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だらちーとと残念異世界  作者: ちょもらん
ガルド領・教会編
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9日目 もり

 本日最初のお仕事は牧草の確保だ。何を、どれくらいという農村の常識は私にも自称一番弟子にもわからない。アドバイザーがいないとまともにお使いができないことが判明したのでベッチーノを拉致することにした。森の素材がないと言っても徴税に備えた脱穀最盛期なので余った人材なんて一人もいないゆえにである。村長は渋るが村人から同行者を選べなかったので最終的に折れた。昨日の引き留めから少し警戒されているのかもしれない。

 連れてきたベッチーノは本村村長なだけあって配合率だけでなく、サイロのような建物を見ただけで大体のことを把握できた。


「この辺の植生や規模は六村共通です。ポルモとハシをベースにクルッカやカラマキキなんかを足します」


 残念なことに現地固有種は翻訳しようがないせいか全くもって宇宙語になっている。見たことがないものや似たものの名前はさっぱり覚えられないのだ。


「とりあえずどれかを見つけたらお知らせしますね」


 全然説明で理解できていないお馬鹿師弟に苦笑いしたベッチーノを先頭に村の外にでることになった。



 村では森と表現していたが、実際に歩くとそこは草原に近いものである。少し遠い所に森というか林というか樹木が繁っているところが見えるのだがあれも森の一部、というより手をつけていない部分らしい。イメージと違うところについて聞いてみたが、この辺は伐採済みの森だと返ってきた。日本人の感覚だと森はいつまでも森なのだがアデン人はこの辺西洋式になる。簡単にいうと植林せずに森を食い尽くすのだ。土地に対して人口が極端に少ないのでわざわざ再生利用せずに村ごと転居する。最北村群は約二年前に今の土地に移ってきているらしいので、この木のない残念な使用済みの森は二年でどれだけ食い尽くしたのかを表すものだ。


「村ごと移動ですか。想像できない世界ですね」


 アデン人からすると資源は食い尽くすものなので何も不思議はないらしい。都市部はそうはいかないが村というのはそういうものだ。それで今まで来ている。人口の調整は村が移動するときに併合や分裂で調整もしているそうだ。


「ガルド領は広く多くの森があるので豊かなものです。狭く森が少ない領地の領民は移動や婚姻の許可が難しく貧しいとききます。実のところ国境山脈向こうの流民に限らず、貧しく潰れる領地からの流民が昔から流れ着く土地でもあるのです」


 カイトと話した時も思ったがただの村人の領主に対する厚い信頼はこのような事情からあがっているようだ。自分たちは領主のおかげで幸福だと思える話がごろごろしている。


「ああ、これがハシですよ。そうですね、村長宅一つ分くらいが目標でしょうか」


 ベッチーノがしゃがみこみ摘んだ植物を渡してくれた。多分イネ科の植物のようで、墓地周辺や初日に歩いた山のなかでも生えていたような気がする。

 さて、採集だが魔法「こっちこい」で喚び込み、量にオッケーがでたら収納運搬するつもりであった。しかし今の話を聞くと毎日毎年森の寿命を削る行為をすることになる。幾人もで時間をかければそうでもないのだろうが、一人で一瞬で環境破壊をするとなるとちょっと躊躇う。別にエコとか自然とかに優しい人物を気取るわけではないが積木を崩して喜ぶ子どもでもないので破壊神プレイをしたくないのだ。ここには二人のギャラリーもいるし。


「どうしたのじゃ? ばーっとするのではないのか?」


 今朝一緒に計画しているのでメヌールが不思議がる。きっとメヌールにもこの躊躇いはわからないよなぁ。


「あの、森を潰して生きているとは思わなかったんですよ。私の国は今、森を増やそうとしていまして」


 頭のいいベッチーノはこれだけで合点がいったようだ。


「それは良いことです。話は変わりますが村を領都周辺に移動させようという計画がありましたよね? なんでも土地や建物そっくりそのまま同じものが作れるとか。それを聞いて思い付いたのですが、移転後手付かずの森を増やしていただけないかと。大きな森がある分引っ越ししないで済みますから、領都の守護を長く受けられます。今、森から採集しても同じことはできませんか?」


 流石だベッチーノ。破壊行為はかわらないが後から戻せば問題ない。早速取りかかろうとすると今度はメヌールに止められる。


「まてまて、それならその手の中にあるハシを増やせば良いのではないか? 必要なものを一つずつ持ち帰り増やすのだ。採集した後祝福するより、祝福されたものを増やした方が魔力の無駄がないじゃろう」


 メヌールは牧草にも祝福をして家畜周りも積極的に寄生虫駆除をするつもりだったよう。聞いてなかったが悪くない提案だ。


「あの……でしたら森に来ずともサイロの中身を倍増していただけたら良かったのでは?」


 遠慮がちなベッチーノの言葉に愕然とする。


「それだ……薪も牧草も村の内部でガンガン増やせるや……」


 今回の森訪問は森を増やす目的だったということにしてそっと草原に樹木のある土地のコピーを上書きした。村外活動もあとは魚や肉をほんの少し確保して増やせば良いということになる。

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