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だらちーとと残念異世界  作者: ちょもらん
ガルド領・教会編
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10日目 侵入

 メヌールの記憶だとレイナードの命を脅かすアランが十年以上前から確認できている。アランなる者がレイナードを呪っていますだなんて言われたらこのアランだと確信するのは当たり前だ。何ヵ所かを覗いただけの私でも賛同する。

 ただレイナードの記憶だとそこまで接触してきていないのかあまり見えてこなかった。手下を使って虐めていたらしいが、苦しんでいる顔を見てやろうなんて登場もないし、イアンの敵だと睨んだりもしない。本人の主観も解るのが記憶閲覧だが、意識外でも目に写ったものは全てライブラリに入れてある。レイナードが気付いていなくともどこかしら恨みの目線が記録されても良い筈なのだがそれが見当たらないのだ。ものすごく慎重な性格をしているのだろうか。

 とりあえずアランと呼ばれる呪術師の顔は十年前の物だが確認できた。動機もあるし、他のアランはレイナードとは出会っていない。二人が眠っている間に、アランの記憶から呪い関係のものを引き出して消去してしまおう。そして可能な限りイアンの恨みを薄めてみる。最初のメヌールにあった逆恨みは放置しても良さげだけれども。




 転位先をカルアの隠れ家から南下させて領都がある辺りにとんだ。目標は思ったより上手く捉えていたようで巨大な壁が草原の中にあるのが見える。更に転位で壁内、中心、白の建物。怪談話のメリーさんのような移動を繰り返した。……私、仮名花子、今あなたの教会前にいるの。ああ、怪談で思いついた。自動呪いかけの秘密がわかったらアランを部隊長のように発狂状態にしても良いかもしれない。残酷だけど教会と一戦交える可能性があるので粘着質なのは潰しておきたいという利己的な理由も強い。

 領都の教会は大教会というだけあって本当に大きい。この世界で初見の煉瓦の塀に金属の柵、松明、杖を持ったメヌールと似ている白いローブの門番が立っている。気配遮断の魔法を作って門内に入ると漆喰と思われる壁の建物がずらりと並び、闇夜に威圧感たっぷりに浮かんでいた。

 レイナードの記憶によると手前の建物は講堂になっており、昼間は治療院として機能しその前後に教会の住人達が祈祷をしている。この建物裏の庭で小さなユリアが見つかった。更に進むと三つ並ぶ建物がある。司祭未満の者が住まう棟、司教以上の私室と執務室の棟、司祭の私室と執務室の棟の順だ。アランは大司教なので真ん中の棟にお邪魔しなければならない。三つの棟に近づくと急に空気がピリッと張る。レーダーを展開すると発信源が表示された。近付いて鑑定しよう。

 空気が変わった発信源は細長い四角柱の石であった。滑らかに磨いた表面にアデン文字が並んでいる。鑑定すると魔道具であり、他と合わせて四角く囲う結界だった。結界の効果は闇遮断。内部の歯車がゆっくり一周するとスイッチが入り、光汚染で結界が強まる。時間経過とともに緩まって行き、またスイッチが入ると強まった。この装置を使うと断続的に呪いがかけられそう。案外楽にできるのかもしれない。

 闇遮断以外に防衛や監視ができる物がないか確認して進む。寝静まった静かな建物内部は闇遮断の影響か光汚染を撒き散らした後の空気に似ていた。廊下には石が張ってあり今にも足音が響きそう。ゆっくり確実に一部屋ずつ探る。そしてとうとう見つけた。若干やつれているアラン大司教が眠る寝台を。記憶を読み取るためにそっとその額に手を伸ばした。

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