窓辺の攻防 * 1
来るなといったのは私だし、嫌いだといったのも私だ。
ただ、そんな簡単に手を放されるとは、思っていなかっただけなのだ。
それは、一週間も前のことだった。私と南は喧嘩をした。喧嘩だけなら、どうってことはない、日常茶飯事な出来事なのだけれど、今回は一味違った。
南が、怒っていた。
《南ー、手紙、持って来たよー》
《……いらね》
《なによ。折角持ってきたの、に、》
南の机の上にはなぜか、私の携帯電話が置いてあった。それは、私が昨日なくしたと思っていたものだ。おかげでその日は一日中、マナーモードでバイブもならない携帯電話を学校中探し回り、くたくただった。
《え、わ、私の、》
《生徒会室に落ちてた》
《え、》
《会長に告られちゃってさ。けっこうもてんじゃん》
《み、見てたの? でも、私――》
《あいつのこと、好きなんだ》
《な、そんなこといってな、》
《帰れよ》
そういった南の顔が、今までに見たことないほど、怒りで歪んでいた。キレイな顔で睨まれるのは、それはそれはすごい迫力だった。
今まで、南がそうして私に怒りをぶつけたことなんてなかった。そもそも南が怒るところなど、私は見たことがなかった。
《帰れ、目障り》
《な、なに、それ……》
戸惑った私は、そういって南に近づこうとした。すると南は、私なんか見たくもないんだとでもいうように、体ごと逸らせた。
《いつもみたいに、会長とメールでもしてれば》
《――っ、見たの?》
南は答えない。それを私は、携帯電話のメール見たのだと、判断した。
《最っ低! あんたなんて大っ嫌い! こっちだって顔も見たくないわよ。そっちこそ絶対うちに来ないでよね!》
そういって、南の部屋を飛び出したのが一週間前の話。
それから本当に、辛うじて学校で顔を見る程度だ。
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