたアレです。

小魔王戦よりもエグいことになりそうです。

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