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わたしのはなし  作者: かじき
2/7

2。

よろしくお願いいたします。

2。


「はあぁぁ。」

仕事を終えて更衣室に入ると、

今日の業務を無事に終えた安堵と

はりつめていたものが弛んで

改めて感じた疲れから、

大きなため息が出た。

と、クスクス笑う声が後ろから聞こえる。

振り返ると、菜緒の笑顔。

「でっかいため息だね。」

「だって疲れたんだもん。」

「ふふっ。

今日もお疲れ様。」

うー。菜緒の笑顔に癒されるぅ。

「でも、智夏って

いつも仕事の後、ため息ついてるよね?」

「そう?

クセになっちゃってるのかなぁ?

…幸せが逃げるなんて言わないでね?」

「言わないわよ。

何かに不満があって出るため息じゃないし、

憂いから洩れる訳でもないんだから。」

「そっか。そうだよね。」

着替えを終えて、揃って更衣室を出る。

会社の玄関を抜けて、

最寄り駅の側の居酒屋に向かった。


私と菜緒との間には、

暗黙の了解的な事柄が幾つかある。

同じ地下鉄の同じ方向に家がある為、

仕事が同じような時間に終わる時は一緒に帰る。

それが平日の時はそのままそれぞれの家に帰るが、

週末の場合は、

会社の最寄り駅の側にある居酒屋で

一緒にご飯を食べる。

勿論、お財布にすきま風が吹いているとか、

他に予定があったりすると、

居酒屋がファミレスになったり、

別々に帰ったりすることもあるのだから、

絶対的なものではないのだけれど。


二人、チューハイ片手に向かい合った。

「いただきます。」

「いただきま~す。」

うん。挨拶って大事だよね。

菜緒とお酒と食べるものを前にして、

心が広くなるのを感じる。

単純な女なのである、私は。

「そういえば、今日の合コン、

お医者さんとなんだって。」

「そうなんだ?」

「うん。宮田先輩、

祐実子先輩のところに自慢しに来てた。」

北間 祐実子先輩は、経理課の菜緒の先輩で、

おっとりとした優しい女性だ。

祐実子先輩の癒しの雰囲気に

心奪われている男性社員も多いだろう。

宮田先輩もそれがわかっているのか、

祐実子先輩の方が一歳年上にも関わらず、

何かと絡んでいるらしい。

祐実子先輩は本気で相手にしていないようだけど。

チーズフライをつまむ。

私はチーズが大好きだ。

「けど宮田先輩、

何でそんなに必死なんだろう?

まだ二十六でしょ。

今の時代、三十代、四十代でも

初婚で幸せになる人は、

男も女もいっぱいいるのに。

そこまで焦る意味がわからない。」

菜緒はホッケをほぐしつつ答えた。

「今はまだ、

そんなに結婚に傾いている訳じゃなくて、

少しでも条件の良い男に

ちやほやされたいだけだと思う。

いずれ、その条件の良い男が

結婚してくれたら一石二鳥ってだけで。 」

「ふうん。

でも、条件ってそんなに重要なもん?」

菜緒は首を振った。

「それは私も理解できない。

どんなに条件が良くても、

相手のことを好きじゃなきゃ結婚なんて無理。」

そう言う彼女は、

同じ経理課の須崎 幸隆主任に想いを寄せている。

彼はコネではなく、実力で主任の座を勝ち取った。

あの年齢では異例の大抜擢なのだそうだ。

ただ、菜緒本人は、

須崎主任は祐実子先輩に恋しているのでは、と

考えているようだ。

四歳下の自分より一歳下の祐実子先輩との方が

仕事上の付き合いも長いし、

祐実子先輩の人柄の良さに、

菜緒自身、好意を持っているからだ。

私としては、大好きな親友の菜緒が

好きな人と結ばれて、幸せになって欲しいと

思っているのだけど。

菜緒の幸せを願いつつ、私はグラスを傾けた。


お読み頂きまして、ありがとうございます。


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