ゲル討伐対決
門に行く途中で屋台がいくつか並んでいる道に出た。
「お兄ちゃん、お兄ちゃん、なにか食べ物おごってよ」
アクイレギアがねだってきた。
「お前なぁ」「うん」
若干、返事をかぶせてきた。
「そうやってすぐねだるなよ」
少し間を空けて返事をした。
「は〜い」
ちょっと落ち込んでいるみたいだ。感情がわかりやすいな。
「今日は、先にかばんを買いに行ったり、袋を返しに行ったりするのについてきてもらったから、後でゆっくり見て回ろうな」
「うん!」
よし、機嫌が良くなった。
「じゃあ、急いで終わらせようか」
「うん!」
「ここらへんかな」
アクイレギアが何かの紙を持って確かめている。
ぱっ、と見た感じその紙は、本に使われていたものより品質が低く見える。きっと、使い捨てにするための簡単に作れるものなのだろう。
「ここらへんにたくさんいるって教えてもらったよ」
人差し指で右から左、左から右と往復させてなんとなく場所を指差していた。
「よし、じゃあ始めるか」
「あ、そうだ!お兄ちゃん、勝負しようよ」
先に走って行こうとしたアクイレギアが、こちらに方向転換して言ってきた。
「いいけど、なんの勝負をするのか」
「どっちがより多くゲルを倒せるかだよ」
シャドウボクシング、ぽいことをして戦うこと表現している、と思う。
「勝ったらどうする?」
「私が勝ったら、なにか高いもの買ってよ」
「わかった、じゃあ何か装備買ってやるよ」
適当に安いやつを選ばせるか。
「ほんと?」
なんか、詐欺師を見るような目で見られている。
「嘘を言っても意味がないだろ」
「やった!」
本当に嬉しそうにその場で跳ねている。なんか、勝ちにくくなったな。
「早く始めようよ」
「ああ、そうだな」
「スタート!」
アクイレギアが自分で掛け声をかけて、駆けていった。
「あいつ、ガチで勝ちにいったな」
恐ろしいやつだ。
「遠くに行ったから、俺は近くを探すか」
「お、いた」
少し遠くに、動いている緑色の液体のような物体が見えた。
確かにシーダーと白いゲルを探したときよりも全然見つかる量が違う。でも、あのときは扉を探さなければならなかったから結果的にゲルが多い場所を探しても意味がなかったと思うけど。
あっちはまだこっちに気づいていないみたいだ。
不意をつくか。
そのために、余っているポイントを使おう。確か、アクイレギアが『忍び足』のスキルを持っていたな。Level.1だけどあったほうがいいよな。
残り枠を触って、忍び足と検索をして習得した。
草むらに隠れ、足音を消しながらゆっくりと近づいて、魔法の準備をする。
「『ウィンドブレード』!」
急に襲われて驚いたのか、避けられることはなくうまく当てることができた。
「よし!」
ドロップ品は、相変わらずのジュースだ。
「やっぱり偏りがすごいな」
同じのしか出ないな。さっきまでに出たものは、ジュースと人形しかないぞ。
「今は、数を倒すことに集中しよう」
そういえば、アクイレギアは何体倒したんだろう。最初にお互い見えないようにしようって決めたからわからないんだよな。
「あっお兄ちゃんいた」
「どうした」
「気になったから探しにきたよ」
「こっちも気になってたんだ」
「そうなの?」
頭をちょっと傾けて尋ねてきた。
「どれぐらい狩ったのか気になってんだ」
「そうなんだ、じゃあ見ていいよ」
「ありがと」
設定を触って自分以外も確認できるようにする。
「ん?なんかすごい差が出てるな」
見てみると、5体差がついている。ていうか、あと一体で依頼達成じゃないか。
依頼 ゲル退治(達成状況 19/20)
アイオライト 7体
アクイレギア 12体
「すごいでしょ」
「そうだな、どういうことなんだ」
「実はね、スキル練習キットを安く売ってもらえたんだ」
小声で耳元に囁いてきた。
「シーダーといい、なんでそんなにペースが早いんだよ」
「いろんな人と話してたら、盗賊系の人と仲良くなれたからね」
自信満々に胸を張っている。
「そんなものなのか」
「そんなものだよ」
「そうか」
あんまり考えてもしょうがない気がしてきた。
「それでね、私がお兄ちゃんを探してた理由なんだけどね、私の装備を買ってくれるなら戦闘を見ててもらったほうがいいかなって思ったんだ」
ありがとうございました




