5日目 焼付け
家についた私たちは肉しかない夕飯と着替えをすませ、魔法で身を綺麗にするという寝る準備を済ませた。メヌールの魔法が焼ききれてしまった場合倒れる可能性があると言われからである。
準備が調ったところで、先にメヌールから私に焼き付けをしてもらう。「焼き付け」の魔法を貰うのだ。
しゃがんだ私の額にメヌールの左手の指が触れる。人差し指と中指の感触だ。軽く触れた指先が急に熱を持ち、瞬間私は理解した。
血液にのり身体中を流れる魔力がわかる。額から受けたメヌールの魔力が脳に届き左手へ指先へと伸びる。伸びた魔力の通り道は焼き印のように身体に残る。……なるほど正に焼き付けだ。
「覚えたかの?」
「はい、正しく焼き付けでした」
身体の中に回路ができたようだった。この回路に魔力を通せば、回路通りに魔法が出るのだろう。冷たい点滴をしている時に血管を感じるように、魔力が通った回路を確かに感じたのだ。
「他人の魔力だからこそわかる。おそらく君は自力取得しかしていないじゃろ。今まで覚えた魔法の感知をしてもらうかの。まずは今の焼き付けの魔法を辿る。次に私に焼き付ける治療魔法の形を優先的に探すのじゃ」
今度は両手を繋いだ。メヌールの右手から私の左手に何かが流れる。魔力なのだと思う。焼き付けのような強いものではないが熱を帯びていて動いている。血管ではないところも血管のように異物を捉えて、焼き付けの後にできた通り道を逆流するように魔力が流れた。
「次は焼き付け以外にも通すぞ。今度は特定せずに通すので一気にくる。壁に背を預けるのじゃ」
今度は威力こそ弱いが確かに一気にきた。右手も左手も逆流する魔力を感じる。身体の中にある幾つもの回路が逆流するので少し気持ち悪いが耐えられないほどではない。壁に着けた背に身体を預けて通った全てを観察する。
右手から伸びた回路はアイテムボックスだ。掌からはじまり心臓を経由し脳に届く。似たような経路で光の玉もわかった。脳では脳内で完結する回路がたくさんあり、地図魔法を見つけた。レーダー機能と光の玉は同じ回路から枝分かれしている。
あれは光を使う全ての回路が繋がる回路かもしれない。属性分岐の回路だと判断してそれと同じようなものを六つに分ける。
分岐の回路ごとに一つずつ見てみると出るわ出るわふざけたものから小さなものまで。試した魔法はほぼ回路が存在した。
今回メヌールに治療方として焼き付けるのは「鈍感ちゃん」である。なかなか見つからないので、脳の始発点から探すと光の魔法の分岐から分かれていた。闇魔法じゃないのか。鈍感ちゃんの経路は脳内完結型で電波のように飛ばす非接触発動。一つずつ回路を辿り場所を覚える。
「見つけました」
「形は覚えたかの?」
「はい」
一度手を離すと徐々にメヌールの魔力が溶けていった。メヌールの魔力が感知できなくなったところで今度は彼の額に私の左手をつける。
「焼き付けは焼き付けの魔法跡に魔力を通すが、受け入れ側に魔力が侵入すると同時に受け入れ側の魔力が消耗する。伸びが悪くなればそれは受け入れ側の魔力が不足しているからじゃ。ゆっくり魔力を流して相手に分けながら伸ばすこともできるが、受け入れ側が枯渇すると焼ききれる。私が倒れたら失敗じゃ。焼き付けの魔法にそって魔力を治療用魔法の形に注いでくれ」
焼き付けの魔法跡にゆっくり魔力を通し、メヌールの額から脳に侵入する。軽い抵抗の中、鈍感ちゃんの始発点を探りそこに焼き付けを開始した。
「うっ……密度が濃いの。もう少し緩めてくれんか」
始まったと同時にメヌールは頭をのけ反らせるように呻く。焼き付け魔法に通す魔力を細く細く薄く薄くして続ける。
「これは魔力を通すだけでもかなりの量を使うな……終わりが見えん。こちらからはただ魔力を通してくれ。更に緩くじゃぞ」
メヌールは左手を差し出してきたので空いた右手でそれを掴む。先程の逆流の時のように全身に緩く通す。
「これでも濃い。供給は休み休みで頼む」
注文は多いが魔法使い一人の人生がかかっている。真剣に緩やかに行われる焼き付けと供給は徹夜での作業となった。




