12日目 とりあえず燃やせばいいと思うよ
昼間の領都はなかなかの賑わいで人も物も動いていく。教会はそんな都会のど真ん中に建ち、尚且つ病院としての門戸を開くために内部まで喧騒に包まれていた。門からすぐの建物は救いの棟と呼ばれ人が列をなしている。内部は学校の体育館でする健康診断のように木製のパーテーションで区切る大広間だ。治療をしている司祭の中から先日脳内スキャンした人間を探しだし、今日のアランの所在を探る。
大司教アランは雪がふる前に準備がいる春祭事の調整会議に出席していた。会議室の一つに地元商人たちを呼びつけ、予算や期間、分担について指示を出す。商人たちにも怖い人物なのか会議とは名ばかりの報告会にしか見えない。昼間のアランは夜のアランと違い痩せ細った顔の片眉を上げて威圧を続ける。私は気配を消したまま近付き鑑定魔法を行使した。
アランは相変わらずその肉体で通常のように動いているが生命力も魔力もほぼ限界に達している。どう考えても動ける方がおかしいのだが肉眼ではわからない。ゾンビを操るように魔力で動いているのだろうが、実際に目にしてもなんとも言えない気持ち悪さがある。
やることは決まっているので魔法の記録を続けて開示した。
アランは練習用死霊術機に操作されています。
人の魔法ではなく機械系の操縦のようなログが流れる。更に機械の詳細を出すとアランの脳内、コアになる部分を隔離して送受信をしていた。送信先の座標を読み取りマップを重ねると未踏破エリアが該当箇所になる。
領主のオーダーは時間稼ぎだが、このまま犯人がいそうな所に飛んでも良いのだろうか? この後どうなるかわからないし本村の通報記録も誤魔化してきた方がいいかもしれない。とりあえず飛ぶ前に何かをすべきと思ったので本村の情報を探すことにした。
神官達から情報源を探すが本村の魔信に限らず技術系秘匿はがっちりのようで司教棟に色々詰め込まれていることだけがわかった。そこらの司祭には閲覧権も入室権もない。アラン派もアンチアラン派もアランが抱えていると考えており出兵予定もゾンビ情報もみつからない。メヌールの考えるアランや領主サイドの意見では気づき次第燃やしたがると思っていたが動きが違う。何か思い違いをしていたのだろうか? 肝心のアランの操縦者の脳ミソはここにはないのでなにもわからない。
わからないといえば魔道具やら魔法管理について詳しく知らないので司教棟に来たのはいいがどこがどうなっているのか見当がつかなかった。片っ端から侵入と鑑定をすればいつかは見えるのだろうけれど、アランの中身が抜けた後の混乱でどうできるかは未知数。博打に乗るより謎は謎のままで消してしまった方がいい。いつもの思考放棄が炸裂した私は司教棟の警備担当などの人員を全て吐き出させた後、司教棟自体をアイテムボックスに収納した。これで領主のオーダーは消化したことになる……といいなぁ。更に現実的になるように霧を張ってその上から光を操作し司教棟大炎上を演出してみる。近付くとバレちゃうので二十メートル以内になると熱風押し出ししちゃう魔法なんかもしてみた。どれかの記憶が今日から毎日教会を焼こうぜなんて恐ろしいことをいう。
教会はこんなもんでいいだろうと未踏破エリアにいるアランの操縦機の側に飛んだ。ガルド領で一番マシな作りといえばカルアの街や隠れ家の装飾だが、それより質がいい屋敷の上に出る。煉瓦に漆喰、鱗模様の屋根も見えた。日本基準で広く、ガルド領基準で狭い庭には花や木が左右対称に植え込まれて女性受けの良さそうな豪邸、男性には華やかすぎて落ち着かない家に思える。機械を探す前にどちら様の邸宅か確認しようじゃないか。門に立つ警備に声をかけにいこう。
「すみません。道に迷ってしまいまして、こちらはどなたのお宅ですか?」
「こちらはバーク家の屋敷になります。どちらをお探しですか?」
ん? バーク家って真っ先に候補から外れた家では? 黙る私に不思議な顔をしている警備。教会の件といい予想がことごとく外れている。これは乗り込む前に報告した方がベターかもしれない。




