初めまして、これからよろしく
進化とは、この世界に存在するモノに与えられる、急激な変化。
それまでの姿形から魔力量、種族の変化。そしてこの世界において進化の最たる利点は「スキル」を獲得出来る事である。
つまり、オルト達の目前に居る魔物は、5歳の子供が二人でどうにか出来るレベルをはるかに超えている存在だった。
(アメリアだけでも何とか助けなきゃ・・・)
オルトは、自分の上着を小さな手のひらを白くなるほど強く掴んだ、同い年の姉を見ながら思った。
5歳のオルトは、小さいながら自分が、血の分けた家族では無いことが分かっていた。
それでも、両親が自分をアメリアと分け隔てること無く愛してくれている事も分かっている。
だからこそ、かけがえの無い家族であるアメリアを、どうしても助けたいと思っていた。
静かに心を決めて、茂みからそっと対岸の様子を伺った。
コマンドウルフは、引き連れたグレーウルフを一回りほど大きな灰色の巨体を持ち、大きな口と鋭い牙、太い4本の足の先には5本の鉤爪が生えていた。
子供など、一噛みで仕留める程度、造作も無いだろう。
さらに、グレイウルフが3匹もいる。
普通に逃げたところで、すぐに見つかって追いつかれる。
オルトが、なんとかアメリアを助ける方法が無いかと考えていた時、対岸の状況に動きがあった。
スノーフォックスの子供が、川を背にコマンドウルフ達に向き直った。
グレーウルフ達は、スノーフォックスの子供を囲む様にして動き、その動きの外側にコマンドウルフはゆっくりと獲物を眺めている様であった。
恐らく、スノーフォックスの子供は殺されてしまうのだろう。
5歳の子供にしては、冷静にその状況を受け止めている自分に、オルトは不思議な感覚を覚えた。
その時、グレーウルフの一体に小石が投げつけられた。
「その子から離れなさい!」
オルトの側で震えていたアメリアが、茂みから立ち上がり石を投げた。