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ダイザミ道中3

今回は短めにラブがコメコメしております。


「あんなのが居るんじゃ山賊より危ねぇな、ヒイリ、よく一人で行こうと思ったな」


 山賊に怯えていたヒイリがあの蟹を倒せるとは思えない。実は案外無謀な奴なのか?


「僕は一応エルフですよ?自然の中で暮らす民なのでモンスターの方が対処しやすいです」


「何その精神論」


「むー、違いますぅ。弓だって使えるし、倒せなくても戦闘の回避くらいはできます。それに僕は魔法も使えますしね!」


「お!魔術じゃなくて魔法!?見たい見たい!」


 この世界では魔法を使える種族は限られていると聞いた、念願の魔法だ、是非見たい。


「…えー」


「嫌なん?まぁ、無理強いは良くないな」


 何て言ったって魔法だ、きっと強力過ぎて制御が難しいのかもしれない。


「あ、いえ。…えっと、バカにしません?」


「ん?…ああ、まあ」


「じゃあ、行きますよ!えーい!アウラポッド!」


 ヒイリが俺に向かって手をかざすとほんのりと緑色の光を放った。


「あ!そんないきなり!…ん?…えーと、何が起きたの?」


 周辺に変化は無いようだ、いや、なんか心地良いそよ風は感じるが…あ!変化あった!湿地帯独特な湿気が無くなった!なんかあと臭いも爽やか!


「実はこれ、魔法をかけた相手に快適な空間を提供出来る魔法なんです」


「え?それだけ?」


「…それだけ…です」


「他の魔法は?」


「魔法使いが使える魔法は基本的に1つです。あとはそこからの派生しか…」


「あ……うん、……へー」


「あー!絶対バカにしてますよね!僕だって違う魔法が良かったですよ!」


 しまった、怒らせてしまったようだ。バカにしたつもりでは無く返事に困っていただけなのだが。ヒイリは頬っぺを丸くして怒りを主張していた。

 …いや、それ可愛いから。でも、男なんだよなぁ。



「魔法は素質が大事って聞いてたけど、好きな魔法覚えれる訳じゃ無いんだな」


「そーなんですよー。魔法って要は自分自身を媒体にした魔術みたいなイメージでして。自分の体は1つなので魔法も1つって訳です」


「なるほど、分かりやすい」


「えへへ」


 褒められたのが嬉しかったのかヒイリは嬉しそうな笑顔をこちらに向ける。30年生きてるとは思えないほど無邪気な笑顔だった。


「あーもう、無駄に可愛いな!」


「ふぇ!?…あの、僕…男ですよ?アサヒさんそういう趣味なんですか?」


「ちげぇよ!俺にはもう心に決めた女性がいるっつーの!」



「にゃ!?……そっかぁ、アサヒはもう好きな人いるんにゃね」


 話を聞いていたマヒルが少し複雑そうに会話に混ざってくる。


「そう!とても可愛い女の子だよ!」


 っていうかマヒルだよ!何を隠そうこの俺アサヒはケモナー属性を完備している!


「可愛いか…、可愛い子が好みにゃんね…」


 マヒルは自分の体を見て何故か溜息をついていた。そうだ、今こそあの時の返事をするべきではないだろうか。


「マヒル、スライムの時に自分の事女として見てるかどうかって聞いてたよね、俺はマヒルが!」


 マヒルの体がビクッと震え、俺が言い終わる前に口を挟んでくる。


「あ!待って!やっぱりそれ無しで頼むにゃ!」


「え!えええええええ!?」


「…勝算が…だいぶ薄くなったにゃ」


「え?なんて?」


「にゃんでもにゃあ!」



「んんー、そう言うマヒルの好みは…、あぁ、たてがみだったな…」


 俺は自分の髪の毛を確認して溜息をつく、鬣なんて生えてくるわけ無いよな。


「にゃ!?いや、それは一般的な話にゃよ!?」


「へ?じゃあマヒルの好みは?」


「…戦闘種族のライオルトですら尻込みするようにゃ敵に果敢に挑む変り者…かにゃ」


 ふむ、なるほど。つまりは肉体派か。俺の身体は…、自分の身体を見てまた溜息が出る、獣人に比べたら貧相極まりないわ…。


「ままならねぇなぁ」


「ままならにゃあね」




 ……… ……… …… …



 あれから30分は歩いただろうか、泥濘ぬかるんでいた地面はだんだんと渇いていき、しっかりとした足場になっていく。そして遠目に建物が立ち並んでいる様子が窺えた。


「見えてきましたね、あれがダイザミの町です。僕も来るのは久しぶりですねー」


「おー、やっと休憩出来るな、早く行こうぜ」


 獣人のマヒルや山に慣れたエルフのヒイリとは違って俺はただのゲーマーだ、陸上部で鍛えたとはいえ足はもう限界に近い、とにかく休みたい。

 道中で「休ませてくれ」と言わないのは俺の精一杯の強がりだった。

 こんなひ弱じゃマヒルの好みからどんどん遠ざかってしまう、もっと鍛えないとなぁ。



 ……… …… …



 町にある建物は土壁で出来ていた。観光地と言うにはあまりにも素朴。

 しかし町人以外にも冒険者と思われる武装をした人も見かけ、商人風な人もちらほら。

 なるほど、確かに湿地に囲まれた町にしては賑わっていた。


「この賑わいが小魔王の影響だってのか?」


「そうですね、まぁ、とりあえず食事でもしながら話しましょうよ。僕もうブレイドキャンサーの味が気になって気になって」


 目をキラキラと輝かせる少女の様なヒイリ。


「くっそ!無駄に可愛いな!」


「ふぇ!?僕そんな趣味無いですからね!?」


「俺もねぇよ!」



次回からダイザミ、食事編でございます。

ダイザミの状況や今後の方針を話しながらカニ食う話になります。

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