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無事に5歳・・・?

次に話したいのは、5年前


オルト(オレ)とアメリアが5歳となったある日の話。



「オルト!今日は東の川で遊ぶわよ!」



朝御飯を食べ終えたオレに、姉のアメリアが言った。


母ユフィ譲りの赤毛を一本のお下げ髪に結び、元気いっぱいの笑顔で手を引っ張った。

おそらく、大きくなれば美人になるのだろうが、この時のオレには(制御不能なほど)活動的な姉だった。


「痛いよ、アメリア。そんなに引っ張らないでよ」


オレは当時まだアメリアより背が低くく、ずりずりと玄関に向かって引きづられる様に移動していった。

アメリアもオレも山奥で育った為、体力的には同年代と比べても優秀であったが、アメリアは特に体力が優れていた。


「東の川で遊ぶって、父さんと母さんに2人だけで遠くに行っちゃダメだって言われたよ?」

「大丈夫よ!ちょっと森を通り抜けるだけなんだから!だから大丈夫!」



何が大丈夫なのか、今になって思うと不思議だったが、当時のオレにアメリアを止める事など出来はしなかった。

無駄な抵抗などせず諦めと共に、帰った時に両親に怒られる覚悟をそっと心に決めた。


「わかったよ、じゃあアメリア急いで行こう。昼ご飯には帰ってこなきゃいけないし」

「うん、早く着けばいっぱい遊べるもんね」


微妙に会話が成立していないように思えるが、いつもの事なので気にせず外出の準備をし、庭で洗濯物を干している母の後ろを駆けて行った。

森へと入った瞬間、オルトの身体はいつものごとく不思議な感覚を得ていた。

それは、魔物の気配。

この世界には、人とは異なる生態を持ち、その身に魔力を秘めた魔物(モンスター)が存在していた。

勿論、牛や豚などの動物もこの世界には居るが、魔力は無く、ほとんどが人にとって無害か有益な生物であった。

しかし、魔物はその魔力を持って人や動物を襲い、時には人の言葉を操る知能を持った個体すら居た。

人里が近い為、それほど危険な魔物が姿を現す事は無いのだが、それは『大人にとって』であり、まだ五歳の二人には、十分な脅威であった。


「アメリア、この先に三体いるよ。多分スカルラットだと思う」

「なんだ、スカルラットなら蹴っちゃえば何とでもなるわよ」


スカルラットは、大型のネズミ型モンスターで、生きている生物はあまり襲わず、死んだ生物の骨を食べて生きている。

アメリアの言う通り、大した危険は無いのだが


「でも、噛まれたりしたら痛いし、危ないよ。そうしたら、今日は帰って母さんに治してもらわなきゃ」

「ええ~・・・じゃあ回り道する・・・」


渋々といった感じで、アメリアは方向転換した。

少しの遠回りとなったが、二人は無事に川岸に到着した。


「さぁ!!遊ぶわよ!!」

「アメリア!!急に服を脱がないでよ!!もし流されたり、風で飛ばされちゃったりしたら、お母さんに怒られるよ!」


オルトの注意を聞かぬふりをして、アメリアは川へと飛び込んで行った。

オルトは、少しため息をつくと、脱ぎ散らかされたアメリアの服を集めて畳み、ちょうどいい大きさの石で、風で飛ばないように服へと乗せた。


「オルト~、早く一緒に泳ごうよ~」

「もう、アメリアは本当に自分勝手なんだから・・・ん?・・・」


川で無邪気に遊ぶアメリアに言葉を返そうとした時、オルトは川の対岸からこちらに向かって来る魔物の気配を感じた。


「アメリア!!すぐに出て!!何か大きいのがこっちに来るよ!!」


アメリアは、一瞬呆けた顔をしていたが、オルトの言っている言葉を理解して、すぐさまオルトと共に近くの茂みへと隠れた。

隠れた数秒後に対岸に現れたのは、一匹のスノーフォックスと四匹のグレーウルフだった。

スノーフォックスは、その名の通り雪のように白い狐型の魔物なのだが、個体の魔力の高まりと同時にその体色がより白さを増し、魔力が強大な個体になると白銀に輝く毛並みとなるらしい。

森から出てきたスノーフォックスは、まだ小さい個体なのか、大きさも10センチ程で、体色もくすんだ白、灰色に近い色をしていた。

そのスノーフォックスの子供は、どうやらグレーウルフに追われて逃げてきたようで、そこかしこに傷があるのが見えた。


「・・・っ!?」

「・・・」


声を上げそうになったアメリアの口を、オルトが手で塞いだが、その手は小さく震えていた。

アメリアが恐怖を感じるのも仕方なかった、その場にいたグレーウルフの一体が、異様なほど大きな身体をしていたからだった。

グレイウルフは、狼型の魔物で大きさは大きめの犬程なのだが、獲物を狩る時に3~4体の集団で動く。つまりは、コンビネーションを用いて獲物を追い詰めていく。

こういった特徴から、魔物を狩ることを生業とする者の間でも、グレーフォックスは単独で対応するに適さない相手と知られている。

もちろん、こんなことを当時のオレが知っている訳は無く、しかし恐怖に震えた手は別の脅威をその大きなグレーウルフに感じていた。


その魔物の名は、コマンドウルフ。

グレーウルフの進化個体であった。

王道展開っていいですよね

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