5日目 続・ぬめじいのあばうと計画
「ハラーコ司祭様はそんなにすごい魔法使い様だったのですね。
領主様や軍との交渉はメヌール司祭様がしていただけるのでしょうか? 村人の説得は私が頑張りますがベッチーノさんはどうしますか?」
村長は話題にでたことでベッチーノを思い出したように付け加える。ついで仕事のように言われたベッチーノは真っ青だ。
「貴族相手の交渉は私で構わない。面倒な言い回しが必要じゃ。ただ軍人との付き合いはまずハラーコが部隊長を復活させることからかの」
顎を撫でながらメヌールが答える。ちらっと見ていたし、わざとベッチーノを無視した。流石、嫌味なじいさんだ。
ここに来るまでにメヌールには今まで私を見ておかしくなった人は出なかったのかと聞かれている。カイトの名前は出さなかったが恐怖を祓えると曖昧には話した。具体的にどうこうは言ってはいないがそれっぽく復活できればそれでいいとされている。
「復活させるのはできますけどどうしますかね? 堂々と宿舎なり隔離部屋なりに侵入しろってことですか? あの副部隊長が許可なんてだすとは思えませんし、復活した部隊長におかしくなるから見ないで欲しいけど私、ダークエルフじゃないよ! とでも言いますか?」
「見張りの奴が話し終われば副部隊長はそのうちここに来るじゃろ。
どうしてハラーコを見て気が狂うのかわからんが、そこは君が自分でごまかせる範囲で適当にやりなさい。部隊長は領主の側近の甥っ子なので確保するように。領主のために情報は大事に届けるだろう」
投げっぱなしか。私への指示が粗い。そしてメヌールは良いとして村長はどう思っているのだろう?
「ハラーコ様がダークエルフか犯人かですか? これだけお人柄が良いのに疑いませんよ。
鑑定の魔道具でおかしなことが起こるのは外国の魔法だと思っています」
村長が眩しい。そして言い訳はその線でいこう。
粗筋が決まったのでメヌールは手紙を書き出し、村長はお茶を入れ直す。ここでやっと慌ただしいブーツと腰から提げた武器の音がやってきた。
「どういうことだ!」
扉を思いっきり開けてでてきたのは待ち人、ジル副部隊長である。
「きたか副部隊長殿。今手紙を書いとるから少し待たれよ」
「お茶をお持ちしましょう」
「なんだこれは!? ベッチーノ、大丈夫か!?」
かわいそうに、誰か説明してあげなよ。誰も話し出さないということは私がその役目なのだろうか。
「えーと、部隊長殿を治しにいきます」
「はぁ!?」
メヌールの言うように話には順序があるみたいだ。