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だらちーとと残念異世界  作者: ちょもらん
ガルド領・教会編
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1日目 鈍感ちゃんは詐欺師の香り

 夜風が香る山の中、草木の音色と焚き火の音、異世界人の男性五人と私がいた。他には何ものも見てはいない。


「そちらこそどなたですか?」


 私の顔は眉を寄せて困惑をあらわしているが、月の光と背中の焚き火は逆光で彼らには見えないかもしれない。それでも普通と思える行動を想像して実行することしか許されない。


「俺たちはすぐそこにある監視小屋の人間だ。

 山から煙が上ったと通報があり調査にきたが……この焚き火のようだな。お前の他の人間は?」


 なるほど数件しかない家は村ではなく監視小屋であるらしい。何を監視しているのかを仕入れなければならなそうだ。

 ついでに記憶群から自衛隊員が出てきて焚き火の煙なんて不注意過ぎると怒りながら、サバイバルの達人と猟師が獣避けには当たり前だと言っている。

 状況といい、頭の中といいかなりおかしい。いっぱいいっぱいだな、私、と口元が苦笑いを浮かべそうになった。


「私は一人で旅しているの。見ての通り一人分の荷物と夜営準備しかないわ。

 監視小屋と言っていたけど、もしかしてここは危険地帯だった?」


 荷物は急造仕立てであるが持ちきれる量ある。ひっくり返す失礼な真似をされない限り一人旅分の想像をしてくれるだろう。

 荷物を指しながら五人に違和感を無くす「鈍感ちゃん試作1号」をかけて質問を投げ掛ける。どうか魔法に反応しないでほしい。これは大きな賭けだ。

 棒を持った猜疑心溢れる男の顔が普通になった。順に確認したが無事、全員かかったようである。良かった。違和感や警戒心を抱かれていない。


「ああ、危ないぞ、ここは。というより、女一人で旅するなんて何を考えているんだ!

 山向こうにあるアラリア国が、その向こうにあるルクセム国の内戦に巻き込まれたのは知っているだろう。周辺国もキナ臭くなってきたからな、山越えしてこのアデン国にも流民なり野盗なりがいつくるかわからん。

 我々はそれらの監視や保護、討伐も含めてこの地に小屋を建てている。

 旅人なら通行証が有るだろうが、今夜は流民の保護小屋に泊まりなさい。危ないから」


 説明、注意、親切、なんだか全部を一気に受けてしまった。

 試作改め成功したので正式版となった「鈍感ちゃん」のお陰で自称旅人と流民が違う立場とわかったのだが、通行証、どう偽造しようか。これは拙い。


「じゃあ一晩お世話になります」


「荷物はこれだけか? お兄さん達が持ってやるから武器だけ持ってついてこい」


 自称お兄さん達が焚き火の始末をして荷物と言っても転がっているリュックと鍋を掴んでくれた。

 焚き火の始末の際に、棒を持った神経質そうな自称お兄さんが棒を振り回して水魔法で消火しているのを確認。あれは魔法の杖だったのか、でかいな。魔法レベルもチェックしないとと心のメモ帳に記入した。


 さて、荷物はまたもやなくなったが武器を持てと言われてしまった。あいにく私はなんちゃって魔法しか使っていないし、使いたくない。記憶の中の武芸の達人達が大ブーイング中だが、近接攻撃で血濡れでお泊まりも嫌だし魔法使いで通していきたい。

 魔法使いのお兄さんの杖を参考にどでかい杖を担ごうじゃないか。今なら彼らは鈍感なのだから。「こっちこい」、それっぽい枯れ枝。ひゅんとおさまった杖を見てお兄さん達びっくり。


「今のは……」


「ん? さっきから持ってたこの杖ですか?」


 鈍感ちゃんは便利だけれど物凄く良心が痛む闇魔法であった。

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