第二生・常夜
暇だったのですぐ書いてしまいました。
前回の半分くらいの分量なので短めです。
考えてるようには進まない…。
「まいったな、天国から地獄とはまさにこう言う事だな」
地獄行き。そう告げられた瞬間俺は謎の光に包まれ飛ばされた。最後に見えたのは笑顔で見送る神王と、隣で驚いているリナリアの顔であった。
「というか、どこまで行っても暗いな。電灯の一つくらい建ててくれてもいいのに。」
飛ばされた先は夜のように暗い空間だった。薄暗く、光源は何処にも無いのに周囲は少し見える。しっとりした空気と静けさに奇妙な感覚を覚える。
「お、人がいる。よかった、道を間違えていたわけじゃなかったんだな。それに…あの建物は」
視界に入ったのは真っ赤なドーム状の建物だ。所かしこに炎や厳つい修羅の顔が描かれていて逆に怖さが失せる。入り口には門番らしき二人が立っていた。
「そこで止まれ。報告にあった男だな。中に入る前に危険物の検査をする。」
言われるがまま検査に応じる。問題なかったのか検査はすぐに終わった。
「よし、いいだろう。服や靴の汚れを落とし中に入れ、特に靴についた土は入念にな。」
「わかりました」
汚れを落とし中へと入る。外の整備されていない地面、木造の建物、天界との違いを見ながら奥へと歩いていく。
さすがに中は石の床になっていたが天界の石床と違い武骨な石床だ。想像通りの地獄感が増してゆく。四角柱が並ぶ内部を進み着いたのはまたもや豪華な赤い扉だ。天界のようにここに閻魔様でもいるのだろう。
「閻魔様がお待ちだ。中に入れ」
先程の門番の一人が後ろから来ると赤い扉を開けた。それに続くように部屋へ入る。
そこで待っていたのは金髪の若い女性にマッサージされ惚けている老人だった。
「閻魔様かなり疲れが溜まっていますねー。さぞご苦労なされているんですね。ご尊敬します。」
「そうなんじゃよー、裁いても裁いても増える一方だしーバカンスにでも行きたいわい。」
「あ…あの、閻魔様?」
「はっ!?、うむ、よくぞ連れてきた下がってよいぞ。」
こちらに気づき威厳ある顔を作り部下を下がらせるが、体勢はベッドの上で横になったままなので意味が無い気がする。
「さて、お主が断りもなくなく天界に来た男であるな。」
「まあ、自分でも覚えてないんですけど。」
ベッドから降り、王座のような席に着くと資料を指しながら言った。
「単刀直入に言うと。残念ながらお主のことはこちら側の資料にも載っておらん。つまり、お主らはこの世界に存在しない者達なんじゃ。」
「存在しない!?ど、どういうことですか?な、なんで…俺は……」
世界に存在しない。馬鹿げた話だ。だったらここにいる俺はなんだと言うんだ。わからない、知るために来たのにより困惑してしまう。
「…そういえば、同じイレギュラーがもう一人いるって…」
「ああ、それはこの女子のことじゃよ。ほれ、お主だけでも自己紹介してやれ」
一人の女性が前に出てくる。さっき閻魔にマッサージをしていた女性だ。
「柳 夕凪。気づいたらこの場所にいた。だけど記憶はあるからね、あんたと違って。」
肩を少し超すブロンド髪、口調と同じくらい強気を感じさせる青い目をした柳という女性は、黄色いシャツ、デニムのショートパンツ、白い靴の他にエプロンと三角巾を身に着けていた。
「初めは危険視したが、良い子でのー。夕凪ちゃんにはわしの手伝いをしてもらっていたんじゃ。なかなか気の利く子でのいやー助かる助かる。」
「もー閻魔様は褒め上手なんですからー。あははは!」
表情をコロッと変え満面の笑みで返答する彼女。どうやらなかなかの世渡り上手らしい。
「お、俺はどうしたらいいんですかね。というより…どう…なるんですか」
傍から見れば何も情報が無い不気味な存在な俺を野放しにはしないだろう。監禁、あるいは処分か。
「まあ、待て。初めに常夜と天界の話をしておこう。」
閻魔が机の上のリモコンを操作すると、天井から巨大なモニターが下りてきた。そこに図表が表示された。
「世界は大きく分け三つある現世、天界、常夜。現世からの死者を裁くのが常夜、現世の安定化を行うのが天界じゃ。常夜での判決で地獄、天国、天界などへの行き先が決まる。ここまでは理解できたか?」
「はい、なんとか」
突如始まった講義に戸惑いながらも頭を働かせる。
「天界での神の仕事、これが今人数不足でな。正直適正者だけではやや心許ないんじゃ。そこでお主たちの管理も兼ねて天界で働いてもらうことにした。」
「え、俺が神の仕事をするんですか!?」
「ちょ、ちょっと待ってください!?私もですか!?」
静かに話を聴いていた柳だが自分が対象に入っていることに驚き、閻魔へと問いただした。
「いやーわしとしては夕凪ちゃんにここで働いてもらいたいんじゃが管理する環境や人員などの優先があるからのー。すまんの。」
「ええー!!そんなー……」
凄い落ち込みようだ。何故そんなにガッカリするのだろうか。普通神になれるなんて聞いたら驚きはするものの嫌がることはないような気もするが。
「神の仕事って具体的に何ですか?人助け的なものぐらいしか想像できないんですけど…」
「確かに、人の願いを叶える、悩みを解決するのも仕事じゃが他にも重大な仕事があるんじゃ。」
モニターの画面が切り替わり、黒々とした怪物と呼ぶにふさわしいものが映し出された。緑の目玉のようなもの、今までに見たことのない生き物?だった。
「これは無魔という現世に穢れを伝染させたり、我ら神々に悪影響を与える怪物、魔物じゃ。これを討伐するのも神の仕事じゃ。」
「この怪物はどうやってあらわれるんですか?」
またもや画面が替わり、人間のシルエットが表示された。
「無魔とは人の暗い気持ち、穢れた欲を基に生まれ人々の心、霊魂に影響を与える者じゃ。無魔が存在するのは虚空という本来存在しない第四の世界と呼ばれる場所に存在している。そこは無魔や穢れが漂う世界と言われておる。そして…」
閻魔は言葉を止め、俺達を見てから改まって口を開いた。
「神も不死ではない。無魔にやられれば霊魂は消滅し死を迎えるだろう。穢れに呑み込まれ苦しむことになる。」
「………」
「死ぬ…」
静寂が空間に訪れる。柳が嫌がっていた理由がよくわかった。わけもわからない内にこの世界に来て、死地へと行かされるのは神という名目があっても嫌だろう。ここが死後だというなら、また死ぬ苦しみを経験するのも馬鹿らしい。
「……しかし、必ずしも戦う訳ではない。それに無駄死にさせるようなことはわしらの本望ではない。その為の研修、指導があるのじゃ。すまないが、詳しいことは天界で聞いてくれ。」
閻魔は金色の笏を懐から取り出すと俺達にそれを向けた。こっちに来た時と同じ感覚を覚える。天界に飛ばされるようだ。
「もし、なにか問題があれば相談に来るといい。わしは閻魔だが鬼や悪魔ではないからな。…夕凪ちゃんまた会いに来てくれると嬉しいの。」
「はい…閻魔様」
「あの!ありがとうございました。色々と教えて頂けて助かりました。」
体が光に包まれる。
「向こうのヘレニウムの馬鹿によく伝えておくから安心して行け。」
おそらく神王のこと言ってるんだろう。仲悪いのかな。そんなことを考えながら光に包まれ天界へと飛んだ。
休日使って気まぐれで書いてます。
忙しくなったりしても、しなくても超不定期更新なので、どうぞ忘れた頃にでも来てください。