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だらちーとと残念異世界  作者: ちょもらん
ガルド領・教会編
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8日目 意識調査

 目覚めて最初にしたのは経過観察をしている寄生虫のチェックである。朝からなんてことしてるのだろうとどこかで思いながら全ての皿を出して鑑定をかけた。

 二属性汚染の方はまだ全体の二割ほどしかダメージがなく横並び、重度光汚染は半分以上削れている。周りを見渡しメヌールの気配がないので被っている重度光汚染の一つにそっと闇汚染をかけた。光汚染から重度が抜ける。

 やっぱりなぁ……光と闇は打ち消しあうのだろう。定番といえば定番だが、これから先ダークエルフに会うかもしれないと思ってしまったので何かの役に立つのではと試したくなったのだ。見られると不味いものではあるし皿を全て片付けて窓を開ける。


「あ、お早うハラーコ様」


「カイトじゃないの。どうしたの?」


 窓の外には温かい日の光と気持ちの良い風が午前中であることを示した。ここから見えるこの家のモフ馬小屋にカイトをみつける。彼の後ろにはいつものモフ馬と馬車があった。


「挨拶してから出掛けようと思って。ゾンビのせいで遅れた監視小屋の補給に行くんだ。明日の夜まで帰れないから伝えずに行くと心配するかなって」


「今出るからちょっと待ってて」


 全く頭になかったが、カイトの仕事ではゾンビが出ようが何が起ころうが監視小屋の生命線で、有事だからと途絶えられないものだろう。しかし発生源は潰したとはいえ二体のゾンビを見ているカイトだ。あそこから離れた寄生虫がつくものに遭遇しかねない。ヒューマンは光汚染を受けないらしいので二日後生きて帰れるだけ光を貯めて出掛けた方が良いだろうと、玄関を開けて近付いた。


「挨拶だけでよかったのに」


「今は村を出るのは心配だもの。防御に効く魔法をガチガチにかけていった方が良いから受けてちょうだい。タダだから!」


 ちょっと困った顔はされたけれども危険はわかるからか目を閉じて待ってくれた。私がかける魔法がどれ程の時間効くのか実験していないのが少々不安だが、かけすぎなくらい防御をかけていく。思い付くだけかけたあとは寄生虫が重度光汚染になるくらいの癒しをかける。


「一人で行くの?」


「いや、魔法使いのレイさんが護衛してくれる。監視小屋から二人降りてきたのはこうやってこっちから向かう場合を想定してらしい」


 魔法使いのレイとは最初に遭遇した魔法使いだろう。監視小屋で杖を持っていたのは彼くらいである。たった二人となればレイにも防御をすべきかもしれない。


「門まで見送らせてよ。何かないとあんまり外にでないのよね」


 適当な言い訳だったがカイトは特に疑問を持たず、旅人としての主目的がなくなっていると笑われた。

 家は村の端にあるため門までは近い。たいして距離のない道を歩くが村人たちは収穫に出たのか後始末をしているのかあまり見かけられない。


「昨日火葬に出たんだけどさ」


 聞き耳は立てられていないだろうとカイトに村人心理を聞いてみる。

 ろくな武器を持たせず農業だけする環境にいるため、こんな有事は軍や教会の仕事だというのが大半らしい。大体が家長で村の会議で発言権があるものたちになる。逆に部屋住み次男以降は発言権はないが自警団などに所属しており害獣駆除も担当させられるため、農具でも倒せるからゾンビは駆逐してやるというものがいる。熊は無理だと思うというのは身近で見たカイトの弁。女性陣や子どもは従うしかない立場にあるので関わらず過ぎ去ることを祈っている。


「ろくでもないことになってるね」


 感想が漏れたかと思えばそこに現れたレイの発言だった。


「ちょっとぶり、ハラーコ。君もとんでもない時に来たね」


 嫌みではなく心底同情している声である。最初の鈍感ちゃんのせいか世間知らずな薄幸の一人旅だと信じてくれているようだ。


「ちょっとぶりです。ついでに軍の方も聞いて良いですか? 無所属移動禁止としては気が気じゃないのですよ」


 同情心を刺激したのか内緒だよと話してくれる。

 上にいる部隊長と副部隊長が何か大事なことを隠しているようで内部での不満は高まっていた。一番不自然なのは部隊長がおかしくなったり戻ったり、副部隊長が私をダークエルフと言い出したり何も言わなくなったり。前後の動きから私とメヌールが権力的に脅す形で何かに関わっていると疑われている。軍人には都会の者や貧乏貴族の自称親戚がいて元からアンチ教会思考も強い。表立っては言わないが。教会がくる前に駆逐してやるという脳筋とこれだけの大事件から守ってやるのに村から人なり金なり出せよという傲慢なのもいて纏まるのは無理だろうなというお話。部隊長たちが秘密を開示すれば秘密を守ろうと紳士的になるかもと言うのは無責任だが心理としては頷ける。


「まぁ、村より監視小屋にいる方は一日の距離があるからのんきにあちこち同情するだけなんだけど。

 ハラーコも早く離れた方がいいと言ってもどうもみんな疑っているし、僕には何ともしてあげられなくて。ごめんね、ハラーコ」


「いえいえ、気にして貰えただけでも嬉しいです。

 そうそうレイさんにも私の国の防御魔法をかけても良いですか? 障壁は一枚でも多い方が良いものです」


 暗い話が終わったからか嬉しそうに快諾してくれたのでガンガン防御を固めよう。ついでに魔法使いなので魔力回復アップやコスト削減なんかも即興で作ってかけてみた。ぼくのかんがえたさいきょうのまおうって感じになったが気にしない。最後に光汚染を重ねて完成である。


「なんかすごい数かかってないかい? 全く抵抗なしでかかってるのだけれども……」


 多分、魔法使ったらもっと驚くよ。あえて細かいことは教えず早く帰ってきてねと笑顔で送り出した。

 さぁ、私もメヌールを探して今日の予定を確認しようか。

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