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だらちーとと残念異世界  作者: ちょもらん
ガルド領・教会編
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7日目 カイトの話

 探索終了を伝えるためにモフ馬に跨がったカイトは監視小屋へと向かった。モフ馬の足は早くはないが旧道と監視小屋への道の間にある自然を考えれば安全策で、勿論新道より短くて早い。昼前に出発したカイトは日が沈んで少ししたくらいには到着した。村から先に向かっていた軍人さんたちは夜なので丁度監視小屋まで帰還しており、元いたロンたちを含めて終了を伝えねばならない人間が勢揃い、カイトはスムーズに仕事を終える。

 翌朝、監視小屋のビル(斧)とレイ(魔法使い)の二人を足した駐留軍の面々と帰還をすることになり、モフ馬に監視小屋の馬車を着けた状態で移動。馬車にはここ四・五日急に活発になったローウィという魔獣の素材が載っていた。ビルとレイはこのローウィの件とゾンビに対する今後の軍の方針を聞くためについてきたらしい。

 特に何事もなく進んでいると新道にて黒いゾンビ痕を発見。前日にゾンビ痕について知っていたカイトの話により、部隊を三つにわけて一班は待機、残りは辿って行くこととなった。

 村よりのゾンビ痕を追っていた者は空振りで、墓地手前でゾンビ痕が消失。反対を追った者は大した距離を辿る前にアデンベアのゾンビと対面する。

 アデンベアのゾンビは腐乱臭はするがそこまで古い遺骸でもないようで毛皮もあり、直立ができていたらしい。そしてアデンベアの特徴である身体強化はなされなかった。待機のカイトは遺骸を見ただけなので伝聞である。

 アデンベアを倒した追跡組は、それよりも幅の狭いゾンビ痕がその先に続いていることを発見し再び追跡。結局それは新道付近にある川で終わる。戻って今度は始発を探したがアデンベアと被っていた。第三のゾンビの痕をアデンベアが追いかけたような重なり方だったという。


「それでアデンベアの遺骸を回収してきました。魔法を使わなかったのでアデンベアではない可能性があるらしくて、鑑定の魔道具にかけてから魔石の確認もするそうです」


 なるほど、一度軍で管理して軽い調査をするわけなのか。カイトは一息ついてお茶をすする。なかなか道中は大変だったようだ。


「幾つか気になるのぅ。第三のゾンビの後をアデンベアのゾンビが辿る……大きさの違う別種族が共生することはまずないじゃろう。ゾンビにとって同じゾンビも餌なのかの? その第三のゾンビ痕はどれくらいの幅なんじゃ?」


 メヌールの質問に答えるカイトは自分の肩幅位を示した。成人男性一人分となると獣でも中型サイズとなる。軍の予想では丁度監視小屋付近で大量発生しているローウィがこのサイズに当たるためそれを推定第三のゾンビとしているらしい。


「私はローウィだけでなく人も該当すると思うのだけれど。最初がまさに人だったわけだし」


 考えたくなかったのか二人に嫌な顔をされた。心理的に無意識に人ではないと思いたいのかもしれない。とりあえず聞かなければならないことを優先するために話題を変える。



「第三のゾンビに関してはゾンビ痕しかないわけでそれ以上は推測できても確定情報にはならないから諦めましょう。私はアデンベアの調査の方が気になるよ」


「アデンベアかどうかの調査だったかの? 単に魔力切れしていたかもどきのゾンビと出るのではないかのぅ?」


 メヌールの知識ではガルド領に生息する熊はアデンベアとアデンベアもどきの二種類になる。見た目には差がないし、熊自体も気にせず(つがい)になったりしているようだ。差は魔獣か否か、人間側が作ったルールによる分類だけで同じ生き物らしい。


「人間も魔法を使える使えない関係なく子どもを作れるのでは? 普通の熊と魔法使い熊にしか聞こえませんが」


「魔獣は魔石がとれたり、付与魔法なり素材の親和性が高い。需要による商品区別と税区別じゃの。あとは教会が人と獣を纏めたがらんのも背景じゃろう。そういうものだと思っておれ」


 そういうことならそうわけるしかない。一応私も人間だし。あまり気にしないことにする。

 今回アデンベアかもどきかを区別するのは脅威のレベルを見るためだという。アデンベアの場合、身体強化をされると分かりやすい武器を持てない農民では毛皮を貫通できなくなるために、武装許可か軍人の増員が望まれるそうだ。捜索に行きこちらでの清め予想を知らない軍人だと当たり前の調査になる。


「さっきから聞いていると魔獣か否かしか調べないのですね? ゾンビの原因があるかもしれないのに」


「直ぐに焼かないだけでもかなりの限界体制じゃないか? 原因はダークエルフじゃないのか?」


 カイトの知識でいうと昔話に出てくるゾンビは何度も復活し人を拐っていくという。その後にみんなで燃やして司祭に賠償という流れまでセットで、村長もその請求権について肯定する。なので子ども時代から村人はこの燃やす文化と請求権についてはゾンビ不在でも刷り込まれているようだ。

 メヌールからすると一度もゾンビが出ていない村でも語り継がれているのは癒しの定着を狙う布教と領主の牽制が入り雑じった話に見えている。ゾンビの情報としては本村も含めて「拐う」となっているところは情報ソースがないそうだ。


「つまり誰もゾンビの原因を探ろうという土壌はないと」


 昔からそういうことになっている。知っているのはダークエルフが儀式をして司祭が手を抜くのが原因というパターンのみ。メヌールがそんなことをするとは思っていないしダークエルフを信じていないので私にとっては調べるべきことだが、周囲はまったく思っていない。第二のゾンビは癒しが無いからだと決めつけているので癒し以外の原因をとならないようだ。


「このままだと正体不明のダークエルフが儀式をして、メヌールじいさんが癒しをさぼった話が定着してしまいませんか? アデンベアからダークエルフの儀式説を否定する何かが見つかれば最初のゾンビの原因から癒しについて話は外れるし、予防も見えてくると思うのですが」


 もしもウィルスが原因で癒しはウィルス増殖を防ぐものであれば、焼き付けで決まった分しか除菌効果のないそれは不足することがある。これは司祭の腕の話ではなく焼き付けで癒しを修得したもの全員が対応できず、司祭ではなくこれしか配布していない教会の責任になるかもしれない。

 更に別のパターンとして実は癒しに意味がないというものも考えられる。原因がなかったから癒しのお陰で起きていないと思い込んでいるということだ。これも司祭個人の責任問題にするにはどうかと展開できる話だろう。


「司祭個人ではなく教会に喧嘩を売るのか。ハラーコは過激じゃのう」


 のんきな当事者にイラっとしたが、転居問題に関わるのでアデンベアからゾンビの原因究明は外せないと思う。


 大体の話が終わった頃、アデンベアを調べるチャンスが舞い込んでくる。火葬の協力に呼ばれたのだ。これは話がかなり見えてくるのではないだろうか。

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