12日目 引き金
ばっと帰ってがっと説明してざあっとひかれた。悲しい。ちゃんと最初からアランや教会が出兵準備が無いところから話したのだがなんだかドン引きされている。
「ハラーコ、司教棟燃やしたのはちょっとやりすぎかな」
「燃やしたように見せかけただけですよ」
「大領地の魔法関連全て消えたのなら一緒だよ。どれだけの技術が犠牲になったのか……」
ちゃんと聞いてみると魔法関連の技術や資料が管理がと、教会を通り越して領地や国がパニックレベルだと言う。また私はやらかしたのか。
「この洞窟内で使っていない空間ありますか? 吐き出します」
「出せるの?」
アイテムボックスで魚の内臓だけとか獣の皮だけなんて部位取り出しができるので多分一部屋切り出しもできるはず。うまく説明するのは難しいが最悪コピーできるので完全消失はさけられると思いたい。中身の確認は完全おまかせになるのですぐにどうにかは無理だろうけれども。
なんとなく世の中から完全に無くなったわけではないと伝わると文官の顔色がよくなってきた。こそこそと話し合いをした領主はまた妙な笑顔を見せる。
「ここではなく領都にて出して貰いたい」
いまいち解っていない私にレイが耳打ちしてくれる。
「領内限定で教会の権益を奪うんだよ。領主の管理下で技術も魔法管理も向さんが立て直す前に領主のものにしてしまうんだ。歴史的大偉業だね、こりゃ」
それってかなり厄介なことでは? 中央とか別領地からもガンガン攻められそうな。
「そんなものはやりようだ。王族に横流ししてもよし、中央の貴族に売ってもよし。あちらこちらが同時多発的に教会から奪いにかかれば勝てぬ争いでもない。宗教家が嘆いても流出したものはもう戻らん」
エアリーディングをした領主は悪役みたいに笑う。戦乱の引き金をひいたのだろうか。やらかし度の高さに青ざめる。しかしこの部屋で怖がっているのは私だけ。なんでみんなやる気なんだ。
「魔法使い弾圧をしていた教会から引き離せるとなればあちこちから魔法使いが集まるよ。在野の魔法使いは教会魔法より戦闘向きだし、短期決戦か無血勝利だと思う」
「信仰心より生活だからな。高利でしている農地への魔法あたりをサービスすればそれで民も領主様につく」
「魔信の配備も進めば治安もより良くなりますね」
「魔法使い狩りが無くなるだけでも良くなる」
口々にシステムを奪った後の希望が漏れるが楽観視しすぎなような。色々手に入れても使えるとは限らないし、経済や政治が大幅に変わるわけで混乱もあるだろう。アドレナリンドバドバ集団に今度は私の方がひく。
「まぁ、それは追々ってことで出兵されないのとバーク家の黒幕だったっけ? それの話をしようか」
一番暴走しがちなレイが話を戻してくれたので頷いた。ニヤニヤしながらも一同話をする体勢になる。
「正直な話、ガルド領は中央の貴族であるバーク家とは繋がりが全くありません。情報収集をしましたがメヌール司祭とハラーコさんの言うアラン大司教の御実家が揉めている程度の話しか掴めません。密輸経路も資料がないのでまだ……」
文官の話をまとめると何もわからないとしか言っていない。そういえば裏帳簿があったな。提出すると回覧した後、密輸商人をひっぱってくると約束してくれる。
しかしながら、今すぐどうこうというものは何も手に入らない。
「結局のところ、アランを操る者を捕らえる以外に教会の動きの理由も密輸の理由も、呪いの理由すらわからぬな。教会に呪いを押さえられると厄介事も増えよう。全てを詳らかにするためにも頼んだぞ、ハラーコ嬢」
領主の言葉が今回の帰還の全てである。何も手に入らないまま、レイと副部隊長と派遣軍をホラ村に運び、バーク家の上空でコンティニュー。先ほどよりやる気が落ちたまま元凶を潰しを開始するのだった。